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裏庭には桜井はもちろん、花菱も来ていた。
「えー……今朝、松永先生から話があって、園芸部が正式に部として認められました。4月から本格的に活動スタートで、松永先生が顧問をしてくださるらしい。それから、私事ですが、例の騒ぎの件も、お咎めなし俺の名誉も回復して、無事解決となりました。これも一緒に頑張ってきてくれた海生、励まし支えてくれた花菱、ここにはいないけど計画を練り学校側にかけあってくれたレオのおかげです。本当に、ありがとう」
深々と頭を下げる桜井に、つられて俺と花菱も頭を下げる。
桜井の夢が、亡くなったお父さんの想いが報われる時がきたんだ。
一年の頃から一人で頑張ってきた桜井の努力がようやく実を結ぶんだ。
「長かったなあ」
ぽつり呟いて、桜井は鼻をすする。
「……ずっと一人でやってくんだと思ってたんだよな。不安な時もあったし、こんなことして何の意味があるんだよって思うこともあった。関口に嫌味言われて、雑用おしつけられて、もうやめようかって思う時も、たくさんあったんだよな」
空を仰いでみたり、手を組んだり落ち着かない。
「辛かったけど、でも途中から、一人じゃないって気づいてさ。一緒に頑張ってくれる、応援してくれる友達がいるから、やれるとこまでやってみようって。ここまで来るのに一人じゃ絶対無理だった。本当に今、嬉しくて。お前たちと、今日この日を迎えられたのが本当に、ほんっとーに、嬉しくて」
堪えきれなくなったのか桜井は顔を覆って俯いた。
俺も感極まって、両目から涙が溢れてきた。
いろいろ、辛かった。それが今度こそ報われるんだ。
今度こそ、桜井とちゃんと友達になれるんだ。
胸張って、一緒に園芸部の活動出来るんだ。
「やめようよー、こんな図体でかいの2人して泣いてるのを誰かに見られたら、気味悪がられちゃうよー」
冗談なのか本気なのか、花菱は困ったように笑いながら言った。
やめろと言われても、なかなか止まらない。
だって本当に嬉しいんだ。
「嬉しいなら笑えばいいのに。これからまだまだ楽しいこと嬉しいこといっぱいあるよ、きっと。その度に泣いてたら大変だね」
花菱の言葉に、それもそうだと笑った。
そうだ。ここで終わりじゃないんだ。ここから始まるんだ。
これからまだまだ楽しいこと、だけじゃないけど、いろんなことが待ってるんだよな。
泣いてる場合じゃない。気合いいれていかないと。
桜井と顔を見合わせて、泣き笑い。大きく息を吸い込むと、春の香りが胸いっぱいに広がった。
<fin>
だらだらと長く続いたお話もこれにて終了となります。
ここまでお付き合いくださった方々、本当にありがとうございました。
彼らのお話はまだまだ続きますので、別のところでまた楽しんでいただけたら、時間つぶしにでもなれば幸いでございます。




