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ゲーム・ダイバー  作者: 暇人
島釣り生活
2/14

天の国?で再会

 「おお、ここが舞台か。大自然って感じで雰囲気あるな」


 遊輝が訪れたのは大きな湖の近くにある森に囲まれた小さな小屋。

 このゲームでの主人公の設定は、伝説の魚が棲むと言われる湖に住み込みで大物を狙う釣り命の青年だ。


 設定に合わせて姿や性質は変化するが、一応は元の姿をベースにしているので種族や性別、年齢などが似ていれば別人と言うほどではない。

 今の遊輝も現実と大差ない姿だ。黒髪黒眼のパッとしないが不細工と言うほどでもない没個性な印象。どんなキャラクターにもなれそうな受け皿は大きそうな、少し背が男にしては低めなこと以外はコンプレックスを抱くような特徴もない。そんな何とも言い難い男。


 「釣りを始める前に特典を確認してみよう。初めてまともなのをゲットしたからな」


 遊輝は念じることでメニュー画面を開く。

 ゲームの世界だとGDR自体は装着されていないのだが、メニュー画面は共通で開くことが可能だ。


 「特典で獲得した職業はいつでも付け外し可能で、ステータスやスキルに変化がある。獲得したスキルは職業関係なしに発動可能……ふむふむ」


 基本的に特典で獲得したものはメニュー画面でいつでも自由にON・OFFの変更や使用などが出来る。

 称号はONにする事で様々な効果が現れる。例えば『世界を滅ぼす御人好し』だと、困っている人を引き寄せる。『恋愛対象外』だと、指定した対象から恋愛感情を抱かれなくなる。等々。


 「そして、お楽しみなのが……仲間キャラだよな」


 特典で獲得する仲間キャラは大体そのゲーム内で親交や関わりが深く、条件を満たした者が選ばれる。

 今回の『聖戦士エレノア』の場合は、最終決戦まで共に戦ったことと好感度が一定以上だったことなどが特典として選ばれた要因だろう。人数などには限りがないので、もっとフラグを立てていればより多くの者をゲット出来ていたはずだ。

 そして、仲間キャラはメニュー画面から呼び出したり帰したりが可能。


 遊輝は聖戦士エレノアを呼び出す項目を選択する。

 すると、光の粒子が集まりだし次第に人の形を成していく。


 「くそ、結局最後までユウキ一人に重荷を背負わせてしまうなど……私に彼を愛する資格は……」

 「エレノアっ!! 良かった、あのエレノアだっ!!」

 「ん? なっ……ゆ、ユウキっ!? 何故……」


 仲間キャラとは都合の良い召喚獣みたいなのかもしれないと思っていた遊輝だが、実際にゲームの時と同じ姿、同じ声で自分の名を呼ぶのを耳にして自分が出会った同一個体だと判断するとテンションが上がっていた。

 対してエレノアは死んだ後、天の国へやって来たと思いきや目の前には戦友ユウキの姿。混乱を抑えきれずにいた。


 そこで遊輝はエレノアに闇の王は倒したこと、だが相討ちとなり自らも死んだことを話した。

 ゲームだとか特典云々は余計に混乱を招く恐れがあると判断し今は黙っておくことにした。


 「そうか。ユウキならば必ず成し遂げてくれると信じていた。心から感謝する」

 「いや、エレノアも最後の最後まで一緒に戦ってくれて心強かった。こちらこそ、有り難う」

 「それでも最後は……」

 「良いんだよ、終わったんだから。今は再会を喜ぼう」

 「ユウキが死んだことは喜べないが……そうだな、お前がそう言うのなら。私も再びユウキと会えて、その……う、嬉しいぞ」

 「うん」


 何故か少し頬を赤らめるエレノアを可愛らしいと思いながら眺める遊輝。

 炎が揺らめく様に波打った紅蓮の、腰まで届きそうな長髪。瞳は鋭く、火炎の如く黄色。背は170を少し超え、体は引き締まった筋肉と内側から溢れ出しそうなほどに豊かに実った女性の象徴を持つ。

 まさに情熱というイメージがぴったりの戦う大人の女性。それがエレノアだ。

 服装は白銀に輝く聖なる鎧。と言えば聞こえは良いが、所謂ビキニアーマーと呼ばれるような形状をしている。


 遊輝はエレノアと出会った当初、自分よりも少し背が高くて戦士としても人としても頼りになって男よりも格好良いと思える彼女に若干の嫉妬を覚えていた。自分の様な冴えない男が傍にいて良い人じゃないと距離を取ってもいた。

 しかし、エレノアの方も確実に任務をこなし男のつまらないプライドよりも格好なんて気にせずに一人でも多くの命を救おうとする遊輝の誠実さに感銘を受けていた。自分は女性でありながら戦士の一人として人々の憧れであることに密かな優越感を抱き、人からの視線ばかりを気にして格好ばかり取り繕っていた。

 それを間違いだと、戦士としての在り方をその身で教えてくれた遊輝に少しずつ魅かれていった。


 そして気が付けばエレノアは遊輝の良きパートナー兼良き理解者となり、遊輝もエレノアと一緒にいることが自然だと思えるようになっていた。

 それはエレノアが遊輝を理解しようと日々観察を積み重ね、ストーカーもどきに成り果ててまでも調査を続けた努力の賜物である。


 そんな彼女はもちろん異性として遊輝を思っているのだが、いい歳して恋愛のれの字も知らない彼女に上手なアプローチの仕方が分かる訳もなく。

 戦時だと言うこともあり、思いを告げることなく別れが訪れてしまったのだった。


 故に、エレノアにとって遊輝との再会は狂喜乱舞する程に嬉しい出来事なのだ。


 「し、しかし、と言うことは此処が天の国だと……そう言うことなのか?」

 「う、うん。まぁ俺も良く分からないけど実は神から啓示を授かってね」

 「そうなのか。やはりユウキは神からの祝福を一番多く授かっただけのことはあるな。私には何も……」

 「あ、いや。エレノアにも伝えておいてと言われたよ」

 「そうか。それで、どんな内容なのだ?」

 「この湖には伝説の魚と呼ばれるモノが棲んでいるらしくてね、それを釣り上げてみせろ、と」

 「何やら不思議な啓示だな。成し遂げた暁には何かあるのだろうか」

 「恐らくだけど、新たな世界に転生するとか何とか……」


 苦し紛れの言い訳で如何にか納得させようと頑張る遊輝だが、自分でもさすがに無理かと思い始めた時……。


 「神が仰ることだ、何か意味があるのだろう。しかし、そうするとまたユウキと離れ離れになってしまうのか……」

 「いや、たぶん転生しても一緒にいられると思うよ」

 「本当にそうならば良いのだが」


 ユウキに対する信頼が厚いエレノアには言い訳がましいことさえ疑う余地がないようで、それよりも再びユウキと離れてしまうかもしれないと言う事の方が重大な案件だった。

 騙しているようで、実際にそうなのだが、心が締め付けられる遊輝。いつか時期を見て真実を話そうと決めた。


 エレノアが元はゲームのキャラだと言う事実は遊輝の頭から抜けているようだった。

 しかし、確かにここまで高性能なAIであれば概念的には人と変わりないだろう。


 「まぁ、そう言うことで今日からはこの小屋を拠点にして釣り生活を始めようと思います」

 「ふ、二人で……か?」

 「そうだよ。俺と二人は嫌かな? それなら「嫌じゃないっ!!」仕方な……へ?」

 「全然嫌じゃない。むしろ……と、とにかく大丈夫だ」

 「そ、そう。ならよろしく」

 「ああ」


 ゆ、ユウキと二人暮らしか……と、桃色の生活に思いを馳せるエレノアであった。

 かつての勇ましい戦士としての面影はすっかり鳴りを潜め、一人の恋する乙女がそこにいた。


 しかし、遊輝とエレノアの微笑ましい釣りライフ……とは簡単にいかせてくれない。

 この湖で釣れるのはただの魚じゃないのだ……。



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