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妄想集①

作者: 斎藤魚

死んでよ!、と思っただけで口にすることはなかった。

全部そう。私、思ったことって口にしないんです。わかるでしょ?例えば、嫌いなクラスメイトに死ねなんて面と向かって言わないじゃない。普通はね。

死ね、死ね、死ね、死ね!

常に思ってるけど、平気な顔してみんな生きてんのよ。

「おい石川、お前この課題いつまで出さないつもりだ?」

クソつまんない大学の講義にクソつまんないレポート課題を出す催促、これで4回目。

「すみません、いま病院に通ってて...調子悪いんです」

「......それでも課題は出せるだろ、お前もう単位なしだぞ」

「すみません...今度こそ出します」

まあ、出さないんだけどね。


全部つまんないし全部死んじゃえばいーのにーって思うだけ。思うだけで別に殺人とかテロとかする訳じゃないし警察だって安心安全でしょ。私って意外と社会に貢献してるんじゃないかしら。

死ね死ね!って思ってるけど実際人が死んだらどうなるのか、私は分かってるわ。仮に私がこの大学のロビーで灯油ぶちかまして火つけて死んだとしてもみんな「キャー」とか「うわー」とか言って二日後くらいにはゆっくり電車にでも乗って登校してくるんでしょ?

死ね!


「ひろみ~!お昼一緒に食べよッ」

友達のリサとは中学からの幼馴染。結構趣味も合うし、喧嘩もそれほどしたことはない。

私の暗くて短い髪とは対象的に茶髪でいつもポニーテールをしている。

「今日お弁当なんだ、テラスで食べない?あ、ひろみもおベント?」

「そー。彼氏がつくってくれたヤツ」

実はこんな私にも同棲している彼氏がいるのだ。有名大学の医学部。頭はいいけどお金がなくって今は私が家賃を全部払ってるけど、それなりに幸せよ。

さっきの大学教授とのやりとりを話したくてリサの方を見ると、満面の笑みでリサはこう言った。

「死ね!」

......しね?は?

「.......え?」

「死ね!」

は?なにこの人。しねって言った?もしかして聞き間違い?死ねじゃなくっていいねって言った?

やばいなんも考えられない。リサ、いま死ねって言った?あんなに明るいリサが?中学の時私の筆箱取って隠したりして遊んでた男子に「コラーッ!」って怒ってくれたあの子が?

「なに、どしたのリサ?死ねって...」

リサはにこにこ笑ってそれ以上なにも言わない。

「死ね!」「死ね!」

えっ何?

気付けば通りがかった人たちが死ね!と言いながら私たちのところにぞろぞろ集まってきた。

死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!この言葉がぐるぐる回る。

死ね?死ねって何?私が?死ぬの?どうやって?

「死ね!」

お前が死ね!


「次のニュースです。昨日、愛知県○○大学で20歳の女性が頭から灯油をかぶり死亡しました。」

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