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俺はデュラハン。首を探している  作者: 錬金王
二章 聖女との邂逅
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攻守一体の骨

本作品である『俺はデュラハン。首を探している』がレッドライジングブックスから書籍化いたします。ここまでこられたのも読者様のお陰です。ありがとうございます! これからもよろしくお願いします!

 

「せあっ!」


 数多の骨を吸収したスケルトンドラゴンに聖騎士のリアが果敢に斬り込む。


 聖属性を帯びる槍の攻撃によってその身体を削り取っていくが、回復したスケルトンドラゴンの装甲は厚い。


 リアが聖槍を突き立て、薙ぎ払い、切断していっても致命傷を与えることはできず、逆に装甲となる骨でお返しとばかりに突き返してくるくらいだ。


 横っ腹から飛び出た鋭い骨の数々がリアへと襲いかかる。


「くっ……!」


 攻撃を中止して体をよじるリアだが、全てを躱す事はできなかったようで何本かの骨がその身体を掠めた。


 リアの滑らかな白い頬や腕から一筋の血が流れる。


 体勢を崩しながら軽傷にとどめたリアだが、頭上からはスケルトンドラゴンの巨大な足が迫っていた。


 彼女ならあっさりと避けられるかもしれないが、結構危ない状況かもしれないので俺は慌てて駆け出す。


 そして、振り下ろされる左脚目がけて、横から思いっきりアダマンタイトの大剣を叩きつけてやる。


『ガアアアアアッ!?』


 スケルトンドラゴンが驚いたような声を上げながら仰け反る。


 俺が大剣を打ち付けた場所を見ると、足の装甲が大きく剥がれているのが見えた。もう二発くらい叩きこめば足を抑えることができそうである。


「デュークさん、助かりました!」


 リアはそう言うと銀色の髪を翻して迫撃へと移る。


 俺もそれに続いて骨の装甲を引き剥がしてやろうと思ったが、スケルトンドラゴンが下顎を大きく開いたので立ち止まる。


「ヤバい!」


 ついに俺の方にもブレスが来る!


 あいつのブレスの威力は実際にこの目で見たので防御力に自信のある俺でも受けようとは思わない。俺は急いで進行方向を切り替えて走り出す。


 すると数秒後、俺の後ろを追いかけるように紫色のブレスがやってきた。


 俺の背後で炎が激しく燃え上がる。


 あの騎士達の鎧のようにドロドロに溶かされたくないので、俺は死に物狂いでデュラハンダッシュをする。デュラハンの力をごり押しした全力のダッシュだ。


 俺が炎から必死に逃げ続けるが、スケルトンドラゴンは軽々と首を振って炎を吐き出し続ける。


 おいおい、そのブレスいつまで続くんだよ!? リアは何をやっているんだ。


 走りながらもチラリと視線をやると、リアは突き出す骨を槍で切断しながら攻撃を見舞っていた。しかし、装甲が厚いせいか効果的な一撃を与えられないらしい。


 その場にとどまって連撃を入れれば致命傷になると思うが、ずっと同じ場所にとどまっていては大量の骨に反撃されてしまうのだろう。


 今は仕方なく全身の装甲を削っているという感じだ。


 ……首に一撃でもいれてブレスを止めてくれれば非常に嬉しいのですけど……。


 もしかして俺ってば囮に使われている?


 俺が不安に思いながらダッシュしていると、ブレスの持続時間に限界がきたのか紫色の炎が掻き消える。


 ここがチャンスだっ!


 ブレスを長時間放ったので再びブレスを打てないだろうと判断した俺は、デュラハンダッシュでスケルトンドラゴンの懐へと一直線に走り出す。


『ガギャアアアアアアアアアッ!』


 大剣を右手に引っ提げながら突貫する俺に、スケルトンドラゴンは大気を震わせる咆哮を上げる。


 眼窩の奥で揺らめく紫色の視線で俺を睨みつけ、その脚で薙ぎ払わんと腕を振り上げる。


 それを俺は大剣で受け止めることなくサイドにジャンプして回避。


 そのまま横っ腹へと回り込んで大剣を叩きつけた。


 密集した骨の鎧が一気に砕け散る。


 もう一度叩きつけてやろうとした所で、骨の尻尾が俺を薙ぎ払わんと飛んできたので懐に入ることでそれをやり過ごす。


 そして、スケルトンドラゴンの真下に入った俺は大剣を下から思いっきり突き上げた。


『ガギャアアアアアアッ!?』


 響く苦悶の声。どうやら真下は骨の装甲が薄かったらしい。


 このまま下から突きまくってやろうかと考えたが、体から大量に骨が飛び出してきたので俺は一旦退却する。


 突き出た骨の一撃くらいこの身体なら問題ないのだが、あれほど膨大な数の骨だと絡めとられて拘束されてしまいそうだからな。


 骨が全身から突き出たせいかリアも一時退避している。


 スケルトンドラゴンの右側を見れば、骨の装甲が大きく削がれていた。


 どうやら俺が囮になっている間に好き勝手やっていたらしい。羨ましい限りだ。


 俺の大剣の一撃と、リアの聖槍による斬撃によりボロボロと体の骨を崩していくスケルトンドラゴン。


『むっ、これはマズい』


「あっ! ちょっと待ちなさい!」


 すると、システィの魔法から逃れていたリッチが気付いたのか、スケルトンドラゴンの方へと飛んできた。


 またスケルトンドラゴンを回復させるのだろうか。


 せっかく攻撃して装甲を削ったのにそんな事をされては堪らない。俺はせめてもの妨害として、地面に落ちているスケルトンの頭蓋骨を投げつける。


『死者の魂は未だに離れず――ってやめないか! いちいち頭蓋骨を投げてくるな! お前は猿か!』


「うるせえっ! ずっと宙に浮いているお前が悪いんだよ」


 それは空中で浮遊し続けるリッチが悪いんだ。剣や拳が届かなければ物を投げるしかないだろうに。


『死者の魂は未だに離れず死者の血肉を食らいて現世に踏みとどまる『アンデッドヒール』ッ!』


 俺が罵声や頭蓋骨を浴びせる中、リッチは余裕を見せつけるかのように回復呪文を唱える。


 リッチの腕にある杖が振るわれ、スケルトンドラゴンの体が再び黒いオーラに包まれる。


 そして、俺達がそぎ落とした骨が巻き戻されるかのように骨の体に戻っていく。


 また回復かよ。これではキリがないじゃないか。


 アンデッドで疲れを知らない俺はともかく、生身の人間であるシスティやリアには負担が大きいだろうし。


『フハハハ! アンデッドである貴様はともかく、人間である聖騎士と魔法使いはきつかろう? 疲れぬ体にしぶとい生命力! これぞアンデッドの真骨頂だ!』


 俺達を小馬鹿にしたように笑うリッチ。人の神経を逆撫でするかのような物言いは腹が立つな。特にきつかろう? とか。


「女神エリアルより授かりしその矢は 如何なる闇をも貫かん『ホーリーアロー』ッ!」


 そんな風に指をさして哄笑するリッチの下に光輝く矢が飛来した。


 それはリッチが大事そうに手にしている杖を打ち抜き、木っ端微塵に破壊した。


「アリア!?」


 リアが驚いたような声を上げて振り返る。


 俺も振り返ってみると、そこには腕を突き出し凛々しくも佇む聖女の姿があった。


 おお、最後のとどめしか手を出さないと思っていたが案外余裕があるのか? リッチの魔法に何かしらの補正を与えていた杖を破壊したのはナイスである。欲を言えばきちんと本体に当ててほしかったが……。


『俺の杖がっ!?』


「ざまあみろ! 調子に乗って笑っているからだ!」


 俺がここぞとばかりに指さして嘲笑してやると、リッチが肩を震わせる。


『ぐぬぬぬぬぬ。デュラハンが憎たらしいが今は構っている場合ではない! 神聖魔法を使う聖女が厄介だ!』


 聖女に注意がいかないように挑発してやったが、リッチは冷静に状況を判断したらしくターゲットを聖女に切り替えられた。


「マズいですデュークさん! アリアが狙われます!」


「もう一発くらいさっきの光の矢を飛ばせないのか?」


「それをすると本当にとどめの浄化魔法が放てなくなりますから無理です! 神聖魔法はどれも魔力の消耗が激しいのです!」


 何てこった。リッチはそれを知っているかは知らないが、アンデッドにとって脅威となる神聖魔法を放置するわけがないよな。


 今までは聖女が動かなかったせいか無視していたが、先程のおぞましい矢を食らって気が変わったのだろう。これがネットゲームで俗にいうヘイト移動というやつか。


「おい! システィ! スケルトンドラゴンに何とか魔法をぶつけて足止めしろ!」


「わ、わかったわ!」


 俺はシスティにそう叫ぶと、聖女を守るべく走り出す。


「私は何とか脚を崩してみます!」


 リアはそう言って聖槍を手に、スケルトンドラゴンの下へと走った。


 再びスケルトンドラゴンの肩へと乗ったリッチが、聖女を指さして叫ぶ。


『あの不愉快な魔法を出す聖女を捻り潰せ!』


『ガアアアアアアアアッ!』


 リッチの命令に呼応するようにスケルトンドラゴンが咆哮を上げて進み出した。


 不覚にも俺も同調の声を上げそうになった。同じアンデッドだし仕方がないと思う。


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