12 いきなりのSランク
「……なんでか、俺の冒険者ランクがSなんだけど」
「え、Sランク!?!?」
光輝のその言葉にサクラとウルは大きな声を上げてしまう。
「ば、ばか! 静かにしろ!」
光輝が2人に注意をするも時すでに遅しだ。その場にいた冒険者と他のギルド職員からの注目が集まっていた。
光輝がどう誤魔化そうか考えていると、
「あ、あはははは……私ったらランクを読み間違えてたみたいです、本当ドジですねー……」
顔を赤くさせたウルからそんな言葉が放たれた。
「な、なーんだ。やっぱそうだよな」
「冒険者登録したらSランクとかさすがに有り得ないというかあったら困る」
「さすがドジっ子ウルちゃんだ、今日もかわいいぜ!」
冒険者達はそう声を上げてほほ笑みながら各々元の作業へと戻っていく。
「ふーっ……いきなり声を上げちゃってすいません、これならおそらく大丈夫ですよ」
「なるほど、ドジっ子ウルちゃんねえ……」
「も、もう! その件はそっとしておいてください!」
光輝はいきなり声を上げたお礼だとばかりに意地悪な顔を浮かべており、更に追撃をかまそうとしているのだが、それを察したサクラは止める。
「テル、その件は後にしておいて、それよりもSランクってどういうことだ?」
「……まあいいだろう。ランクの件は俺もよくわからんがちゃんと書いてあるぞ。ほれ、ドジっ子ウルちゃん」
光輝は意地の悪い笑みを浮かべながらウルへとギルドカードを渡す。
「も、もうやめてくださいよ……」
ウルは顔を赤らめながら受け取り、それをサクラも覗き込む。
「どれどれ……本当に書いてあるわね。なんでなんだろう?」
「こんなことギルドの中でも聞いたことがないので分かりませんね。とりあえずこのギルドカードに異常がないか確認させてもらいます」
ウルはそう言って奥の棚からある小瓶を取り出してきた。
「この液体を1滴かけるとギルドカードに異常がないか分かるんです、魔法でランクを偽っていないかといったように。
今回はギルドカードが作られる段階で何か魔法がかけられているかもしれませんから使わせてもらいますね。
偽造のギルドカードだと灰になっちゃいますけど今回はこちらの不手際のようなので2枚目も無料でお渡ししますから安心してください」
「おお、それは助かる。んじゃやってくれ」
「はいはーい」
ウルはピペットを取りだして液体を吸い、そのままギルドカードへと1滴垂らす。
その瞬間淡く白い光が輝いた。
「これで直っ…………てないですね。これはギルドカードに異常がないということですか……どういことでしょう」
ウルは可愛らしく首を横に傾げている。
「こうなったらギルドマスターに報告して理由を聞くしかないわよね……?」
「……それもそうですね、ちょっとだけ待っててください」
サクラの言葉にあまり乗り気では無いようだが席から立ち上がり奥へと消えていった。
数分後、ウルは少しウンザリしたような顔をしながら光輝とサクラの元へと戻ってきた。
「どうだった?」
「色々と話を聞いてからじゃないと分からないから部屋へ連れてきてくれって頼まれました」
「あらー……」
「お疲れ様です……」
サクラとウルの反応に違和感を覚えつつも光輝は言われた通りにその部屋へと向かう。
「失礼します」
部屋へ入った瞬間、大きな声が光輝を出迎えた。
「やあやあやあやあ、君がウル君が言っていたテル君だね! よく来てくれた、さあさあそこへ掛けてくれたまえ。今すぐお茶を淹れよう!」
サクラとウルがなぜあんな反応だったのかよく分かった。
(この人、絶対話がやたら長い人だ……めんどくせえ……)
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