表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朔姫  作者: 星 雪花
43/56

秘め事


大炊君が梧桐の宰相として宮中にいることを、朔は固く口どめされていたが、小萩だけには打ちあけることにした。

今まで前の屋敷にいる時からずっと、朝夕何の隔てもなく過ごしていたため、急に隠し立てすることはできなかったのだ。


しかし朔は、そのことだけを話し、水泡(みなわ)を通して真雪からの文をもらったことは言わなかった。


水泡が文を待っていたとはいえ、何て考えなしの返事をしてしまったのかと、朔は今では深く後悔していた。

その苦悩があまりにもみっともない気がして、そこまで明かすことはできなかったのだ。


小萩は側仕えの女房たちが、しきりに梧桐の宰相が、と騒いでいたのはそのためだったのか、と納得した上で、こっそりささやいた。


「今まで、お屋敷にいらっしゃることも本当に少なくて、どうしてそんなにお忙しいのかと思っていたけれど、そういうことだったのね」



そして、女の身でいながら宰相の地位にまで昇りつめている大炊君は、やはり只者ではないと思い、恐れ多くも誇らしくも感じるのだった。


小萩は、朔が何気ない風によそおってはいても、やはり母君の郷里である(やしろ)に行きたいだろうという気持ちを察していて、その思いのはざまで揺れ動いていた。


あの夜、一度だけ会った真雪という人は、まさかこんな場所に当の姫君がいるとは思いもしないだろう。


でも、もしもつきとめられたら、

こうまでして守っている朔に何か外聞の悪いような、都合の悪いことも起こるだろうと思うと、とても探しあてる気にならなかった。


大炊君が宮中で権勢をふるっているのなら、尚更双方にとって良くないことにもなりかねない、と思いつめて、その件についてはあえて何も口にしなかった。


朔も、なぜあんな返事をしてしまったのかと、そればかり気になって、話す気もおこらなかった。


しかし本当に、あの人が月影神社に連れていこうと思っているのなら、魂だけになってもついていきたかった。


——大炊君は、宮人と会う自分を許さないだろう。



でも朔は、

初めから大炊君にお願いしていたのだ。


そして、考えれば考えるほど、そうすることだけが、真実必要なことに思えてくるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ