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COLLAPSAR  作者: 檀敬
1/10

一、おっさんとおねぇちゃんの思考実験

 COLLAPSAR・その一『おっさんとおねぇちゃんの思考実験』

 【第二回犯罪が出てこないミステリー大賞・参加作品】

 壁面ディスプレイを眺める二つの影。

 一人は高年の男性風。

 もう一人は若年の女性風。

「実に不思議なデータだ」

 高年な男性風がつぶやいた。

「えぇ、全くです」

 若年な女性風がつぶやいた。

「これは、どこから発掘したモノだったかな、チセツ研究員?」

 『チセツ研究員』と呼ばれた若年の女性風が表示を操作しながら答える。

「これは、えーっと……そうだそうだ。思い出しましたよ、ローコー博士。かつて『国立公文書保存協会(ANODP)※』と称されていた建物の地下で、無造作にパッケージングされていた磁気円盤の記録から発掘し解析し補完したデータですね」

 『ローコー博士』と呼ばれた高年な男性風がうなずきながら、表示されたデータを食い入るように見つめていた。

「ふむふむ、そうか」

 ローコー博士はギシギシと音を立てて唸っていた。

 チセツ研究員も画面を見つめていた。

「筋道が詳しく見えてこないんですよねぇ」

 チセツ研究員がつぶやく。

「うむ」

 ローコー博士がうなずく。

「順序がコロコロと入れ違っているのかしら?」

 チセツ研究員がつぶやく。

「うむ」

 ローコー博士がうなずく。

「名称や名前もそれぞれ違って記されているし」

 チセツ研究員がつぶやく。

「うむ」

 ローコー博士がうなずく。

「年月日もチグハグみたいだし」

 チセツ研究員がつぶやく。

「うむ」

 ローコー博士がうなずく。

「博士、さっきから唸ってばっかりじゃないですか!」

 チセツ研究員が声を上げた。

「うーむ」

 ローコー博士はそれでも唸るだけだった。

「はぁ、こりゃダメだ」

 チセツ研究員は溜息をついた。


 長い沈黙の後、老練な声が辺りに静かに響いた。

「これは非常に解釈が難しい古文書データかもしれないな」

 ようやく一つの見解を口にしたローコー博士。

「そんなことはもう充分に判ってますって!」

 呆れ顔で台詞を吐き捨てたチセツ研究員。

「問題は、だな……」

 意味深に声のトーンを下げたローコー博士。

「な、何です? 急に神妙になっちゃって。ビビっちゃうじゃないですか!」

 ゾクゾクする思いでローコー博士の言葉を聞くチセツ研究員。

「この一連のデータに『あの概念』が存在しているかどうか、だな」

 顎をスリスリしながらのイメージで滔々と言葉を発するローコー博士。

「確かに。おっしゃる通りです」

 何回も首を縦に振るチセツ研究員。

「これはあれだな」

 気の抜けた発言を繰り返すローコー博士。

「え? あれって?」

 鋭くツッコミを入れるチセツ研究員。

「あれとこれと……ゲホ、ゲホ、ゲホゲホ、ゲーホゲホ!」

 急に咳き込み始めたローコー博士。

「また発作が始まっちゃったわ。誰か、リペアマンを呼んできて!」

 そう叫ぶと共に、チセツ研究員は人を呼びに部屋から飛び出して行った。

 激しく咳き込むローコー博士は、当然ながらその場から動くことが出来なかった。

 お読みいただき、ありがとうございます。

 『第二回犯罪が出てこないミステリー大賞』の公式企画サイト、及び「てきすとぽい」の『第二回犯罪が出てこないミステリー大賞』企画サイトにも是非お立ち寄りください。

 拙作よりも素晴らしい作品が貴殿をお持ちしていることでしょう。


 ※脚注

 『国立公文書保存協会(ANODP)』は「Association of National Official Document Preservation」の略称[造語]

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