降りしきる雪
次第に朝晩の冷え込みもはげしくなり、炭櫃を持ち出すことも多くなったある日、白くかすかに雪が舞い始めた。
それを見るにつけても、朔には最後にかき抱かれたことが自然に思いだされた。
ずっと戻ればいいと思っていた記憶のことも、自分の内から現れて消えた玉かずらのことも、今となっては夢のようである。
大炊君は、正面からは触れないものの、白い蛇が朔から離れたことを知っているようだった。
その上で、潔斎のあいまの息抜きになるようにと、さまざまな絵物語や上質な紙を持ってこさせるので、今も手すさびに書いている途中だった。
それでも、
思わず筆を握ったまま降りしきる雪に見入ってしまうのは、物思いがそれだけ深いからなのだろう。
白と紅梅の、雪の下で重ねた袿を見にまとった朔は、誰知らず筆を置いて嘆息した。
雪が降ると、静寂が深まる気がするのは自分だけだろうか。
——あの人の、真雪という言葉通り、私の気持ちも凍てついたまま、春まで溶けることはないのかもしれない。
そんな気持ちでぼうっとしていると、小萩が白湯を持ってきてくれた。
——と、
そのかたわらに、忍ばせるように文を差しだした。
大炊君からは、なかなか会えないのをわびるように、文が届けられることが多いため、今回もそうなのかと思ったら、どうやら趣が違うようである。
大炊君は、いつも四季折々の花に文を結んだり、細工の美しい箱に忍ばせたりと、風情に工夫を凝らしてあるのだが——
それはただ、厚手の白い紙を折りたたんだだけのようだった。




