3 光輝のステータス
「ふ、ふぅ……何とかなって良かった……」
いくら意気込んで戦っていたとはいえ、命のやり取りが行われていたのだ。気が抜けても仕方がないだろう。
光輝は剣を取り落とし、その場でへたり込んだ。
「やっぱり、ワーウルフを斬ったのに血が出なかったし、死体は光の粒になって消えていったし、それに腕の傷も……」
光輝は右の二の腕に受けた傷に手をやって確認する。
現実であれば切った傷からは流血するはずなのだが、手をやったところから血は出ておらずほんの少しの光の粒が空へと立ち昇っている。
「やっぱり、これもトレストの仕様と同じだな」
トレストではグロ規制のためプレイヤーがケガをしたとしても血は出ず、ケガの度合に応じて傷口から光の粒が出てくるだけだ。そしてゲームオーバーになったプレイヤーだったり倒したモンスターの体は全てが光の粒へと変わり、空へと消えていくのだ。
「それに、さっきの戦いは夢なんて言葉で通じるような生易しいものじゃなかった。本物の命をかけた、戦いだった。
ってことはやっぱり俺がトレストの中の世界に来たって可能性しかないよなぁ……」
簡単に信じられるものではないが、やはり自分がトレストの中にやって来たとしか考えられないし、そう考えれば辻褄が合う。
「もしここがトレストの中なんだとしたら、ステータス画面が開けるはずだ……確認してみるか」
光輝は一度大きく深呼吸をして、ステータスオープンと高らかに宣言する。
「うわああああ!」
目の前にはトレストの時と同じステータス画面が広がっていた。しかし、驚いたのはそれだけではない。そこに書いていた文字にびっくりしたのだ。
「なんだよこれ……」
そこには、勇者Lv99と記されていた。そのうえ、全てのステータスが999だったのだ。
一気に色んな事が起こりすぎて頭が混乱している光輝である。
「ちょ、ちょっと待てよ……? とりあえずステータス画面が出たってことはゲームの中の世界ってのはほぼ確定か。それに名前もテルになってるし。
それにしても勇者ってどういうことだ? 俺のアカウントは勇者を解放して終わったところだぞ? しかもLv99の上に全てのステータスもカンストってどういうことだよ。こんなの攻略動画とかでも見たことないぞ。
あーーーーもう訳が分からんぞ!」
目の前に広がるステータス画面とにらめっこしながらそう呟く。
「他はどうなってんだろ。アイテムオープン……ってはあああ!?」
またも理解の出来ないものが並んでいた。
「所持金999999999999ゴールドだって!? 訳が分からん。ステータスだけじゃなくて所持金までカンストかよ!」
そうして他のアイテムも探してみるのだが、こちらには特に変なものは見当たらなかった。あるのは少しの食料と水、それに野営用のテントと地図だった。とりあえず現在地を把握するために地図を取り出す。
「どうせならアイテムとか装備まで最強なやつにしてくれたら良かったのにな……ってこれは魔法の地図!」
そこには自分の居場所がピンで記されており、今自分がどちらを向いているのかも分かるようになっている。某グーグ〇マップみたいなものである。
「この地図があるのは有難い。とりあえず今の場所はっと……やっぱり予想通り、ウェールの街に繋がる森の道か。
とりあえずそこに行ってみるか!」
歩いて2時間かかるかどうかくらいの距離だろう。地図を片手にウェールの街へと歩みを進める。
それからというもの特にモンスターが現れることもなく、カンストしているステータスのおかげで疲れることもなく予想よりもかなり早く目的地に到着することが出来た。
そして光輝は街を囲う大きな壁と門に圧倒されている。
「おーい、そこのお前! 中に入りたいならこっちだぞ!」
「は、はい!」
門番にそう声を掛けられ、光輝は活気づいている街へと足を踏み入れるのだった。
読んで頂きありがとうございます!
よろしければブックマーク、評価、感想お願いします!