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ゲーム・ダイバー  作者: 暇人
島釣り生活
3/14

魚釣り

 「はあっ!!」


 エレノアは紅蓮の炎が宿った剣『レーヴァテイン』を横に振り払い、対象を仕留める。


 「これで10っ匹目か、結構釣れたな」


 遊輝とエレノアの前に横たわる大きな影。それは魚と呼ぶには少し大きく、禍々しさを放っていた。

 名を『怨念魚』と言う、身投げをした人を食べた魚が怨念に支配され生まれる魔物。憎悪に歪んだ醜い表情を浮かべ生者の魂を貪りにやってくる。


 そう、此処はファンタジーな世界で釣れる魚も魔物ばかり。命懸けの釣りなのだ。


 今日で遊輝とエレノアの釣りライフは5日目。初めの頃は小屋に置いてあった初期装備の『使い古した釣竿』を使って小さな魚を釣り食料だけを調達していたが、釣り上げる度に竿の成長度が上昇するシステムのおかげで徐々に釣れる魚の種類や大きさ、質なども良くなっていった。


 そこで、掲示板で調べた比較的簡単に序盤の成長度稼ぎとして重宝される『怨念魚』釣りに挑戦していた。

 方法は自分の血を少量混ぜた練り餌を釣り針にくっ付けて怨念魚が食いつくのを待つのみ。案外簡単に釣れるのだが、問題は重量がそこそこあるので力が必要なことと釣り上げた後に素早く仕留めないと反撃を喰らい怪我を負ってしまうこと。

 だが、その両方をエレノアのおかげでカバー出来た。

 ステータスの引き継ぎは特典で何か条件が付いてなければ不可能なので遊輝は一般人レベルの強さに戻ってしまっているが、エレノア含め仲間キャラとして獲得した者はその時の状態を維持したままだと言うのが大きかった。


 ある意味チートだが、命懸けで得たものに変わりないので努力に対する報いだとも言える。

 このゲーム自体、低価格の物で早くクリアするのが目的であるので楽しむよりも効率的に行く方向性は間違いではない。


 成長度も順調に溜まり10匹目の怨念魚を釣り上げたところで『使い古した釣竿』は『普通の釣竿』に進化した。


 「いやーエレノアのおかげで作業が捗るよ、有り難う」

 「い、いや、大したことはない。ユウキと違って何故か私は強さを保っているからな」

 「そうだね。相変わらずエレノアの剣を振るう様は格好良い」

 「そ、そうか。しかし、料理も下手で可愛くも無くて女としては全然……」

 「エレノアは可愛いよ。そうやって悩んだりしてる姿とか。それに料理や家事は俺に任せてくれれば良いんだから。適材適所だよ」

 「なっ……か、可愛い、私が……そんな事言われたら」

 「さ、日も落ちてきたことだし……ん? エレノア聞いてる?」


 エレノアは可愛いよ。の段階で既に胸がはちきれそうになってしまい一人の世界へとダイブしてしまったエレノアを暖かい目で見守りながら夕食の支度を始める遊輝であった。


 夕食は怨念魚を半分に切り、豪快に焼いたものと近くの森で採れた果実。

 ボリュームも十分で味も悪くないので食料には困らない。


 「ふぃー、食った食った。お腹いっぱいだ」

 「ご馳走様」


 食事を終えて小屋に戻る二人。しかし、この何てことない空間でも大きな障害が待ち受けている。


 「ほら、エレノア寝て良いよ」

 「いや、ユウキこそ」

 「俺は床で十分だよ。女の子の体は宝物なんだから大事にしなきゃ」

 「お、女の子、そんな恥ずか……じゃなくて、私は戦士だから女とか男とか関係ない」

 「もう役目は全うしたんだからエレノアは一人の女の子。とは言っても魚との戦闘は任せちゃってるし、せめてベッドでゆっくり休んでほしいんだ」

 「そ、そうは行ってもだな、女の子と気遣われるような歳でもないのだが……」


 ベッドが一つしかないので毎回このように「どうぞどうぞ」の応酬が開始され……結局。


 「しょ、しょれなら……い、一緒に……どうだ?」


 と、エレノアから必死のアプローチを受け満更でもない遊輝。実は自分から切り出せないのでエレノアからの提案が来るのを楽しみに待っていたりする。

 エレノアも遊輝が恋愛に奥手なのを理解しているので自分から行くしかないと毎回決死の覚悟で提案を出している。鎧も脱ぎ、黒いレースの下着姿になる。

 ここに大義名分を得たと即答し、並んでベッドに入る遊輝。


 「や、やはり、慣れないものだな」

 「そそ、そうだね。ドキドキする」

 「わ、私もだ」


 こうして異性と同じベッドで寝ることなど両者とも初体験なのでガチガチになってしまい休息を取ると言う本来の目的が果たせているのか疑問なところだ。

 ただ、鎧を脱ぎ下着姿で寝るエレノアの柔肌と暴力的なパイオツに精神的な充足感を得ている者が一人いることは自明の理。掛け布の一部が盛り上がっている。

 もう一人の者は音が聞こえてしまいそうな程に激しく脈打つ胸の鼓動が気付かれていないか、緊張のあまり滲み出る汗が不快に思われていないかなど心穏やかではないが、同じぐらいに幸福も感じていた。


 一人用のベッドなので二人では狭いのだが、逆にそれが二人にとっては嬉しいことのようだった。







ムニュ


 「そ、そこは……んっ……駄目だ、ユウキ……っ」


ペロペロッ


 「んはぁ……ユ、ウキ……もう、私はっ……!!」


 エレノアは体を二度三度ビクつかせた後、頬を紅潮させつつ脱力した。

 そして遊輝が起きる前に乱れた下着を正し、体を洗いに行く。己の体から発せられる酷く卑しい匂いに気付かれたくないためだ。


 「私は、変態……なのだろうか。このような欲に塗れた女だとユウキに知られたら嫌われるだろうか……」


 エレノアが遊輝と初めてベッドを共にした日に知ったこと。それは、遊輝の寝相の悪さだ。

 体に違和感を覚え目を覚ましたエレノアは自らの胸や肢体を撫でまわす遊輝を見て驚いたが、自分の筋肉が付いて女性らしさが損なわれた肉体でも求めてもらえたことに喜びも感じていた。しかし、それがただの寝相だと気付き落ち込んだり、落ち込む自分に恥ずかしがったりと一喜一憂する。

 それからと言うものの、毎日一緒に寝ると遊輝の寝相にどこか期待してしまい体を火照させるエレノアが完成した。

 ただの寝相だと理解していても愛する者に触れられることの気持ち良さにすっかり虜となってしまっていたのだ。


 「いい歳した女が自らを律することも出来ない程に熱を上げてしまうとは……聖戦士の名が聞いて呆れる」


 未だ熱を保った体を冷ますように湖の水で身を清めたエレノアは、鎧を身に着け普段の凛とした姿を取り戻す。


 「ふぁ~……ん、今日も早いなエレノア。お早う」

 「あ、あぁ。お早うユウキ」


 二人だけのちょっぴり刺激的な釣りライフ。今日も天気は快晴、絶好の釣り日和。



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