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俺はデュラハン。首を探している  作者: 錬金王
二章 聖女との邂逅
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スケルトンジェネラルの魔法盾

 

 リッチが飛び去っていった後、俺達は取りあえず残っていたアンデッドをあらかた殲滅した。


 システィを餌にしてやれば殴ってくれとばかりにやってくるので、倒すのは容易であった。


 今日だけで何体のアンデッドを倒したことだろうか。百や二百は軽く超えている気がする。


 辺りに転がっているスケルトンの残骸や、動かなくなったゾンビで地面が埋め尽くされているのがその証拠であろう。


 スケルトンは生きているか判断するのに困るから、とにかく細かく砕いておいた。そのせいか地面は石灰でも撒いたかのように白く染まっている。


 歩く度にパキパキと音が鳴る様は割れたガラスでも踏んでいるかのようだ。


 ちなみにゾンビは元人間の身体なので、言うまでもなくグロテスクな絵面となっている。


 人間の体なら確実に吐いているだろうが、デュラハンの体となった今ではそんなことにはならない。


 だが、見ていても気持ちの良いものでもないので、できるだけ見ないようにする。


 地面に転がるゾンビ達を踏まないようにして、生き残りがいないか確かめていると前方にいるシスティが呼びかけてきた。


「ちょっとデューク! 見てよこれ! スケルトンジェネラルが持っている大盾から魔力が感じられるわ! きっとこれは魔法盾よ! かなり大きいけどデュークなら使えるんじゃないかしら?」


 そう言いながら地面に転がっているスケルトンジェネラルを杖で突くシスティ。


「魔法盾っていうからには魔法に強い耐性がある盾なんだよな?」


「そうよ! 魔法盾は魔法に対する防御力がとても高いのよ。例えば、雷の魔法盾ならば普通の人間でも感電することなく、魔法を防御できるわ」


 ほー、それは便利なものだ。


 それさえあれば、俺は逃げ回りながらゾンビ盾とかしなくても済んだというのに。


「まあ、その代わりそこらの盾と比べるとかなり高いんだけれどね」


 魔道具店にも属性杖っていうのがあって、やたらと高かったのが印象に残っている。


 効果はよくあるゲームのように杖の属性の魔法を強化するものだ。杖と同様に魔力を通しやすい鉱石やらを使っているせいか値段が高くなってしまうのだとか。


 きっと高位の冒険者は、そんな素敵な装備に身を包んで戦っているのだろうな。


「ところで、そのスケルトンジェネラルが持っている魔法盾の属性は?」


「魔力の感じや色からして、闇属性の魔法盾じゃないかしら?」


 屈み込んだシスティが、盾を杖で突きながら判断する。


 黒々としており、どこか禍々しい雰囲気を放っているのでそんな気はしていた。


 あの雷魔法を良く使うリッチは、当然また襲ってくるであろうから雷属性の盾が良かったな。


「大丈夫だろうな?」


「稀だけど闇属性の魔法を使える人もいるわよ?」


「いや、呪われている盾とかじゃないよなってことだよ」


「……アンデッド族のデュラハンが何を言っているのよ。死の宣告なんて凶悪な呪いを使う魔物が、呪いの影響を受けるわけがないじゃないの」


 俺が恐る恐る尋ねると、システィは立ち上がり呆れた表情で答えた。


 それもそうだ。俺はアンデッドであるデュラハンなのだ。呪いなんて利くはずがないな。


 無駄にビビッて損した。システィがリッチの指輪が呪われているとか言うからだ。


「デュラハンは闇属性魔法が使えるはずだけど、デュークは使えないの?」


「それが使えたらとっくに使ってるよ。死の宣告同様に魔法も使えないんだよな」


 紫炎は召喚できるというのに不思議な事だ。


 闇魔法や死の宣告については全く使えないのだ。


 特に死の宣告なんて即死チートがあれば楽にクエストがこなせるはずだと思い、暇な夜に試していたのだが駄目だった。


 魔力だって感じられないし、死の宣告も発動しない。


 野兎を相手に呪い殺すイメージをずっとやっていたが徒労に終わった。


「ふーん、まあデュークがおかしいのは今に始まった事じゃないしね」


 おかしな魔法を使うお前には言われたくない。


「とにかく今はこの魔法盾を回収しましょう。使えるかもしれないわ」


 そう言ってシスティが再びスケルトンジェネラルの頭を突いた時、ジェネラルの腕が動き出して杖を掴んだ。


「ヒイッ!? このスケルトンジェネラルまだ生きてる!? ちょっと離して! それは私の杖なんだから! 買ったばかりなのよ!?」


 システィは必死になって杖を引っ張るが、中々取り返せないようだ。


 生者が不用意にアンデッドに近付くからそうなるんだ。


 念入りに砕いたつもりだったのに、アンデッドはしぶといなー。きっとシスティに杖で叩かれて恨みが溜まっていたに違いない。


 思わず感心していた俺だが、スケルトンジェネラルも相当弱っていたらしく、システィがゲシゲシと蹴りつけると杖を離した。


 相変わらず容赦がないな。


 そんな事を思いながら俺は禍々しい魔法盾を拾い上げた。


 ……うん、何ともないな。




 ◆ ◆   ◆




『ゴアアアアアアアァァァァァッ!』


 システィと共に有用な装備品や魔法盾がないかと漁っていると、大気を震わせる咆哮が聞こえてきた。


 俺達は、装備漁りの手を止めて、声の方向がしたであろう場所を見る。


 相変わらず濃い霧が漂っているせいで、周りの様子はわからないが結構遠くにいるようだ。


 システィが表情を少し強張らせながら呟く。


「……今の声ってもしかして」


「スケルトンドラゴンじゃねえのか?」


「やっぱり?」


 こんな咆哮を上げるアンデッドなんて、スケルトンドラゴンくらいしか思いつかないのだが。


 そうじゃなくても、ロクでもない魔物な事だけはわかる。


 咆哮が上がったのはリッチが飛んで行った方角だ。


 眷属を戦わせるとか言っていたから間違いなくあいつの仕業だろう。


 そんな風に心の中で当たりをつけていると、湿地に甲高い笛の音が響き渡る。


「……これって」


「聖女が言っていたスケルトンドラゴンが出てきた時の合図だな」


 リッチが捨て台詞を吐いた後に現れたスケルトンドラゴン。それに大量に出現したアンデッド。


 これらはリッチの仕業とみてよさそうだな。


「デューク、行きましょう」


「聖槍とか持った物騒な聖騎士とクソ聖女がいれば余裕そうだけどな」


「……デューク」


 俺がため息を吐き、遠回しに面倒くさいと言うとシスティが咎めるような声を出す。


「はいはい、わかってるよ。クエストをこなさないと首の情報をくれないしな。お前は宮廷魔法使いを呼んでくれなくなるだろうし」


「そういう事よ」


 俺の言葉に満足そうに頷くシスティ。


 あくまでもクエストをサボるとか面倒くさいという、精神を叱るつもりもないのがシスティらしいな。


 こいつってば基本的に真面目だけど結構欲望に素直だしな。


「それじゃあ行くか」


「ええ」


 掘り出し物である闇属性の魔法盾を左手に装備した俺は、システィと顔を見合わせてから走り出した。


 きっと咆哮がした場所にはあのリッチがいるのだろうな……。


「ヒイッ!? デューク、ちょっと待って! 私だけアンデッドに襲われるんですけど!」


「ああもう! しょうがねえな!」




2章も終わりが近付いて参りました。

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