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カンスト勇者の無双劇  作者: レイン
6/12

6 勇者の力

 やってやると心に決めたとはいえ、命をかけた勝負なのだ。日本という世界でぬくぬくとした世界で過ごしていた光輝にとってそれはどうしても重い足かせとなる。


「ってやばい!」


 そも間にもアスモデウスは光輝へと肉薄し、その勢いのまま二又の槍を突き出してくる。

 光輝は頼りない銅の剣を慌てて抜き放ち、迫りくる槍に剣を合わせる。そのまま後ろへと力ずくで受け流し、ガラ空きになった胴にもう一度蹴りを食らわせて吹き飛ばす。


「これは、まずいかも……」


 手に持っている銅の剣には刀身の真ん中から大きなヒビが入っていた。普通なら予備の武器もなく非常にまずいのだが、光輝はそんな状況で不敵な笑みを浮かべ始めた。


「後一回持つかどうかか……なんだか燃えてきたぜ!」


 今の光輝の頭には命の危険がどうとかいったことなど抜け落ちている。あるのは目の間にいる敵をどうやって倒すかだけだ。


「はっはっは! やってやるよ!」


 そう大声を上げ、立ち上がり様子を伺っているアスモデウスに光輝から風の如き速さで駆け寄り、剣を持っていない右手でアッパーを食らわせる。

 アスモデウスはそれに反応することも出来ず、空へとカチ上げられたのだが、背中の翼を使って体勢を整え直し、空に浮かび上がったまま槍を突き出してくる。

 その瞬間槍先から直径1メートル程の火球が4つ生み出され、光輝に向かって発射された。


「やっば!!」


 とんでもないスピード迫り来る火球を光輝は前に飛び込み転がることで4つ全てを避けることに成功し、すぐさま立ち上がるのだが、


「空飛びやがって、あんなの届かねえだろ!反則だよ反則!」


 攻撃手段のない光輝はなおも発射され続ける火球をゲームで培ったステップを利用し避け続ける。


「ちくしょー、俺も遠距離攻撃出来たら……くっそーーー!!!」


 光輝は火球を避け続けながらも必死に頭をフル回転させる。


「なんとか出来ないか……」


 今の光輝の装備は銅の剣に皮の胸当て。

 アイテムボックスには少しの食料に魔法の地図だけで現状を打開出来るものは何も無い。

 手詰まりに思えたそんな時である。光輝の頭にある事が浮かび上がったのは。思わず口元が緩んでしまい、笑い声が漏れ出してしまう。


「ゲームの中の俺の職業はバトルマスターで、遠距離攻撃はほとんどなく、手間取ってた。でも今は……」


 走る足を止め、空を飛ぶアスモデウスを見上げる。


「――――俺は勇者だ!」


 勇者とは全ての職業を完成させたものがなれる最強の職業である。

 そして、勇者の特徴とは




――――全ての職業の技と魔法を使いこなせることだ。




「インフェルノ!」


 光輝の突き出した右手から燃え盛る業火が生み出せれ、それが生きた火の鳥であるかのようにアスモデウスの背の翼へと一直線に飛んでいき、一瞬で真っ黒に燃やし尽くす。その灰は光の粒へと変換され、空へと消えていく。

 もちろん、翼が消え去ったアスモデウスは飛び続けることは出来ない。5メートル程の高さから落下し、周囲に響き渡る爆音と共に隕石が降って来たかのようなクレーターを生み出した。

 少しの期待を込めて穴を覗き込む光輝なのだが、


「やっぱりまだ倒せないよな……」


 クレーターからはボロボロになりながらも這い上がってくるアスモデウスの姿があった。

 アスモデウスは元々赤い顔を更に真っ赤にして怒り狂っており、光輝の姿を見つけるやいなや頭の角を突き出しながら策もなしに突進してくる。


「そうなっちゃおしまいよ」


 光輝はスッと身を横に動かすことで避ける。これもゲームで慣れた動きだ。そして右手に持つ銅の剣を空高く掲げ、ある言葉を口に出す。


「ディヴァインブレイク!」


 聖なる光を放つ刀身が目の前にあるアスモデウスの首に吸い込まれていく。そしてなんの抵抗もなく断ち切った。


「ふーっ、何とかなったぜ」


 一息ついて銅の剣を鞘に直そうとした瞬間、アスモデウス同様光の粒となり消え去ってしまった。


「……まあアスモデウスは倒せたわけだしさっさと街へ戻るか。サラもサクラも心配だしな」


 そうしてウェールの街へと戻ろうと光の粒へと背を向けたときだった。ドスンと何かが地面に落ちる重い音したのだ。


「ん、なんだ…………おお!!! レアドロップだ!!!!」


 そこにはアスモデウスの頭にある2本の角のうち1本が落ちてあったのだ。かなりの大きさなのだがそれを両手で持ち上げ、腰にあるポーチに当てる。


「収納」


 光輝がそう呟いた瞬間その角は跡形もなく消え去った。そう、ポーチの中へと入っていったのだ。アイテム欄を開き確認してみると、そこにはアスモデウスの角と書かれたアイテムがしっかりと入っていた。


「よしよし! これで折れた銅の剣の代わりになる剣を作れるぞ!」


 こうして意気揚々と街へと続く道を歩いて行くのだった。

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