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ゲーム・ダイバー  作者: 暇人
島釣り生活
4/14

新たな……

 二人だけの……。


 「二人だけの釣りライフが……」


 小さな呻き声をあげるエレノア。その原因は……。


 「ユウキ……チュー、して……?」


 透き通るように白く滑らかな肌。肉体その物が芸術品のように気品と繊細さを併せ持つ華奢な肢体。それを惜し気もなく曝け出し、大事な部分だけ隠すように水の揺らめく印象の模様が肌に直接描かれている。緩く波打つ足まで届きそうな長髪は先端に向けて透明感を増していく綺麗な水色。顔は一片の狂いなく隅々まで計算し尽くされた様に美しく、穏やかな印象を受ける。そして髪と同じく水色で、どこか浮世離れした雰囲気を醸し出す瞳を持つ魅惑の女性……ウンディーネ。


 この釣りゲームは一丁前に隠しヒロインなる存在を用意していた。その情報を得ていた遊輝は好奇心と下心で隠しヒロイン捕獲作戦を決行。

 出現条件は第一にプレイ日数が10日以上経過していること。出来るだけ湖の近くに居続けているとなお良し。第二に一人で朝日が昇る前の数時間、湖のすぐ傍で待機すること。

 その条件を満たした遊輝は見事、湖に棲む水の精霊ウンディーネと出会ったのである。


 ウンディーネは優しく穏やかな性格だが、少々気が小さい。そのため、いきなり「さぁ捕獲」とがっつけば怖がらせてしまい失敗となる。

 なので遊輝はとにかく毎日朝日が昇る少し前に決まって湖の近くで待機し、向こうから接触を図って来るのを只管待った。

 その間エレノアはユウキの寝相による触れ合いが無く、しかしユウキにそれを話す事も出来ず、すっかり中毒になってしまった火照る体と寂しい思いを一人で慰めていた。


 その二人の頑張り?の甲斐あって、遂にウンディーネの方から遊輝に接触を試みたのが3日前。それから昼間にも度々姿を見せるようになり、今では遊輝にベッタリとなってしまったのだ。

 ウンディーネにとって遊輝は初めて出会い触れ合った男性なので募る思いも一入。さらには遊輝の決して急かしたりしない待ちの姿勢に心地良さも感じていた。


 嬉しい遊輝と悲しいエレノア。対照的な二人であった。


 「ぶはっ!! ちゅ、チューって、何でいきなり!?」

 「夜……エレノアがしてた」

 「えっ!! エレノアが!? 誰と!?」

 「うわぁあー!! そ、その……果汁をちゅ、チューっと吸っていたのだっ!!」

 「そ、そうなのか?」

 「ユウキが寝てるとき……ほっぺに……」

 「いやぁぁあー!! きょ、今日も良い釣り日和だなっ!! うんっ!!」


 かなり挙動不審なエレノア。その理由は今朝方のこと……久しぶりにユウキの寝相に遭遇し、溜まった欲求のせいで抑えが利かなかったエレノアは遊輝の頬にキスをした。

 そして、その瞬間を偶然ウンディーネに目撃されてしまっていたのだ。


 それを見たウンディーネは穏やかな性格ながら少しの嫉妬を抱き、また、同じことを遊輝にされてみたいとキスの知識が無いながらにも思ったのである。


 (ま、まさかウンディーネに見られていたとは……くっ、恥ずかし過ぎるぅ)


 何とか勢いで誤魔化したエレノアだったが、自分のしたことを振り返り激しく身悶えていた。


 遊輝は最近おかしな言動が増えつつあるエレノアに愛おしさを覚えながら、今日も釣りに赴くため支度を整える。


 釣りの成果は上々で、最近も釣竿が『玄人の釣竿』へと進化した。驚異的な速度で成長している。それもこれもエレノアの協力があってのこと。

 大物が掛ればエレノアの腕力で確実に引き上げることができ、危険な魚が釣れてもエレノアの一太刀で仕留められる。まさにノーリスクハイリターン。うはうはである。

 最近ではウンディーネが魔法でサポートを加えてくれるので、さらに効率はアップしている。


 「今日は中級最後の大物『大剣魚』を釣ろうと思う。かなり危険な魔物だから気を付けてね」

 「ああ、中級程度ならまだ私の力は通用するようだし任せてくれ」

 「私も……手伝う」

 「二人とも有り難う。お礼と言っちゃなんだけど、俺に出来ることなら何でもするから。頼み事とかあったら言ってね」

 「な、何でもか……」

 「何でも……」


 何を頼もうか本気で悩む二人。この機会に告白でも、と意気込むエレノア。チューってしてほしいな、とウンディーネ。







 三人は湖の近くで腰を下ろして昼食をとっていた。大剣魚が出現するのを待っている状態だ。

 大剣魚とは頭に大きな、剣の様に鋭く切れ味の良い角を生やした魚だ。そのために釣り上げる時は細心の注意を払う必要がある。そして、金属性の物に引き寄せられる習性を持つ。

 そんな訳で事前に森の中で集めておいた鉱石を付近に撒き餌として配置し、釣竿にも鉱石を括り付けて待っている。


 すると、何か影が近付いて来た。


 「お、来たかもしれない。二人とも準備は大丈夫?」

 「問題ない。いつでも一刀両断にする備えは出来ている」

 「私も……大丈夫」


 遊輝は竿をしっかり握り、エレノアは遊輝の体を背後から支え、ウンディーネは魔法を放つ構えをとる。


グイッ


 「食らいついたっ!! 一気に引き上げるよっ!!」


 遊輝とエレノアは力いっぱい引っ張り、ウンディーネは魔法『噴出水』を対象の下あたりに発動させ一気に釣り上げる。

 瞬間。その姿を見せ宙を舞う大剣魚。それに合わせて遊輝から離れ剣を引き抜き構えをとるエレノア。







 遊輝たちの前には角と切り離された大剣魚の姿がある。もはやただの大きな魚だ。


 大剣魚から綺麗に切り離された角は硬い一本の骨と繋がっており、まさに大剣という形を成している。これは『魚角剣』と呼ばれる武器だ。釣りゲーで武器を獲得するとは、と言うツッコミは今更だろう。


 その後、数匹の魚を釣ってから遊輝とエレノアは小屋へ、ウンディーネは湖の中へ帰って行った。


 新たな仲間を加え、少し賑やかになった生活はこれからどう変化していくのだろうか。



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