第1話:不遇おっさんは、パーティーを追い出される
なろうで流行りの「追い出された不遇おっさんがスローライフで無双する」ストーリーに
ハリウッド進出に必須の「ゾンビとサメ」要素を、高度な柔軟性を保ちつつ臨機応変に入れ込みました。
異世界の冒険者ギルド。
そこは冒険を求める若者達が集う場所。あるいは冒険の生業とする者達が依頼を受ける場所。
出会いがあれば、別れもある。
その日の冒険者ギルドでは、ある冒険者達に別れのときが訪れようとしていた。
少しばかり、変則的な形ではあったが。
「だーかーらーっ!おっさんは、もうパーティーから出ていってくれ!って言ってんだよーっ!」
堪忍袋の尾が切れた、とばかりに遠慮呵責のない言葉をぶつけたのは、スラリと背が高く青みがかった魔法的金属の鎧を身に着けた眉目秀麗な若者だ。年の頃は20前後だろうか。
漆黒の長髪、塗れた黒曜石のような瞳、白磁の肌、物語の中から出てきたような美しさの若者である。
普段なら、その外見に相応しく丁寧な言葉遣いを崩さないのだろう。
それだけに、いったい何事だろうと、この種のトラブルを見飽きたギルドの冒険者達の視線を引き付けざるを得ない。
もう一方の主役である、若者に怒鳴られた男に視線を移せば、そのパッとしない風采を論わざるを得ない。
筋力はあるのかもしれないが、中背のずんぐりとした体躯は若者のスマートさとは好対照だ。着ている鎧も分厚い鉄片を革紐で巻きつけたような実用一辺倒のもの。年は40に届こうというところか。普通なら引退して農場に引っ込むか、家を買って雑貨屋でも始めて良い年だ。つまりは、残され者で落ちこぼれだ。
輝く未来の待っている若者のパーティーメンバーに相応しいとは、とても言えない。
何よりもダメだ、と見えるのは、その目だ。
腐った魚のような目。
自信は目に現れる。腐った目は、負け組の現れだ。このおっさんはダメだ。負け組だ。
十人が十人に、そう思わせる目をしている。
「なあ。そういうなよ~。10年間、一緒に頑張ってきたじゃないか。これからというときに、それはあんまりじゃないか」
冴えないおっさんの弱りきった言葉に、ギルドの聴衆達も同情的な雰囲気に流れる。
たしかに、そのおっさんは今では冴えないかもしれない。
だが10年間も一緒に組んできたのなら人として尊重するべきではないのか。
もう少し言い方を選ぶべきではないのか。
「うるっせーんだよっ!だって、おっさん、ゾンビじゃねーか!!」
「「「「えっ」」」」
異世界コンサル株式会社(原題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)幻冬舎より書籍化
宇宙ゴミ掃除をビジネスにする話 連載中
などを書いております