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《塔》の宝物庫

 実は《搭》には、宝物庫と名のつく場所が二箇所ある。



 一つはただの宝物庫。

 ここには一般的に宝石や貴重な資料など金銭価値として重要視される品が収められている場所だった。


 そしてもう一つは禁断の宝物庫――通称《禁庫》と呼ばれる場所である。

 この《塔》においてのみならず世間一般の常識においても、あまり持ち出すのは敬遠されるべき品――つまりいわくつきの品――がいくつも収められていた。





 この《塔》に人が集まった当初、貴重と思えるものは全て同じ場所に収められていた。

 出し入れの不便さはあったがそれほど区別する必要も無かったし、まだ《塔》が出来たばかりと管理が甘かった理由も一つに挙げられる。

 だが年月を経るにつれ問題が発生したのだのである。

 短い目で見れば増える量は少なくとも長い目で見れば収められた品は膨大な量へと膨れ上がり、気付けば宝物庫には管理し切れないほどの品が収まっていたのである。

 収められている品は、外部に出すことを禁じる物もから持ち出すことに何ら問題無いものもと、実にバリエーションに富んでいた。

 さほど問題無さそうなのを挙げるならば貴重な宝石類や装飾品、何の変哲も無いだが資料としては価値ある民芸品や実用品の類。逆に禁書と呼ばれるもの、今の技術ではもう作れないとされるような品々、または強大な力を秘めた宝物など、外部においそれと出すのが憚られるようなものまで同じ場所に収められていたのだ。

 そして必要な物を探し出す労力も増えた。収めていった時期の差や収めた者達の性格もあってか、内部は非常に煩雑さを極め、どこに何があるのか探し出すのを更に困難に陥れていた。

 目録も一応は存在していたが一時の空白期間があったりしたために正確さには欠けており、一時は正しい目録を作るべきとも言われていたのだが、それにはある一つの問題があった。

 何故問題があるかというと、実はこの宝物庫には強力な番人がついていたからであった。


 それが《守護者》。


 かつて強大な力持つ古き民のためだけに存在したとも言われる者達の名称である。

 伝説に語られる守護者達の姿は、どの書物を紐解いても荒唐無稽な話ばかりである。

 秘めたるものは計り知れず、契約のもと己が本質に従い守るべきものを守る者達。別名『守り手の一族』とも『鍵の一族』とも呼ばれた古の契約者であった。

 そんな《守護者》達が何故この場所に存在するのかという理由は、この《塔》には誰一人として知る者は居なかったが、だが確かに《守護者》達はこの《塔》の限られた場所に確かに存在していたのである。


 話をもとに戻そう。

 この宝物庫の扉には、その《守護者》ついていたのである。

 そのことが一気にこの問題を難しくしていた。

 宝物庫に物を収める事は簡単なのだが、持ち出すのは扉を守る《守護者( かのじょ)》が厳しく監視を強いていたが為に、時には強硬な手段を取ろうとしたものが命を落としかける事態にまで発展したが、それだけ世には出てはならない品も数多く収まっていたのでこの対応はいた仕方の無いものだという意見もあった。

 時折現れる盗人の存在も、声高にこの《守護者》の存在を否定することを難しくしていた。

 古い遺物程度の認識で挑み、手痛いしっぺ返しを食らったものも数知れずいたのである。




 そんな扱いの難しい宝物庫が二つに分けられたのに、深く関わる人物がいた。

 このままでは後々に支障をきたすと、何代か前の《賢人》の一人が声を上げた。


 宝物庫を二つに分けよう、と。


 それは言うは安し行うは難しであったが苦労の末、宝物庫は無事二つに分けられたのである。









 だが何故その賢人が、労苦をしてでも宝物庫を二つに分けると言い出したのか。



 その理由を知るものは、今は誰もいない。




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