ずっと一緒
「も、もうらめ~……」
すっかり生命力を吸い取られてしまったかの如く地べたにヘタり込む遊輝。
エレノアと同じように激しく、いや、それよりもネットリとウンディーネからの愛を受け取った男の姿である。
「う、うん。私が初めにユウキを独占したせいではあるが……やり過ぎではないか?」
「……止められなかった……ごめんなさい」
「いや、まぁ気持ちは分かる。ユウキなら大丈夫だ、元気を出せ」
「……うん」
遊輝が体力を取り戻す間、エレノアとウンディーネは交代で膝枕を提供した。
若干意識が朦朧としながらも自分の幸福にどっぷりと浸る遊輝。自分が今まで送ってきた人生の中で最上級の充実感に胸が満たされていた。
俺が特に目標もなく生きてきた意味がここにあった、と。
「復活っ!!」
「良かった……」
「さすがユウキだ」
すっかり元通りになった遊輝。ウンディーネとエレノアも一安心だった。
しかし、辺りはすっかり日が暮れてしまっていたので三人は周囲の流木や植物を使って簡易住居を作り、今日はここで夜を明かすこととなった。
植物を敷き詰めて浜辺に落ちていた布を綺麗に洗ってから上にかけて作った簡易ベッドに三人並んで寝ている。
だが、その姿はどこかソワソワと落ち着かない様子。決して三人で寝るのが初めてだとか、そんな理由だけではない。
「な、何か緊張する」
「そ、そうだな。もう一緒に寝ることには慣れたつもりだったが」
「体……熱い」
「えっ!? も、もう夜だし、そんなに暑さは感じないけどな……」
「あ、ああ。三人もまとまっているからだろうな……はは」
「キス……したい」
「ぶはっ!! だ、駄目だよ。これ以上俺耐えられないから」
「そ、そうだぞ。私もその……また暴走してしまいそうで」
お互いに愛を確認し合った者同士、余計に意識をするようになってしまっていた。
もう遠慮する必要も疑念を抱く必要もない。好いた者同士いつでも心行くまで愛し合って良いのだが、そうなるとそれはまたそれで気を張ってしまうと言うか今が『その時』なのかを探ってしまう遊輝とエレノア。対してウンディーネは控え目にだが深く考えすぎず、ただ欲望に素直だった。
ご主人様に「待て」と命令された犬のように許しが出るのを待っているウンディーネの様子に遊輝もエレノアも今がまさに『その時』なのではないかと気持ちが傾き始めていた。
自分の中で色んな事を納得させようと考えを巡らす二人。焦る必要はないが、今の流れと勢いを利用してさらに一歩関係を進展させるのも悪くない。むしろウンディーネの純粋さが奥手な二人の背中を押すように力を貸してくれている今は最大のチャンスなのかもしれない、と。
遊輝も一人の男だ。加えて今まで堪えてきた欲望を今日は少し解放したせいで、理性の抑えが利かなくなってきている。勿論そういうことに興味はありまくるので許されるのなら今すぐにでも野獣に成り果てたいと思っているほどだ。
しかし、ヘタレの自分から申し出る勇気はない。このチャンスを逃したら次はいつになるか。こんな悶々とした状態でまともに日常を送れるか? そんな思いに埋め尽くされ始めていた。
エレノアも既に我慢は限界に達していた。遊輝とキスをした時の乱れようから自分でも次何かあったら最後まで行ってしまうと、我慢なんて無理だと分かっている。だからこそ、今このチャンスに理性を保った状態からきちんと互いに求め合って事に及びたい。そうして既成事実をしっかり作っておけば、これからはスムーズに運べるようになるかもしれない。そんな気持ちに支配され始めていた。
「……駄目?」
「うっ……えと、その……」
「……わ、私は……賛成だ」
「えっ!?」
エレノアが勇気を出した。
ここにウンディーネとエレノアによる遊輝包囲網は完成。
ここまで舞台を整えられてしまったら最早答えは一つしかない。さすがの遊輝も覚悟を決める。
「わ、分かった。だけど……どうなるか分からないよ?」
「あ、あぁ。私はユウキになら何をされても構わない」
「私も……ユウキのこと、好きだから」
バキュ~~ンッ
二人の言葉は遊輝を荒々しい獣へと変貌させた。もうどうにでもなれ、と冴えない男の仮面を脱ぎ捨てた遊輝は……凄かった。
最初はウンディーネの要望通りキスから。しかし、そんなステップは軽々と乗り越え……。
ワオ~~ン
暖かな陽光を感じる。だが、それだけではない。身も心も安らぐ優しい温もり。
心地良さに目を覚ました遊輝の眼前に飛び込んできた光景は口に出すことも憚られるものだった。
極上の目覚めを迎えた遊輝であった。
その後、起きたエレノアとウンディーネと一緒にウンディーネの魔法『流水』で色んな汚れを洗い落とし朝食タイム。
昨日襲ってきた鮫の様な魔物を調理したものを食べている。
「……お、美味しいね」
「そ、そうだな。見た目より味は繊細だな」
「……ユウキのは見た目通り……濃かった」
「ぶはっ!! げほっげほっ……」
「ウ、ウンディーネっ!! もう少し慎みをだな……」
理性を取り戻した状態で改まって顔を合わせると恥ずかしさで余所余所しくなってしまっていた遊輝とエレノアだったが、ウンディーネの素直で純粋な性格に救われたようだ。
三人とも心の距離が確実に近付いている。
「あれ? なんかウンディーネのお腹の辺りに模様がある。前からあったっけ?」
「……分からない……なんだろう?」
「そう言えば水浴びの時にユウキのお腹にも似たようなのが見えたような……」
「え? あ、ほんとだ」
遊輝とウンディーネのお腹の辺りに薄く水色の紋章らしき模様が浮かんでいた。
「あ、これ契約紋かも」
「……契約紋?」
『契約紋』それは精霊と深く繋がり契約を交わした証。精霊が主として認めた相手、そして精霊が力を貸すと言う事の証だ。
遊輝は掲示板で契約紋が現れたらウンディーネは特典として獲得できるとか言う情報を見たなと思い出し、これでこのゲームをクリアしてもウンディーネと離れないですむと安堵の表情を浮かべていた。
「何をにやけているのだ、ユウキ?」
「え? いや、これはつまり要するに、ウンディーネはもう俺の傍を離れられない。そう言う証だってこと」
「なっ……わ、私にはないぞっ!!」
「エレノアだって契約紋が無くても離してなんかあげないから。拒否するなら今のうちだよ」
「拒否する訳ないっ!! 私は身も心も全てユウキに捧げるんだっ!!」
「ちょっ……その言い方」
「……ずっと……一緒」
三人の深い絆が生まれた。
エロ成分多くて申し訳ないです。
何故か毎回ソッチ方面に……。