ミウとウミで……
あの水龍戦から二日経過していた。
遊輝とミウの負った怪我はウンディーネの治癒魔法のおかげで粗方治ったのだが、大事を取って丸一日休んだのである。エレノアがやたら心配したからだ。
そして、今日は怠けた体を動かすため。と、海岸ではしゃぐ遊輝を筆頭にエレノア、ウンディーネ、ミウ、全員で遊びまくっていた。
現在『球魚』という丸くて弾力のある魚を使ったビーチバレーの最中である。
「なにっ!! まさか負けるとは……ミウが優勝だな」
「……悔しい」
項垂れるエレノアとウンディーネを余所に「やったー」と宙を舞うミウ。
このビーチバレーは今夜遊輝を独り占めに出来る権利を賭けたものだった。
魔法なども使用可の超次元バレーだったが、エレノアが景品に目が眩んで力加減を時々間違えて色々とミスを連発したり、ウンディーネの動きが鈍かったのがミウの勝利に繋がったのだろう。
ちなみにビーチバレーをしようと言い出したのは遊輝である。が、まさかこんな試合が始まるとは予想していなかった。
結局自分は見ているだけとなったが、見ているだけでも中々楽しいものだ。と、案外楽しでいたようだった。
そして今夜は遊輝とミウが、少し立派になってきている簡易住居で二人っきりで過ごす。
エレノア、ウンディーネはどっかで野宿。と、ここに決定。
二日間お預けをくらっている二人は試合なんてするんじゃなかったと後悔に苛まれていた。
日が落ちて辺り一帯が闇に包まれた中、エレノアの魔法『灯火』の明かりと星々の輝きだけが二人を照らす。
遊輝とミウ。二人は簡易住居の中で向かい合い、どこか体が痒くなってしまいそうなもどかしい雰囲気を漂わせていた。
初めミウは二人っきりと言う状況にただドキドキしていただけだった。それが、遊輝の少し落ち着かない様子を見ていると自分まで伝染してしまっていたのだ。
普段の明るくて適当な雰囲気を纏った遊輝とは違い、何か決意を固めるように自分を奮い立たせるように真剣な面持ちで静かに佇む其の姿はちょっぴり可愛らしいと思えてしまう。
いつもは一緒にいて楽しくて幸せで、適当だけど素敵な世界に導いてくれる。そんな見慣れた王子様の姿とはまた違う魅力を感じていた。
一方の遊輝は二人っきりで雰囲気も整った絶好のチャンスを逃すまいと、当初は予想外だったこの展開を自分なりに有効活用しようと画策していた。
今回の一件。水龍との戦いの中で起こった不幸は危険なものだった。だけど、そのおかげもあって、ミウとの関係を修復することが出来た。
水龍の拘束から救い出そうとミウのもとへ訪れたときの、ミウと初めて出会った時のような輝く表情は遊輝の不安を払拭した。
彼女の心が戻った、と。
しかし、それでは自分のしたことに対する罪の意識は消えてくれなかった。
結局救われたのは自分の方。ミウの心に影をつくった原因は自分なのに、それを取り払ったのはミウ自身で自分はきっかけを与えただけ。
ミウはそれで満足している、自分に不満なんて抱いていないだろう。そう思えてしまうが故に、ミウに甘えていると、いや、ミウだけじゃなくエレノアやウンディーネにも。
この二日間、遊輝はそんな事を思いながらミウに対して自分から何かしてあげたいと考えていた。向こうから愛を貰ってばかりではなく、自分の方からももっと積極的にならなければ駄目だと。
薄々みんな気付いてくれる。自分がみんなを好きだと言う気持ちに。
でもやっぱりそれは甘えだ。自分から行くのが恥ずかしい、怖い、不慣れだから、そんなのはエレノアもウンディーネもミウも全員同じだろう。見ていれば分かる。
だから自分も勇気を出して、みんなから愛される男としてせめて愛を隠さずにもっと外に出そうと、遊輝はそういう結論に至った。
その第一歩として、密かにミウへのプレゼントを用意していたのだ。
プレゼントと共に、今度は自分の方から愛を伝えるために。
遊輝は隠しておいた物を取り出す。
純白に輝く二枚の貝殻。釣王と水剣ミズチと一緒に流れ着いていた古代貝の殻だ。
それに紐を括り付けて作った貝殻のビキニ。プレゼントとして、この雰囲気の中それは如何なの?と言う代物であったが、いっぱいいっぱいの遊輝にそこまで気を回すことを期待してはいけないだろう。
何故貝殻ビキニなのか、それはミウが裸だから。下半身は魚なので問題ないが上半身、主に胸の主張が激しくて少し気になっていた。そこで丁度良いと考えた結果である。
「ミ、ミウ。ここ、これ……プレゼント」
初めて女性に贈り物を送るという行為に言葉が詰まってしまう遊輝。
その差し出された手に握られた貝殻ビキニを見て何なのか一瞬判断に戸惑ったミウだが、その行動から意図を察し「私に?」と自分を指さして答える。
すると、ブンブンと頭を縦に振る遊輝。それを見て次第に胸の鼓動が早くなって行くミウ。
初めて自分から求めたりほのめかしたりする事無く遊輝の方から、しかも初めてのプレゼント付きで自分に対して気持ちを届けようとしてくれている遊輝の姿に、王子様じゃなく遊輝自身の輝きを見たミウは訳も分からず涙を流していた。スーっと頬を伝う涙は悲しいものではなく、とても温かくて綺麗なものだった。
「えっ! ご、ごめん。気に入らなかったかな……ミウに何かしてあげたくて。気持ちを伝えたくて……」
涙を流すミウの姿に焦った遊輝。今頃になって「貝殻ビキニって……」と雰囲気ぶち壊しだったことに思い至ったが、「とにかく謝罪だ」と頭を下げる。
だが直ぐに遊輝の頭を撫でる優しい感覚。そして、遊輝はミウの胸の中に包まれていた。
ドクンドクンと早く脈打つ心臓の音がミウの胸の高鳴りを遊輝へと伝え、優しい抱擁が心を落ち着かせる。
ミウのことを少し子供っぽいと思っていた遊輝にとってそれは意外でもあり、だけどとてもしっくり来るものでもあった。
その互いの温もりで愛を確かめ合う二人。
そこでミウは再び絶好のチャンスが訪れている事に気付く。二人きりで雰囲気も良い。初めてを捧げるのに申し分のない舞台だと。
目をつぶって心地良さそうに胸で癒されている遊輝。抱擁を一度解き、その唇へとキスをする。
突然の出来事に驚く遊輝だが、自分を求めてくれるなら誠意を持って応じようと決めた。求められるまま、自分からも相手を求める。
そうしている内にミウの体は熱くなり、息も荒くなっていた。遊輝との触れ合いに興奮し完全に発情してしまっている。
そしてあの夜のように、今度は上手くいくことを願って遊輝の至る所を愛撫するミウ。
遊輝も「遂にこの時が来たか」と覚悟を決める。
もうミウの愛を拒んだりなんてしない。一生ここで暮らすことになっても悔いはない。ミウの望み通りにさせてあげたい、と。
ミウは遊輝のズボンが盛り上がっているのを見て、準備は整ったと判断した。
次はエレノアとウンディーネのしていたように……しようと思った時。
――私はみんなと違う。
自分の姿がみんなと違うことの重大さに、ここへ来て直面してしまった。
やり方が分からない。自分のこの下半身で如何すれば良いのか。ミウの知識ではこの先へ進む方法が分からなかった。私には愛を受け止める部分がない……。
やはり自分には愛される資格がないのだろうか。遊輝と繋がることが出来ないのだろうか。ミウは途端に悲しくなってしまい、今度は悲しみの涙が零れ出す。
それを見ていた遊輝も気付いた。ミウの涙の意味に。
だけど遊輝は確信していた。問題ない。
エロ魔人遊輝の洞察力を侮ることなかれ。その眼光はしっかりと捉えていたのだ。
ミウの魚型になっている下半身、それの人間の股間と同じほどの位置から聖なる水。あそこに宝が隠されていることは間違いないだろう。探偵の如く瞬時に答えを導き出す変態の姿は何故か頼もしかった。
そして、答えを確かめるようにソコに薄っすらと見える縦の線に手を伸ばす。ピッタリとくっ付いた皮膚と皮膚のその先へ……。
天にも昇る気分だった。そう思いながらも未だに意識が朦朧としているミウ。
まさか自分のアノ部分がアレに使えるなんて衝撃を隠せない様子。
さらに、ミウは今まで一人で自分を慰めたりなどの経験も無く完全なる初体験。あまりの刺激に途中何度も意識を失いかけた。その時の顔がどれだけ酷いものだったかを想像すると遊輝の顔をまともに見ることが出来ないようだ。
初めてその行為を見た時は嫌悪感を抱いたのに、今ではすっかり虜になってしまった自分に羞恥を覚えるミウ。
だが、何よりも自分の全く知らなかった世界、新しい幸せの形をまた教えてくれた遊輝への愛がいっそう深まったミウである。
まだ足りないと強請るミウの姿は可愛らしさと色っぽさを放ち、遊輝を誘惑するが……。
「も、もう駄目。今日はここまで」
既に朝日が昇り出していた。
さすがに徹夜は辛いとミウを何とか納得させ意識を失うように眠りに落ちて行く遊輝。
その遊輝にベッタリネットリくっ付いて一緒に寝るミウ。
幸せに包まれて満足気な二人。
一方。お預けを喰らった二人はお互いバレないように静かに、火照る体を鎮める作業に勤しんでいた。




