♪ 1.野原 12 ~ 四知の法 ~
マオ
「はぁ?
……『 天知る 』って…〈 大陸神エルゼシア様 〉が『 見ていて、知ってる 』って事か??」
セロフィート
「そうです。
実は此の『 天知る 』が1番大切です。
別の意味では此を『 天網恢恢疎にして漏らさず 』と言います。
つまり『 天が張りめぐらした法網は広大で目が荒い様だが、悪人は漏らさず捕らえる( 天道は厳正で悪事には必ず其に相応した報いがある )』という事です。
鯔の詰まり、人間の総ての行動は天──即ち『〈 久遠実成 〉が知っておられる 』という事です。
ですから、何れだけ巧妙に仕組んだ犯罪でも『 天知る 』故に露見させられたり、或は因果応報の天の制裁を受けます。
こうした人間社会の実相を教えなくなった事が、今日、お金さえ儲かればいいとばかりに、詐欺行為や不祥事が跡を絶ちません。
子供に『 四知の法 』を教える事により、子供も自ずと行動を律っする事が出来る様になります。
そうすれば、陰日向の無い真当な人生を子供は歩む事が出来ます。
──後は『 敬神崇祖 』と『 自立精神 』があります」
マオ
「へぇ〜〜〜。
そうなんだな〜〜。
……陰日向の無い真当な人生か…。
何かさ、良いよな〜〜〜。
オレ……、人生をやり直せるなら、陰日向の無い真当な人生──っての送ってみたいな!!」
セロフィート
「そうです?」
マオ
「…………うん…。
だってさ…オレの両手はさ………………血塗れだからな…。
理由はどうあれ、オレは人を殺してるんだ…。
本来ならさ、悪者だからって……殺したら駄目だろ?
…………だけど…命を奪わないといけなかった状況の方が多かった…。
…………オレがもっと強かったらさ、殺さなくて済だ悪党は沢山居た筈だよ…。
オレが未熟だから……。
オレはさ自分が積重ねて来た罪を正当化したり……誤魔化したりしたくないよ…。
だけど…どうしたら良いのか……オレには分からない…。
どうしたら自分を正当化しないで済むのか……とか、どうしたら自分を誤魔化さなくて済むのか……とかさ。
奪った命の分迄生きろ……とか、生き抜いて死ぬ迄ひたすら償い続けろ……とか、死ぬ迄良心の苛責に苦しんで生きろ……とか……。
例え償ったとしても命を奪った事実は絶っ対に消えないじゃんか……」
セロフィート
「マオ、其のくらいになさい。
君は誰からも其の様な言葉を言われてない筈です。
自責はお止しなさい。
君は弱い立場の人達を助けただけです。
君が見て見ぬ振りをせず、己の手を汚して迄助けた彼等は、どうなります?
君に助けられた事を恥じながら、残りの人生を過ごせ──と言います?
自分の行いを恥じ、悔やみ、責めて、卑下して、貶めるのは楽ですし、簡単でしょう。
けれど…自分を許す事には勇気が要ります。
マオには其の『 勇気 』はないです?」
マオ
「………………許す──何て、オレには出来ないよ…。
出来っこないんだ…」
セロフィート
「マオ……」
辛そうに落込んでいるマオをセロフィートは、御満悦な表情で見下ろしている。
セロフィートは今のマオで遊びたくてウズウズしていた。
セロフィート
「何はともあれ、此以上は長くなりますし、一旦、此処で区切りましょう。
──〈 漁師 〉と〈 密漁者 〉も同じですよ」
マオ
「え?
……何がだよ?」
セロフィート
「〈 密漁者 〉も〈 久遠実成 〉を軽視せずに『 四知の法 』を知っていれば自ら悪事を働こうと思わないでしょうし、自分の代わりに他人に悪事をさせようとはしないでしょう。
其でも0は難しいです。
人間の中から必ず愚者が現れますし」
マオ
「………………そう…なのか??」
セロフィート
「──あぁ、マオ。
此の辺りにしましょう。
樹が丁度屋根になってますし」
マオ
「分かった。
場所も決まったし、準備しないとな」
セロフィート
「其の前に〈 結界 〉を張ります」
マオ
「あっ、そっか。
うん。
頼むよ」
セロフィートは〈 古代魔法 〉を発動させると、屋根となる樹を中心に半径20mが〈 結界 〉に包まれた。
セロフィート
「さて──。
此で誰にも邪魔される事なく、朝迄2人きりで休めます♪」
マオ
「〈 結界 〉じゃないのかよ?」