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ノスタルジアの箱  作者: 水菜月
官能ごっこ。
23/27

甘噛み


君は 甘噛みのこいぬと 同じで

構ってほしいと

歯がムズガユクなると

決まって ぼくの肩を 噛みに来る


ねぇねぇと

ぼくの耳に くちびるをつけて

ぺろっと なめるのは くすぐったすぎる


ほしくなると

身体中に キスの嵐を降らせに来る

ぼくはただ黙って、君を抱きしめることにする



物足りない君は

物欲しげな君は

ずっと拗ねた こいぬのように

きゅんきゅんと はなをならす


そんな君を見ているのは

めちゃくちゃ気恥ずかしくて

こどもでもないのに そんな姿を見せるなんて


ぼくにだけ ここでだけ ってわかっていても

逃げ出したい気分になる



こんなに甘えていても、君はぼくの恋人じゃない


甘噛みの返事に ぼくができるのは

唯一許されたキスだけで

そう頼まれているから

君は抱いてはいけない人だから


勝手なこいぬの約束を 破らずにぼくは守る


ぼくは 今夜のたった一回のキスに

万感の想いをこめて

長く 優しく 抱くのと同じように

せつなさを封じ込めて

ぼくのすべてを注いでいる



やっと眠りについた こいぬの涙の痕は

頬から剥がれて

いとおしい 白いリボンとなって

空中に そっと漂いはじめる


いつしか 明日の君を包む紙が

空から舞い降りてきたなら


その涙のリボンは

君を追いかけて クルクル結ぶのだろう

彼の許に届けられる プレゼントとして


ぼくはただ この先を見守るしかない









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