表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朔姫  作者: 星 雪花
55/56

降りしきる雪


次第に朝晩の冷え込みもはげしくなり、炭櫃(すびつ)を持ち出すことも多くなったある日、白くかすかに雪が舞い始めた。


それを見るにつけても、朔には最後にかき抱かれたことが自然に思いだされた。


ずっと戻ればいいと思っていた記憶のことも、自分の内から現れて消えた玉かずらのことも、今となっては夢のようである。



大炊君は、正面からは触れないものの、白い蛇が朔から離れたことを知っているようだった。

その上で、潔斎のあいまの息抜きになるようにと、さまざまな絵物語や上質な紙を持ってこさせるので、今も手すさびに書いている途中だった。



それでも、

思わず筆を握ったまま降りしきる雪に見入ってしまうのは、物思いがそれだけ深いからなのだろう。


白と紅梅の、雪の下で重ねた袿を見にまとった朔は、誰知らず筆を置いて嘆息した。



雪が降ると、静寂が深まる気がするのは自分だけだろうか。


——あの人の、真雪(さねゆき)という言葉通り、私の気持ちも凍てついたまま、春まで溶けることはないのかもしれない。



そんな気持ちでぼうっとしていると、小萩が白湯を持ってきてくれた。


——と、


そのかたわらに、忍ばせるように文を差しだした。



大炊君からは、なかなか会えないのをわびるように、文が届けられることが多いため、今回もそうなのかと思ったら、どうやら(おもむき)が違うようである。


大炊君は、いつも四季折々の花に文を結んだり、細工の美しい箱に忍ばせたりと、風情に工夫を凝らしてあるのだが——

それはただ、厚手の白い紙を折りたたんだだけのようだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ