✅ 野原 3 / 追われる人
セロフィート
「 ──マオ。
人が追われてます 」
マオ
「 見れば分かるって!
あれって村人かな?
武器になりそうな物とか持って無さそうだよな。
セロ、彼の人を助けよう! 」
セロフィート
「 はいはい。
好きですね…。
人間助け 」
セロフィートは明らかに乗り気ではない。
ぶっちゃけるとセロフィートにとってはマオ以外の人間が、どうなろうと知った事ではないのである。
人間嫌いではないものの人間等、勝手に野垂れ死んでしまえばいい──とすら思っているのだ。
マオ
「 セロ!!
約束したろ?
『 オレが「 助けたい 」って言った人間は助ける 』って!
行くぞ!! 」
セロフィート
「 はいはい…。
マオが望むなら… 」
ふぅ…と明らかに嫌そうな溜め息を吐いたセロフィートは、襲われている丸腰の村人へ走って行ったマオの後を追い、歩き出した。
マオ
「 歩いてないで走って来いってば!! 」
セロフィート
「 汗掻きますし… 」
マオ
「 こんな時に何言ってんだ!
抑、汗掻かないだろ〜~が!! 」
セロフィート
「 疲れますし… 」
マオ
「 ………………たく!
今夜は気の済む迄遊んでやるから、走って来い!! 」
セロフィート
「 はいはい♪ 」
マオの呼び掛けに答えたセロフィートは、マオの居る場所迄素直に走ってあげる──事はせずに古代魔法を発動した。
襲われている村人の前に魔法陣が現れるが、村人には魔法陣が見えていない。
マオ
「 魔法陣?!
──セロ!! 」
セロフィートと契約を交わし、人あらざる者となったマオには、セロフィートが発動させた魔法陣がはっきりと見える。
魔法陣の効果だろうか、村人を襲っていた獣の動きが突如、遅くなった。
セロフィート
「 マオ、倒すなら今です 」
マオ
「 え?!
あ…ああっ、そっか!
倒さないといけないんだよな! 」
そう言ったマオは、鞘から愛刀を抜くと、チャキリ…と構える。
動きの遅くなった獣に向かって、刀で斬り込んだ。
何度目かの斬り込みで、獣は血を飛散らせながら倒れると動かなくなった。
マオ
「 ──た…倒した?? 」
セロフィート
「 いいえ、未だです。
息があります。
仲間を呼ぶ前に止めを刺して息の根を止めなさい。
マオ、急いでください 」
マオ
「 え?!
あ、ああ…分かった!
──えいっ!! 」
セロフィートに急かされたマオは、獣が鳴き声を出せない様に頭に刀を突き刺した。
息絶えた獣の体は力尽きると地面にダラン…と転がった。
マオ
「 間に合った……かな? 」
セロフィート
「 どうでしょう。
大丈夫とは思いますけど… 」
マオ
「 どうしような…。
此の死骸… 」
セロフィート
「 穴を掘り、墓石を作り、弔ってあげましょう。
此の獣の魂が輪廻の流れへ迷わず行き着ける様に〈 久遠実成 〉へ冥福を祈りましょう 」
マオ
「 ………………うん…。
……でもさ、此の獣は何で村人を襲ったりしてたんだろうな? 」
セロフィート
「 其の理由は其処で気を失っている彼に聞けば判ります 」
マオ
「 …………だな…。
余程、恐かったんだろうな。
失禁する程にさ… 」
セロフィート
「 其の程度で済んで良かったです 」
とか言いつつもセロフィートは再び古代魔法を発動させた。
マオ
「 セロ?
其の人に何で魔法を使うんだよ? 」
セロフィート
「 ワタシ達が獣を弔っている間に逃げられない様にしました 」
マオ
「 はぁあ?!
何でそんな事する必要があるんだよ? 」
セロフィート
「 事情を知っているのは今の所、彼だけです。
詳細を知る迄は動けない様にしておく必要があります 」
マオ
「 …………逃げないと思うけどなぁ? 」
セロフィート
「 逃げます。
確実に 」
マオ
「 言い切っちゃうのかよ… 」
セロフィート
「 残念ですけど、今夜は野宿です。
良いですね、マオ 」
マオ
「 あ…うん…。
オレは別に構わないよ。
オレはセロに雇われてる立場だからな。
雇い主のセロが『 野宿する 』って決めたなら、オレはセロに従うよ 」
セロフィート
「 有り難う、マオ 」
賛同してくれたマオに、セロフィートは優しく微笑むとマオの額に唇を軽く当てた。
マオ曰く “ デコちゅ ” である。