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ノスタルジアの箱  作者: 水菜月
箱をころがす。
6/27

広告からの妄想


築3分、 徒歩5年。こんな物件のチラシを見た。



家が建ってからの時間、カップヌードルの如く

3分の速効具合もさることながら

やはり、気になるのは、徒歩5年。


5年あると、一体どれくらいの距離を歩けるのか。

仮に 1キロメートルを15分として計算すると、時速4キロ。

*不動産屋の徒歩×分は、時速約5キロ、相当早歩きらしい。


ええっと、24時間歩いたとして、96キロ。

1年で35040キロ。 それを5年で175200キロメートル。

地球一周、約4万キロとして、 約4周分。

何度もぐるぐるして、もとにモドル感じなのか。


ただし、これには睡眠や食事、休憩その他が含まれてない。

何、電卓出しちゃってんだ、俺。

大体、地球ぐるっと一周ってなんだよ。

単なる 赤道沿い散歩じゃないか。しかも 海は歩けないぜ。



もしかすると、放浪者向けの物件なのかもしれない。

5年旅して帰ってきても、3分で組み立てられるテント。

かの吟遊詩人スナフキンは、どのくらいの頻度で

ムーミン谷に 帰省してたのかね。


たかが「誤植」の広告に、ずっと心を躍らせているとは

俺は暇人か? 空想ずきがおかしな人種であることの証のようだ。


まるで悠久の歴史、ロマン、放浪、果てしない行く先。

ああ、5年の間に 何処を歩いてコヨーカ。

飛行機に乗っても、反則にならないだろうか。


目を瞑ると砂漠が見える。らくだに乗って(これも反則か)

どこまでも続く うつくしい砂丘。

砂と風が描く模様が、いつしかハチドリになって 飛び立つ。


車が通らない石畳の道を カッツコツと馬車でゆくと、そこには

美しい二人のゴンドラ漕ぎが、男の俺にまで愛を歌ってくれる。

その透き通る、声の掛け合い。なかなか満更でもない。



トローリーバス、ねこ車、ロープウェイ、気球、空中ブランコ。

各国の 素晴らしい乗り物たち。


ふと気付く。ちっとも歩いていない。楽してばかりいやがる。

もはや反則づくし。 貸し自転車も、ありか、なしか。


すこし郷里に寄ってもいい。3度くらい行けそうだ。


各地の きれいなおねえちゃんとの あれやこれや。

気分は まさに船乗り。

港には、俺の女たちが、俺が乗るのを待っているぜ。


妄想は尽きない。 ビバ、5年。


金はどうするんだ。 仕事はどうするんだ。


いい加減戻って来い、自分。

残念だが、昼休みは もう終わりだ。


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