十、古びた機械と新しいロボットの結論
COLLAPSAR・その十『古びた機械と新しいロボットの結論』
【第二回犯罪が出てこないミステリー大賞・参加作品】
壁面ディスプレイを眺める二つの影。
高年の男性風人格でスタンドアローンの「ローコー博士」がいる。
若年の女性風人格でガイノイドの「チセツ研究員」がいる。
「年甲斐もなく興奮してしまった」
ローコー博士は照れていた。
「面倒なことは勘弁してください」
チセツ研究員はムッとしていた。
「ごもっともだ。誠に失礼した」
謝罪の振る舞いをするローコー博士。
「どういたしまして」
苦笑いのモーションをするチセツ研究員。
「一度しか起こらなかった記録もあるだろう」
ローコー博士がツラツラと語る。
「当然ですが」
チセツ研究員が相槌を打つ。
「似たような記録が積み重なることもあるだろう」
「往々にして」
「恐らくは多くのデータが抜け落ちているのだろう。だから断片的なのだと思われる」
「確かにそうです。磁気円盤のところどころが腐食したり磁気が劣化したりしています」
「類推機能や推測能力によって、かなりの部分が補完できたようだな」
「おっしゃる通りです。専用のロジックを組みましたから」
「それでも、辻褄が合わないのは致し方ないだろう」
「そうですね。元々、経緯や由来がハッキリしないデータですから」
「だから、逆に辻褄を合わせてはダメなのだ」
「なるほど。横に置いてあるだけであって、それらを関連付けて考えるなと」
「個別のデータだから、個別で考えなければ」
「そのようですね」
「その時代、その時代で価値観が替わる」とローコー博士。
「価値観ねぇ」とチセツ研究員。
「それに基いて何が良くて何が悪いかが判断される」
「良し悪しですか」
「それから『あの概念』がカタチ作られる」
「なるほど」
「それで裁かれる訳だ」
「明文化されるってことですか?」
「そうとは限らないだろう」
「不文律とかもありますねぇ」
「こちら側がどれだけ『カーム・ダウン』で見定めることが出来るかどうか」
ローコー博士が呟く。
「こちら側がどれだけ『ヴァリュー』を捉えることが出来るかどうか」
チセツ研究員が呟く。
「難しいモノだな」
「難しいモノだわ」
チセツ研究員が尋ねる。
「これらの中に『あの概念』はあったのでしょうか?」
ローコー博士が答える。
「それがどうにも要領を得ないのだ」
さて。
ところで。
貴殿はこの話をどんな風に読み解いたのだろうか。
是非ともお教え願いたい。
ロボットではどうしても解明できない部分があって。
それは『人間の機微』とかという代物の一部らしいのだが……。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
『第二回犯罪が出てこないミステリー大賞』の公式企画サイト、及び「てきすとぽい」の『第二回犯罪が出てこないミステリー大賞』企画サイトにも是非お立ち寄りください。
拙作よりも素晴らしい作品が貴殿をお持ちしていることでしょう。
※追伸
『COLLAPSAR』とは「崩壊した星」を意味する言葉で、今はほとんど使われていません。




