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ノスタルジアの箱  作者: 水菜月
真白き冬にて。
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真冬の月


或る日、あなたも月だと気づいてしまった。

また 月に魅入られていくのね、私。


あなたは満月ではなく、少し欠けた月みたい。


今夜は 立待月たちまちづき

今か今かと立って待つうちに 月が出るのです。

雪模様の空に その光は見えるのでしょうか。


毎夜空を仰いで、見えない時から心待ちにしている。

尖った三日月の先端が映える時も、まんまるから欠けてゆく時も。

遠くて 真白な 冴え冴えとした灯りに 誘われてしまった。

あなたは 真冬のお月さま。



私は すきだと思ったら

無遠慮に近づいて まとわりついてしまうから

相手からしたら 鬱陶しい存在。


同じ視線で見つめ返してって 目を覗き込むから

相手は戸惑って、その行為に 変にどぎまぎして

もしかしたら僕もって、勘違いしてしまうかもしれない。

今までの人ならば。


君は、誰かに似ていますね。

あなたは いつもそう言うの。嬉しくないわ。

私は 私であって、誰かとなんて一緒にしてほしくないのに。


僕は、君が今までに好きになった人とは違います。

近づいてくるのは拒みませんが

離れていくのを止めることもしません。

冷たいと思いますか。


そう、あなたはあなたであって、他の誰でもない。

つめたいよ。さみしいよ。 遠いね。

あなたは 誰かに 夢中になることがない。

恋焦がれるきもちが わからないのだって。



なのに、気まぐれに にこっとするんだよね。

ちょっとだけ 君を独り占めしたくなりました、だなんて

戯れに言ってくれた日もあったね。やさしい目をして。


僕の部屋に閉じ込めて、珈琲を飲みながら

ずっと一緒にいたいだなんて、平気で言うの。

朝から晩まで君のことばかり考えている。寝ても覚めても、なんてね。


全力で守ります。

私に何かあると すぐにすっ飛んでくるの。

どうしたのかな。ヒーローのつもりなのかな。

焦ってるあなたがかわいくて、困らせたくなる。


自惚れてるあなた。

それはそうね。私のきもちを知ってるんだもの。

好かれている男には余裕があるのです。だなんて憎たらしい。



冬の森の奥の小屋から 物語を紡ぐカタコトした音。

そっと近づくと、その硝子窓は 寒さに曇っていて

はぁって息を吹きかけて、そっと暗号を伝える。


かすかに見える透明の先に ちらりと見えたあなたの影。

私に気づかずに、夢中で手を動かしてる。

レモネードの香りがして、湯気でまた視界が塞がれる。

幕が下りる。線が引かれていて、入れない。


拒否されて、半透明の絨毯にくるまれて

お月さまのストローに吸い上げられていく 甘い夢。



君は 恋をし過ぎです。危なっかしいです。心配です。

花を追い求めるように 誰彼見つめてる。

私のこと、そう思っているのでしょう、あなたは。


今、私がすきなのは あなただけです。というと、ほらって。

今、であるならば、変遷していきますね。

変わっていくものに 僕は惑わされたりしない。


自分から 遠去かっていくその時を想像してみる。

そんな日が 永遠に来ないといいのに。

あなたはただ見送る。さみしくなったりしない。泣きたくなる。


きちんと友だちになれるようにするって誓ったけど、できるかな。

そうしたら ずっと一緒にいられるかな。

自分のことを棚に上げてるってわかってるけど、きゅってなる。


束の間でも、その日まで 側にいたいって思って くっついてる。

いつのまにか じゃれたねこのように、私たちは一緒にいる。

微かに甘い匂いがするその腕に ぎゅっとしがみついてる。

やわらかそうな髪にそっと両手を入れて、耳ごと撫でてみたい。


私の片恋。たいせつな片思い。





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