♪ 3.野原 ~ 雨天に見舞われて ~
──*──*──*── 野原
≪ 集落 ≫を出たセロフィートとマオは、広い野原に出た。
次の≪ 集落 ≫を目指し、此から約18kmの距離を徒歩で向かうのだ。
────途中、マオが食事をする為に、30分の休憩を入れた。
再び歩き出してから2時間後、天気が崩れて来た。
空一面を雨雲が覆い隠し、ポツポツと雨が降って来た。
マオ
「雨だ!
セロ、どっかで雨宿りしないと!」
雨に濡れたくないマオは、慌てながらセロの腕を引っ張る。
セロフィート
「大丈夫です、マオ」
マオ
「はぁ?
何が大丈夫だよ?」
セロフィート
「此のコートは特殊なコートです。
雨具を使う必要もなければ、雨宿りをする必要もないです。
──マオ、周りを良く見てみなさい。
マオから半径1m以内は濡れてないです。
其に半径1m内に入ると地面は一瞬で乾きます。
雪や氷なら溶けます」
マオ
「──うわっ!
本当だな!
全然気付かなかったよ!!
此ならセロが用意してくれたブーツも汚れないな!
雨に濡れずに旅が出来るなんて最高だな!」
セロフィート
「雪の中でも砂嵐の中でも安心して歩ける優れものです」
マオ
「此なら16時前に次の≪ 集落 ≫へ着けるんじゃないのか?」
セロフィート
「其はマオの頑張り次第です」
雨が歩く為の妨げにならない事を知ったマオは、笑顔になった。
現金である。
嬉しそうなマオの様子を見てセロフィートは、クスリ…と小さく笑った。
コロコロと感情,表情,声色の変わるマオが面白くて堪らない。
マオの気分屋な百面相は、毎回可笑しくて、セロフィートにはツボだった。
セロフィート
「もう…マオ──。
そんなにはしゃがないでください。
転びますよ?」
等とマオに対して如何にも世話好きで、お節介で、子煩悩な母親の様に心配している風に声を掛けるセロフィートだが、本音はマオが盛大にスッテンコロリンと転ぶ事を大いに期待をしていたりする。
雨に濡れてグショグショで足元が不安定な地面だが、半径1m内に入ると一瞬で地面が乾いてしまう為、例えマオが転んだとしても、泥だらけのベッタベタにはならない。
コートもブーツも衣類も特殊な為、あらゆる汚れを弾いてくれる優れものである。
セロフィートとマオが履いているブーツは、氷の上を走っても滑らない様になっており、例え崖を登ったとしても、岩から足が滑る事もない。
防水性,防火性,防寒性,耐久性も抜群で、移動力,ジャンプ力も高く、水上すら歩けてしまう摩訶不思議なブーツだ。
果てしない長旅をするには、実に便利で有難過ぎるコートとブーツではあるが、マオにも与えてしまった事に対して、セロフィートは少少後悔していた。
与えてしまった以上、マオが喜んでいるのに、取り上げてしまう訳にもいかず……、お楽しみの芽を自分の手で引き抜いてしまった事に対して、セロフィートは心の中でモヤモヤしていた。
其も此もマオが可愛いのがいけないのだ──、とセロフィートは自分の甘さを棚に上げて、マオの所為にしていた。
無駄に運動神経,反射神経,バランス感覚の良いマオは、案の定スッテンコロリンと滑って転んでしまう様なポカ等しないし、残念ながらドジッ子ですらない。
セロフィートの密やかな楽しみを悉く裏切ってくれるのであった。
──*──*──*── 6時間半後
マオとセロフィートの目の前には目指していた≪ 集落 ≫が見えて来た。
マオ
「セロ!
≪ 集落 ≫が見えて来たよ!
何か…前の≪ 集落 ≫と感じが違う??」
セロフィート
「此の距離で≪ 集落 ≫の雰囲気を感じられるとは──。
成長しましたね、マオ」
マオ
「いや……。
あれは誰が見ても分かるだろ?
…………何で逆さ吊りされてんだ??」
セロフィート
「逆さ吊りをされる様な事をしたのでしょう?
なかなかユニークな≪ 集落 ≫の様です」
マオ
「何をしたら逆さ吊りされるんだよ……」
セロフィート
「気になるなら、住人に聞いてみましょう」
マオ
「…………おっかない≪ 集落 ≫だったら嫌だな…」
セロフィート
「大丈夫です。
ワタシが居ますし」
マオ
「……………心強いなぁ……。
( 其は其で不安なんだけどな…… )」
セロフィート
「マオ、行きましょう」
マオ
「うん…」
セロフィートとマオは、目の前に見える≪ 集落 ≫へ向かって再び歩き始めた。




