♪ 1.キャンプ地 3 ~ 楽しい夕食 1 ~
セロフィートはソファーベッドへ腰を下ろすと深く座った。
掌に〈 魔法陣 〉を出すと〈 魔法陣 〉から本が出て来た。
セロフィートが読み掛けている本だ。
マオが料理を作っている間、セロフィートは読書に耽る気満満である。
セロフィートはマオが料理を作る際には、一切の手伝いをしない。
料理が出来上がる迄、ひたすら本を読み続けるのがセロフィートの何時ものスタイルだった。
──*──*──*──*──
夕食を作るマオは、椅子に掛けてあるエプロンを着けると、桶の取手を握り、流し台に水を入れた。
此の水の入っている樽も不思議な物で、見た目は唯の樽なのだが、幾ら水を汲んで使っても、中の水は減らないのである。
水の量が半分迄、減ると水嵩が増しているのだ。
其の為、旅の間、水不足で困る心配は全くない。
樽の中の水は、其のまま飲み水としても使用出来る清潔な水である事から安心して使かう事が出来る。
流し台に備え付けられている石鹸で確りと手を洗う。
人間だった頃にしていた手洗いは、人間ではなくなった今のマオには必要ない行為なのだが、身に付いている習慣は、なかなか止める事が出来ず、マオには難しい様だ。
其に関してもセロフィートは何も言わず、マオから「 手洗い用の石鹸が無くなった 」と言われれば、新品の石鹸を出してあげるのだ。
料理前の儀式を終えたマオは、料理に使う野菜を選び始めた。
──*──*──*──*──
食卓の上に出来上がった料理が並ぶ。
料理を作り終えたマオは、読書に耽るセロフィートに声を掛ける事にした。
マオ
「──セロ、出来たぞ〜〜」
セロフィート
「はいはい」
マオに呼ばれたセロフィートは、読んでいた頁に栞を挟むと、本をソファーベッドの上に置いた。
腰を浮かせ立ち上がったセロフィートは、食卓へ向かう。
セロフィートが座り易い様にとマオが後ろへ引いてくれた椅子に腰を下ろして座る。
セロフィート
「マオ、どの料理も美味しそうです♪」
マオ
「そ、そうか?(////)
で、でも、まぁ…どんな料理も、セロの作った味には敵わないけどな(////)」
セロフィート
「謙遜しないでください。
ワタシは毎日食べても飽きないマオの味付けが好きです。
自信を持ってください。
あぁでも、作る相手はワタシだけにしてください。
マオの手料理を他人が食べるのは許せませんし」
マオ
「…………いや…其処は許せよ…」
セロフィート
「嫌で〜〜〜す。
独り占めしたいですし」
マオ
「…………うっ(////)
冷めない内に食べよう!(////)」
セロフィートの言葉が嬉しかったマオは顔を赤らめる。
そそくさと腰を下ろして椅子に座ったマオは、胸の前で指を組んだ。
両目を瞑ると、目には見えなくとも確かに存在している〈 大陸神エルゼシア 〉へ食前の感謝の祈りを捧げた。
マオ
「──よし、食べよう!」
セロフィート
「はい♪
いただきます、マオ」
マオ
「おう!
お代わりもあるから遠慮すんなよ?」
セロフィート
「ふふふ…。
マオの料理に遠慮はしません。
最後迄、美味しくいただきます」
言葉を交わし終えた2人は料理を食べ始めた。
──*──*──*──*──
セロフィート
「──マオ、此の料理は何です?」
マオ
「ん〜〜〜?
此か?
此は、ホウレン草を使った料理だよ。
茹でたホウレン草を水切りして、ボールに入れるんだ。
其の中にナイフで削ったチーズを入れて、かき混ぜて、餃子の種を作るんだ。
餃子の皮の真ん中にバターナイフで取った種を載せるんだ。
身が皮から、はみ出ない様に種の量を考えて載せるのがポイントだよ。
餃子の皮を半分に折ったら、フライパンホイルを敷いたフライパンの中に並べるんだ。
解いた卵黄を刷毛を使って餃子の皮の上に塗るんだ。
胡麻をふりかけて、フライパンで焼くと出来上がり。
名前は『 餃子モドキ 』っいうんだ。
肉が無かった時にさ、余ってたホウレン草を使ってみたんだ。
彼の時、使ったホウレン草は、痛んでたからさ〜〜。
マーフィに『 バレない様に 』って餃子の皮に包んで焼いたんだよな〜。
味を誤魔化そうと思って、チーズを使ってさ、見た目を良くしようと思って、卵黄と胡麻を使ったんだよな〜〜。
オレの考えたアイデア料理の自信作だよ!」
セロフィート
「…………………………」
マオ
「ん?
どうしたんだよ?
手が止まってるぞ。
セロ??」