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俺はデュラハン。首を探している  作者: 錬金王
一章 首無し騎士の冒険者
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デュラハンって危ない魔物らしい

 

 野次馬冒険者に射抜かれたマントを夜の間に装着しなおした俺は、システィを伴って朝早くから冒険者ギルドに来ていた。


 まずは金だ。世の中何をするにもお金がいるのだ。


 それはこの異世界でも変わらない。


 ただ暮らすだけでもお金がいる。本を買うにもお金がいる。家を、安全を買うにもだ。


 なので、俺達は今日もお金を稼ごうと目ぼしいクエストがないか朝早くから探しにきたのだ。


 クエストというのは毎朝早くにクエストボードに貼り出される。


 なので、少しでも良いクエストを見つけようと冒険者達は朝早くから集まってくるのだ。


 まあ、一部にはその自由さを生かして真っ昼間に現れたり、夕方に現れたりする奴もいるらしい。自由でいいなそういうの。


「今日はというか、朝にギルドに来るのは初めてなんだけど……皆朝から元気だな」


 ギルドの扉の前までやってきた俺達だが、すでにギルドの中は大賑わい。


 冒険者達の興奮した声がいくつも上がっている。


 この朝からの盛り上がりようは何なのだろうか?


 まるで冒険者達が夜の宴を開いているようだ。


「徹夜で宴会でもしているのか?」


「んなわけないでしょ。深夜になる頃にはギルドを追い出されるわよ。そうしないとギルドに泊まる冒険者がいるからね」


 俺が疑問の声を上げると、システィがこちらを見上げて呆れたような声を出した。


 そんなに図太い輩がいるのか。


「いや、冒険者っていうと夜に酒飲んで宴会ばっかりするイメージがあるから」


 少なくともゲームやアニメではそうだった。


 クエストをこなして日銭を稼ぎ、夜はパーッと宴会。


 いいよな。そういうの。この身体になってからはそういうのが全くできないのが悔やまれる。


「……それで合ってるんだけれどね」


「やっぱりそうなのか」


「まあ、朝にはクエストが貼り出されるし、良いクエストでも見つかったんじゃないかしら?」


「そうだな。俺達もいいクエストを見つけるか」


 早く大剣を買いたいし、家だって欲しい。


「そうね。今日もエイギルバッファローの討伐でもする?」


「いいけど、お前がマント持って走れよ」


「ごめんなさい。他のクエストにしましょう」


 何て軽口を言いながらギルドへと入ると、


「「なっ!?」」


 朝から元気に話し合う冒険者達がいた。それはおかしくない光景なのだが、おかしいのはその姿だ。


 何とギルドにいる冒険者の半分以上が赤いマントを装着していたのだ。


「おっしゃあー! 昨日の新人の噂は聞いたか? この赤いマントがあればエイギルバッファローが面白いようについてくるらしいぞ? 俺が囮になって引きつけるからお前達は興奮して寄ってきた奴に槍で横から突いてやれ!」


 と、言う者や。


「これで奴等の大群を集めたら一気に魔法をぶち込め! ただし外道魔法使いのように味方には当てるなよ?」


 と、俺と同じ作戦を立てる者。


「俺が奴等をこの地点にまで引きつける。そこで大きな落とし穴に奴を落として……」


 と、堅実に作戦を立てるものと様々であった。


「……これって皆エイギルバッファロー狙いってこと?」


「……そうみたいだな」


 どうやら昨日俺達が二十頭以上の牛を一気に討伐したと聞いて、その方法で荒稼ぎしようというわけだろう。


 野次馬冒険者達の姿もあることから、あいつらが広めたんだろうな。


 それで、翌朝から早速準備して集まっているということか。


「おい、あれって外道」


「シッ! 静かにしろ。恨みを買われたらクエスト中に背中から打ち抜かれるかもしれんぞ」


「おっかねえ……」


 俺は先程からチラチラ聞こえる外道魔法使いっていうのが気になるんだが……。


 まさか俺の隣にいるシスティではなかろうな? 昨日の好奇心とは違った、畏怖の視線が集まっている気がする。


「……何だか変な光景ね」


 しかし、当の本人はそんな様子に気付いた様子もなく、室内を睥睨する。


 赤いマントを着た冒険者達がテーブルについていたり、二人で喋っている姿はとてもシュールである。


 まるで、アメリカのヒーローのコスプレ会場にでも迷い込んでしまったかのようだ。


 似合ってもいないのに、赤いマントを着けている感じがまた何とも言えない。


「まあ、どちらにせよ、これだけの冒険者が昨日の方法で牛を討伐しようとしたら混雑するだろうな」


「そうね。ぶつかり合いそうで怖いわ」


 俺からすれば、システィの魔法が他の冒険者に当たってしまいそうで怖いのだが。




 赤いマントを着た冒険者達が続々とギルドを飛び出し、落ち着いた頃。


 俺達はクエストボードを眺めていた。


「こうして見ると多くのクエストがあるんだなぁ」


 討伐クエストや採取、採掘、護衛、家の屋根の掃除、荷物運びと雑多なクエストがクエストボードに貼り出されていた。


「そりゃそうよ。ここは多くの人が集まる王都よ? 当然冒険者も多く集まるし、クエストも多くここに貼り出されるわ」


「うーん、これなんかどうかしら?」


 システィがいくつかのクエストを読み上げていく。


 ゴブリンの討伐、軍隊アリの巣の調査、オーガの討伐、ブルーベアーの退治、と王都の近くに棲息するであろう魔物の討伐クエストだ。


 難易度からすると新人の俺達でもこなせそうなクエストらしい。


 システィから説明を受けながら色々と眺めていると、ふと気になる貼り紙が目に入った。


「……嘆きの平原でのスケルトンの討伐?」


 俺がリアルな骸骨の絵が描かれた貼り紙を掴むと、システィが眉を歪めて嫌そうな声を出す。


「ええ? スケルトンの討伐? そんなクエスト受けたいの? 嘆きの平原ってここからは遠いし、霧が多くてアンデッドがうようよいる危険地帯よ? 私達二人じゃ無理よ」


 ちょ! アンデッドがうようよいるって!? 俺もそこにいけばアンデッドに会えたりするのだろうか?


 俺と同じデュラハンとかいないのだろうか。


「いや、受けたいんじゃなくてアンデッドの魔物に詳しくないから気になったんだ。どんな魔物がいるか」


「ならいいけど。そうねぇ、スケルトン、スケルトンアーチャー、スケルトンウォリアー……」


「ごめん。同系統の魔物まで細かく言わなくていいから!」


 絶対スケルトンだけで何十種類もあるだろ。それじゃあ時間がかかりすぎる。


「それもそうね。スケルトン、ゾンビ、ソウルイーター、スケルトンドラゴン、リッチ、レイス、といった奴が基本的に多いかしら? あとはそれぞれが戦士だったり虫だったり、種類が違ったり、強化系だったりって感じね」


 すらすらと答えるシスティに俺は「なるほど」と頷く。


「その強化系にスケルトンナイト、スケルトンジェネラルとかがいたりするんだよな?」


「ええ、そうよ。全く知らないってわけでもないのね」


 少し感心したようにシスティが言う。


 まあ、そこらへんはゲームでも定番の魔物でしたから。


 となると、それらの進化形に不死王とかが存在したりする感じだな。ゲームと同じような魔物がいる異世界だ。いてもおかしくはない。


 しかし、これでは肝心な事が知れていない。


「それじゃあ、デュラハンはどうだ?」


 別に嘆きの平原にいなくても、知っているのならこの世界でデュラハンがどのような存在か知れる機会だ。


 聞いておくべき情報だ。自分の力の把握にも繋がることだし。


「デュラハン? そんな危ない魔物は滅多に出ないわよ? デュラハンなんていたら、緊急で討伐クエストが発注されるでしょうしね」


「えっ!?」


 予想以上に危険な魔物らしく、思わず驚きの声を上げてしまう。


「急に叫んでどうしたのよ?」


「えっと……、デュラハンってそんなに危険な魔物な感じ?」 


「当たり前よ。生者を憎むアンデッドの中でも凶暴なヤツよ? 首の無い馬に跨って大剣で襲いかかってくる上に、防御力もでたらめに高いんだから危険に決まってるじゃない」


「お、おお、そりゃ危険な魔物だ……」


 想像していた以上に危険な魔物だったようで、言葉が萎んでいく。


 自分が紫炎に跨って人々に襲いかかる姿を想像すると、何と危険な事か。


 並みの魔法や攻撃もビクともせずに走り、大剣を振るう姿はこれまでの戦闘を顧みると容易に想像できた。


 俺がデュラハンってバレたら緊急で討伐クエストが発注されるんだな。


「まあ、そんな危険なアンデッドは聖女様に任せたらいいのよ。それより今日のクエストよ。どれにする?」


 システィが俺の手にある貼り紙をひったくって戻す。


 また聖女様か。というか聖女様なら勝てちゃうかもしれないんだ。おっかねえ。


 まあ、デュラハンの事はひとまず置いておいて、システィが先程挙げたのは、ゴブリン、軍隊アリ、オーガ、ブルーベアーのクエストだったな。


 他のクエストは王都から遠かったりしてパスだ。


 まずは王都周辺の魔物を倒して、少しずつ実力を上げるのだ。


 他にあるやつは、単に魔物が強かったり、経験がないと難しいものらしい。


 うーん、ゴブリンはそれほど報酬的に美味しい魔物でもないしな。そこら辺によくいるので、道すがらに倒すことができそうだ。


 軍隊アリってあの昆虫の蟻だろ? どう考えても囲まれて袋叩きにされる気しかしない。


 オーガは強そうだし。却下。


 ……ブルーベアーか。魔の森でもクマ公とはよく戦ったし、こいつなら楽に倒せそうだ。


 クマと戦う時の心得は既に得ている。


 サッと頭を腕に抱え込んで、へし折るのが一番なんだ。


 クマ公の場合は背中の氷柱が邪魔だったし、飛ばしてくるから苦戦したけど、イラストを見る限り氷柱みたいなのも生えていないようだ。これならいける!


「ブルーベアーなんてどうだ?」


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