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第2章  2月(2)

星杜学園1年 波原小春 168㎝ 60㎏。 けっこう大食い!」の続編となっていますので、当小説で直接的にはわからないエピソードなども出てきます。ご容赦下さいませ~。


すべてはある場所を目指して収束していくことになります。麻莉子は、友哉は、桐生は……。そして小春は、やはりにぶちんのままなのでしょうか?(笑

 そういえば、それから後に不思議な事がいくつかあった。

 ここ数日はお昼御飯を食べ終わると、麻莉子は用があるからと言い残して一人で教室から出て行ってしまう。どこへ行っているのかなんて聞く気もないし、情報通の麻莉子のことだ、まぁいろいろと暗躍しているんだろう。


 その日、昼休みの時間を持て余していた特にする事もなく、たまに友哉の様子でも見てこようと思いたち、一人図書室へ足を向けた。もちろん友哉には見つからないように、こっそりのぞき見するだけのつもりだったけど、先日麻莉子が教えてくれた図書室の死角スペースに私が見た光景は……なんと、友哉と麻莉子の2人の姿だった。

(え? なんで麻莉子がここで友哉と一緒にいるわけ?)

 前回見たタティングレースなるものの道具は横に追いやられ、今日は友哉の前に数枚の用紙が広げられている。そして、2人でその用紙を眺めならが、友哉と麻莉子は、深刻そうな様子で何やらヒソヒソと話をしていた。

(なんのハナシをしてるんだろ? 友哉があたしたちに内緒にしてるって分かってるのに、麻莉子はここに来てるし……しかもあたしにはずっとヒミツにしたままだし)

 少しの疎外感を感じる。そして、またまた私には分からないことが増える。

 私の知らないところで、いろんな事が秘密裡に動いているような気がするものの、でも本人たちが言おうとしない事を自分から聞く気なんて私にはないので、この件については自分の胸の内に納めておくことに決める。だからって、友哉や麻莉子に対する接し方が変わるなんてことは、もちろん無いわけで。

 私は踵を返して図書室を後にした。

 


 また別の日の放課後。

「小春ちゃ~ん、今さぁ、チョコを投票するためのプレート手元に持ってるぅ?」

 麻莉子が、そう言いながら私の席までやって来た。

「え? あー、持ってるよ。ってか、いつも無くさないように持ち歩いてるんだ」

「あのねぇ、今ぁ友哉クンとチョコ祭のハナシしてたんだけどぉ、友哉クンがプレートを見たいって言うんだよぅ。でも麻莉子ぉ、寮の部屋に置いてあってここには無くってぇ」

 私は、定期入れに入れてあるプレートを取り出して麻莉子に渡す。

 あ、定期入れには、私が入学してすぐに催された寮祭で、死ぬ思いをして勝ち取った(事実は多少違うけれど)「学食1年間フリーパス券」が入っている。

 そんなやりとりをしているうちに、当の友哉がやってきた。

「小春さんっ。そうですか、これが参加資格のプレートなんですね!」

 友哉やそう言いながら、私の手からプレートを奪い去るようにして眺め始める。この食いつきの良さはなんなんだろう。

「そうだけどさ。友哉、なんてプレートになんかの興味があるわけ?」

 プレートは、通しナンバーが入っているだけの小さなもので、とりたてて可愛くもなんともないシロモノだ。

「いえ、ね。プレートそのものに興味があるってワケじゃないんですけど……、これが小春さんのプレートなのかと思っちゃうと、こう、なんていいますか……」

「……?」

 友哉が考えている事は、相変わらず分かりにくい。

 そのうち横から麻莉子も「友哉クン、麻莉子にも見せてよぅ~」と、覗きこんできた。

「麻莉子、あんたは同じモノ持ってるでしょーに。どんだけ好奇心旺盛なわけ?」

 麻莉子が何を考えているのか、4月からのお付き合いくらいでは理解できない。

「だってぇ~、他の人のってぇ、麻莉子、ちゃんと見たことないしぃ~」

 そんな事言いながら、友哉からプレートを譲り受けて、眺めていた麻莉子が。

「あれぇ……?」

 小さな声で、不思議そうな声を発した。

 と、突然。

「あっ、小春ちゃんに友哉くぅん、えーーーーっとぉ、そのぉ、麻莉子ねぇ、ちょっと用事を思い出しそうになっちゃったみたい~。ごめんねぇ、だから麻莉子、先に帰るねぇ~。また明日~」

 慌てて自分の席へ戻りバタバタと帰り仕度をしたかと思うと、あっと言う間に教室から消えていく麻莉子の後ろ姿を、茫然と見送る友哉と私。

「思い出しそうになっちゃったみたいっていうのはさ、思い出したって事なの? ちゃんとは思い出せないって事なの?」

「さぁ、思い出したって事なんじゃないでしょうか。麻莉子ちゃんらしいっていうか……。それにしても麻莉子ちゃん、急に慌てて帰っていっちゃいましたね」

「ホントに麻莉子、いったいどうしたんだか」

「どうしちゃったんでしょうねぇ」

 麻莉子の行動は、時々突拍子もない。

「ホント友哉といい、麻莉子といい……」

「えっ、小春さん、今何か言いましたか?」

 友哉が不思議そうな顔をして私を見る。

「別に、なーにも。もういいよ、友哉。私たちも帰ろ」

「はい、そうですね」

 

 最初、麻莉子と私にも内緒で、友哉は図書室でタティングレースをしていた。

 と思っていたら、その図書室で友哉と麻莉子が密会?しているシーンを目撃してしまい、そういえば、友哉と桐生の確執だって、まだ続いているはずなのだ。

 そういえば、そろそろ誰にチョコを投票するかも決めないとならない時期になってきている。

 そんな事を考えつつ、友哉と連れだって教室を出ようしていた私は、実は先ほどからずっと自分の背中に突き刺さる視線を意識する。ずっと気付かないフリをしていたけれど。

(桐生が見てる……)

 やはり友哉と桐生の間の空気感は悪すぎる。

 

 よく分からないこれらの事っていうのは、いったいどこへ転がっていくのだろう。案外、お互い何も関係のないバラバラな単なる事実が平行して起きているだけなのかもしれない。

(……どうか映画じゃありませんように……)

 胸の中で思わず願う私。

(あれ? 友哉、少し背が伸びたのかな)

 入学当初は、私とほぼ同じくらいか、私よりも身長が低いと思っていた友哉が、いつの間にか私よりも身長が高くなっている事に始めて気付く。そして学校直結の寮に戻るために、友哉と私は肩を並べてゆっくりと教室を出る事にした。

 桐生の痛い程の視線を背中に受けながら。


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