イヤ~ン
森の探索は滞りなく進んだ。
食料用なのか少しの魔物が棲息していたが、そこまで強いものとは遭遇せずエレノアとウンディーネのおかげで三人とも掠り傷一つ負っていない。
他にも食料や魚の餌となりそうな物は色々とあったが、それ以外には特に……。
「あ、なんか池がある」
そこには小さな池があった。森の中、樹木に囲まれた空間にポツリと。
「もしかすると、ここでも何か釣れるのではないか?」
「おお、そうかも」
ここは隠しステージ的な何かかもと思い遊輝は一応持ってきていた竿で釣りを開始した。
すると、今までゲットしてこなかった種類の魚が次々と釣れた。成長度の上昇率は低かったが、このゲームの要素の一つである『魚図鑑』を埋めるのが遊輝は地味に好きだったので一人黙々と作業に勤しんだ。
「ユウキ……楽しそう」
「そうだな。しかし、ここでは私たちの出番は無さそうだ」
池が小さいので魚も小さく、危険な魚も出ない。となるとエレノアやウンディーネが手を貸すまでもなく……二人はただ釣りを楽しむ遊輝を眺めるのみだった。
しかし、それほど種類が豊富な訳でもなかったので粗方釣り終えたと判断した遊輝がそろそろ止めようかと思ったところ……。
グイッ
「お、食いついた。これで最後にするか」
これで最後にしようと引き上げてみると、見たことのない七色に輝く綺麗な魚が釣れた。
「おおっ!! なんか凄いの釣れた」
「魚……綺麗」
「見事な色合いだな」
釣れた魚を遊輝は早速メニュー画面で確認できる魚図鑑で調べてみた。
その魚は『虹魚』と呼ばれる希少種のものだった。
思わぬ収穫に喜ぶ遊輝と、その無邪気な姿を見てある部分をジュンッとさせるエレノアとウンディーネ。もう遊輝の一挙手一投足が性欲を刺激してしまうほどに二人は愛に飢えていた。
遊輝はとても優しくて絶対に見捨てられることはないと言う安心感を得られる。それに分かりやすい性格で人としても女性としても愛してくれているのは薄々二人とも理解していた。だが、時にはもっと激しく遠慮なしに自分を求めてほしいと思ってしまう。明確なものを求めてしまう。
エレノアはその感情の正体に気付いているので「やはり変態だ」と自らの抑えることの出来ない欲求に悩み、ウンディーネはその感情の解消法が何となく本能では理解しているはずなのだが細かい部分の知識が足りずに悩んでいた。
そんな二人を余所にはしゃぐ遊輝。
その時、急に虹魚が輝きだし光の玉へと姿を変えた。
「え? なんだっ!?」
「離れろっ!! ユウキっ!!」
「ユウキっ!!」
急な出来事に危険を感じ取ったエレノアはすぐさま遊輝の下へ走りだし、ウンディーネは普段の何倍もの大きさの声で遊輝の名を呼んだ。
だが……宙に浮かんだ光の玉はそのまま遊輝の持つ釣竿に吸い込まれて行った。
「へ? さ、竿が吸収……した?」
「そ、そのようだな。しかし、今のところ竿に変化は見られないが」
「良かった……ユウキ、無事で」
その後少し様子を見たが特に変化が無かったので悪い影響は無さそうだと判断し、三人は再び森の探索を開始した。
「う~~みだ~~っ!! ひゃっほーっ!!」
「ま、待てユウキっ!! いきなり飛び込んでは危険だぞっ!!」
「二人も早く来いよっ!!」
「……待って」
森では他に目ぼしい物が見つかりそうになかったので、一先ず端っこを探そうと今度は只管真っ直ぐ進んでいると森を抜け海岸に出た。
ここは絶海の孤島なので回りは一面海だ。
見渡す限り海以外何一つ視界を邪魔しない抜群の開放感と綺麗な青色を見て遊輝はテンションが上がっていた。
「気持ちいぃ~~い」
海に飛び込み楽しそうな遊輝を見て太もも擦り合わせる二人。気持ちが昂ったエレノアは鎧を脱ぎ捨て下着姿になり、このまま海へ入って遊輝を誘惑しようと考える。
そうして海へ向かっていると遊輝の後ろから何か影が近付いて来るのが見えた。
「ユウキっ!! 海から出ろっ!!」
「……え?」
遊輝目掛けて走り出し剣を引き抜くエレノア。次の瞬間、鮫の様な魔物が飛び出して遊輝を襲う……。
が、危機一髪。エレノアの斬撃とウンディーネの魔法『水弾』によって事なきを得た。
「ごめんなさい。羽目を外し過ぎました」
「そうだな。私も注意を怠っていたが、ここにも魔物がいるのは少し考えたら分かること。お互い反省しよう」
「いや、今回は俺が100%悪い。エレノアとウンディーネには迷惑かけて申し訳ない」
「ユウキが無事なら……良い」
「でも……」
「ま、まぁそこまで反省していると言うのなら一つ頼みを聞いてもらおうか。前に何でも言うこと聞くと言っていたしな」
そう言えばそんな事を言ったなと、どんな要求が来るのかドキドキする遊輝。
対してエレノアは違うことでドキドキしていた。
「そ、その……だな……えと」
しかし、中々言葉が出てこない様子のエレノアを見て遊輝は想像以上に酷いことをさせられる可能性を考え出してしまい色んな部分が縮み上がってしまっていた。
「だ、大丈夫。エレノアには色々と助けられてるから……な、何でも来いっ!!」
「あ、ああ……わ、分かったっ!!」
意を決した様相の両者。
そして、エレノアの口から言葉が紡ぎ出された。
「私に……き、キスをしろっ!!」
「はいっ…………はい?」
「だ、だから。キスを……しろと言って……いるんだ……うぅ」
予想外の発言に反応が遅れた遊輝。それを見て何てことを言ってしまったのだと次第に後悔の念に支配されて行くエレノア。
しかし、遊輝も様々な思いを巡らせていた。今まで女性とそんな関係まで辿り着いたことはない。故に確信を持てずにいたエレノアからの好意。エレノアが自分に対して普通以上の感情を持ってくれているのは何となく伝わってきていたが、それは友達として、仲間として、親しい間柄の者に対するものかもしれないと邪推してしまっていた。
かつて少し仲の良かった女性に対して自分を好きなんじゃないかと勘違いし、完膚なきまでに玉砕したことは未だ遊輝の心にトラウマとして残っている。そのため恋愛に対して懐疑的で確信が持てなければ怖くて一歩踏み出すことが出来ないでいた。
だが、エレノアはキスを、遊輝のファーストキスを所望した。それはつまり異性として、しかもキスを自ら要求するほどに自分を好いてくれている証拠だと嬉しさと感動が込み上げてくる遊輝。
遊輝自身も長い戦いを共に戦い抜いてきたエレノア、次第に空気が合う様になり一緒にいることが当たり前になっていたエレノアの事を女性として愛していた。
「そ、その。俺のキスなんかで……良いの?」
「ユ、ユウキのじゃなきゃ……駄目なんだ」
ズギューーンッ
今にも羞恥心に押し潰されそうで意気消沈状態のエレノアから発せられた精一杯の返事を聞いて、遊輝は覚悟を決めた。ズボンを押し上げる猛々しいモノがその決意を如実に表している。
遊輝はエレノアにジリジリと近づいて行く。顔を真っ赤にして伏せていたエレノアもそれを感じ取り、遊輝がついに決心を固めてくれたことを理解した。
少し背伸び気味でエレノアの唇を目指す遊輝。自分で言っておきながら、ここに来て心臓の激しさに逃げ出してしまいたくなるエレノア。
チュッ
それは唇と唇をただ重ね合わせるだけのキス。ほんの一瞬触れただけの、だが遊輝の精一杯のキスだった。
そして、そのキスはエレノアの溜まりに溜まった欲望を解放させるには十分な効果を発揮した。
「うぇっ!? ちょ、エレノんんっ……」
「ユウキ……はむ……んっ、好きぃ……」
ダムが決壊してあらゆる感情がダダ漏れになってしまった様に遊輝の唇を遠慮なく激しく貪るエレノア。その姿は技術が伴っていないので見れたものではないが、その勢いにのまれて遊輝も迎合。
既に二人だけの世界に入り込み、本能のままにお互いを求めていた。
その様子に嫉妬の色を全身に浮かべて見ている者のことなど微塵も気付いてはいなかった。
「はぁはぁ……や、ヤバい。こんなの初めてだ」
「す、すまない。私はなんてことを……うぅ」
「いや、嬉しかったよ。あんなにも俺を思ってくれているんだって」
「い、言うなぁ……恥ずかしい」
大量に汗を掻き、下着一枚だけのエレノアの姿はとても扇情的で遊輝は最後の一線も超えてしまおうかと考え、エレノアも密かに淡い期待を抱いていた時……。
「……ユウキ」
「え? あ、あわわわわっ!!」
「ウ、ウンディーネっ!!」
エロフィルターのかかった視界では確認できずに二人がすっかり存在を忘れていたウンディーネ。その様子は普段のものと違い、熱く煮え滾った何かを抱えている印象を受けた。
初めは痴態を余すことなく見られていたことに羞恥心を覚えた遊輝とエレノアだったが、その徒ならぬ雰囲気に冷や汗を掻き始めていた。
そして、エレノアは焦っていた。最初は本当にただチュッとするだけのつもりだったからだ。それは順番でウンディーヌにも同じ幸せを、と思ったからである。
しかし、我を失い本能のまま気のすむまで遊輝と愛し合ってしまった……と、すれば。
ウンディーヌは無言で遊輝に近付いて行く。その力強く、何か大事な使命を成し遂げるべく歩みは遊輝から逃げると言う選択肢を消し去るほどの威厳を放っていた。
何が起こるのか、何となく理解出来てしまった遊輝。次の瞬間、再び魅惑の世界へと誘われて行く……。
「ら、らめ~~っ!!」