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ノスタルジアの箱  作者: 水菜月
誰かに伝言を託す。
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夢見がちな女の子


♪ Someone to watch over me



ジョージ・ガーシュインの この歌がすき。

甘い綿菓子を 身体中に巻きつけたみたいな気分になる。


いつかどこかの 誰かに宛てた あてのない曲。

もうすぐ 運命の人に逢えますか。

私だけのあなたは、必ずいるはずだもの。


いつかきっと すてきな人が現れる。

私は森の中で迷子になって 途方に暮れているから

あなたが運命の人ならば、放ってなんておけないはず。


登場予定はまだ先だったのに姿を現した うっかり屋さん。

だからもう、腕をつかまえてしまおう。逃がさない。

あなたにとって私は、たった一人の運命の女の子なの。


特別な人は、みんなに騒がれなくていい。囲まれなくていいの。

私だけを見てくれる、私だけの人がほしいのだもの。

委ねる鍵は、たった一つだけ。


ねえ? 見守ってくれる人って、空から降りて来るのかな。




♪ Walz for Debby



ビル・エヴァンスの 空気を震わせるピアノ音。


少し急ぎ足の 心地よい 少女のワルツ。

ロマンチックな気分に浸って、跳ね回ってしまおう。


きっと少女は 誰かを想って

夜中に一人、草の庭で ステップの練習をする。

夜露が降りて 足元を濡らすまで。


夜の淵には 甘いささやき。

夜の果てには そっと あなたに包まれたい。


そんな願いが 言葉なくても届く気がするだなんて

勝手な年頃の片恋は、うすい雲に流れていく。




♪ Almost blue



真冬の凍りそうな夜空

窓を開けて、震えそうな空気の中で 空を見上げて

だいすきな碧いシリウスを探してから

チェット・ベイカーのトランペットを吹く音を耳につける。


これで、大抵の寂しさとは向き合えた。

明日は きっときらりと光る一瞬がやってきて

自分から探しに行こう、まだ生きていこうと思えたんだ。


絶望の淵に立たされて もう立ち上がれないと

何度も 何度も 挫けても

こうして今まで 奇跡的に存在できたことを

いつの日か 遠い日に なつかしくなるように。


ひとりぼっちだった時に暮らした部屋で

音楽と 優しい人の声が 木魂のように積もっていって

いつしか 私を勇気づけてくれたこと 忘れてはいないよ。





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