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第四話 現実は非情だ

師匠が、あそこまでダメって言う理由が分からない。


普段の師匠であれば、アメリアのためなら、一緒に掘りに付き合ってくれるはずなのに、今回は掘りに行くことすらダメ出しをされた。


何故だ?と考え込む。


危険?いや、師匠が一緒ならばそこまで危険にはならないだろうし、荷物や掘り出した鉱石をあきらめるならば転移の巻物スクロールを用意すれば命に関わる事はない。


レッドを取り扱うのがまだ早い?うーん・・・これはありそうだけど、そもそも今既に僕らはバイオレットの域にまで来ている、バイオレットの次がレッドだと言う事を考えるとそこまで反対される理由にはならない。


掘り師としての縄張り?確かに貴重な鉱石は縄張り争いが多いとは聞くけど、安全地帯ならともかくモンスターの出る地域で縄張りを主張する馬鹿なんて聞いた事もない。


それに、安全地帯で貴重な鉱石が出る場所は国が管理しているはずで、今回の件には該当しないだろう。


うーん・・・他に考えられる事ってなんだ?分からないな


となると、直接掘るのではなく、買うしか方法がないかもしれない。


グリーンやバイオレットを頑張って掘ってお金に変えてレッドを手に入れる・・・これしかないか


しかし、買うと言ってもレッドからは値段が跳ね上がるんだよな・・・どれくらい買えるか分からないけど、明日にでも相場をチェックしてみよう。




- 翌日 -


とある商会の鉱石相場表のボードを前にして俺は愕然とした・・・高すぎる!


鉱石のランクは鉄・カッパー・ブロンズ・イエロー・ピンク・グリーン・バイオレット・レッド・シルバー・ゴールド・プラチナの11段階があるのだが、大体は1ランク上との交換は1:5程度である。


つまり、鉄とカッパーを交換するには鉄5に対してカッパー1となるのだが、バイオレットとレッドの交換率は20:1になっている。


今までレッドを意識したことが無かったので、気が付かなかった・・・これは参った。


今の俺が頑張って1日を掘りに費やして、全てレッドになるように交換してもせいぜいインゴットで1~2にしかならない。


鍛冶屋としての腕を上げるのであれば、バイオレットを20使ったほうが遥かにましだ。


そんなことを考えながら鉱石相場表のボードの前でたたずんでいると、顔なじみの掘り師が話しかけてきた。


「よう、坊主!お前もついにバイオレットまで行ったんだってな、凄いな~。もう15年も堀り師を続けている俺が並ばれるなんて・・・まったく才能があるやつは羨ましいよ」


とぼやいてきたので


「いや、俺には師匠がいますので、的確に掘りの技術を教えてもらっているからですよ、それにおじさんと違って、掘った鉱石で生活を立てているわけではないので、量や質よりも、スキル上げに重点を置いていますからね、その差ですよ」


「ハッハッハ!それそうかもしれんが、それでも12歳でバイオレットの掘り師なんて大陸広しと言えど、お前くらいしかいないんじゃないか?」


「あ~・・・そうかもしれませんね~でも今この相場表を見て思いましたよ、レッドを超えないと掘り師って報われないですよね~」


「ん?ああ、なるほどレッドの相場を見て愕然としたのか、ハッハッハ!それは掘り師ならば誰もが通る道だな、スキルランクをレッドにするためには、どうしてもレッドを掘る必要があるけど、レッドは危険地帯でしか掘る事ができないからな」


「ええ、そうなんですよね・・・バイオレットで十分に修行したとしても最初のうちはレッドをまともに掘れるようになるまで、どんなに頑張っても2~3日は掛かりますから」


「そうなんだよな~レッドの掘り師と自他共に認めてもらうには少なくとも1週間は掛かる。その間その掘り場を独占できて、かつモンスターからも自分自身と採掘した鉱石を守りきるって・・・どんだけ難易度高いんだよ!」


「ホント嫌になってしまいますね・・・おじさんがレッドに上がれないのもこれが理由ですか?」


「さらっと酷いこと言うな、おまえ・・・まぁ俺だけじゃない、ほとんどの掘り師がバイオレットで止まる理由だよ、大体なレッド以上の掘り師なんて、この大陸でも50人いないんだぞ!」


「え?じゃあ、シルバーやゴールドの武器や防具って、どうやって作っているんですか?」


「え?お前知らないのか?」


と短く言っておじさんは少し考え込んだ後


「それは、お前の師匠に聞きな、俺が教えることじゃないな」


と言ってそそくさとその場を去ってしまった。


昨日の師匠との会話と、今の会話には何らかの接点があるのかもしれない。


なんだろう?俺は掘り師としても鍛冶屋としても、何か大事な事を教わっていないのではないのだろうか?


そして、それはとても大事な事なのではないのだろうか?


それにしても、師匠がそれを教えない理由ってなんだろう?


分からない・・・一旦情報を整理して考えてみるか・・・


本当なら周りの知り合いに聞くと言うのが手っ取り早い解決の方法なのかもしれないのだが、質問が漠然としすぎてどうにもならん・・・


うーん・・・少し情報を整理してみよう。


1.レッド以上の掘り師はこの大陸では50人もいない。


2.レッド以上の鉱石は高いなりにも流通はしている。


3.流通していると言う事はある程度の生産はできていると言える。(量が少なければ流通しないだろう)


4.国が管理している安全地帯での鉱石採掘は一応存在しているらしい・・・


5.とは言え、その程度ではこれだけの流通が賄えるとは思えない。


ふむ・・・すると仮説だが、採掘以外に鉱石を手に入れる方法があると言う事か?


武器や防具を練成するために必要なインゴットは基本的に鉱石から練成するしか方法はない・・・


ん?まてよ、もうひとつ方法があるな、しかも俺やアメリアは日常的にこれをやっている・・・そうか!


インゴットを精製するには、鉱石を炉で溶かして固める方法と、作られた武器そのものを溶かして固める方法の二つがある。


普段俺やアメリアは鍛冶の修行のため、自分で作成した武器や道具を再度溶かしてインゴットに戻し、更に武器や防具を作成する事で鍛冶の鍛錬を行っている。


もちろん、武器や道具を作成する際や、インゴットに戻す際に材料は少しずつ減ってしまうので永久機関できるわけではないのだが、修行として考えれば最も効率の良いやり方と言える。


ならば、もしゴールドやプラチナなどの武器や道具を鍛冶で作成する以外に手に入れる方法があったら?


これならば、全ての辻褄があうのだが、そんな方法があるだろうか?


昨日の師匠との会話・・・まさか・・・モンスタードロップ!?


ある一定以上のモンスターはアイテムをドロップすると聞いた事がある、そのドロップするアイテムにゴールドやプラチナの武器があるならば?


それだ!おそらくバイダースやネーキスの上位種はアイテムをドロップするのではないか?


そして、もしそれを俺が知ってしまった場合、俺が掘り師をやめて、モンスターを狩る事を主体とするのではないか?と師匠は心配しているのかもしれない。


仮説ではあるが、これならば全て辻褄が合うのだが、だとすると余計に師匠の許可を得るのは難しいのかもしれないと考えてしまう。


師匠は何時も「職人の道に楽な道は無い!」と基礎を繰り返す事で一歩一歩進むのを良しとする人だ。


別にモンスターを狩る事が楽な道とは思わないけど、基礎や基本を大事に考えるからこそ、俺に採掘の修行をさせているわけで・・・


師匠いわく、俺に掘り師をさせているのも商人は全ての生産系に通じていなければならない、そのための修行だって言っていた。


もちろん、俺もそれには納得している、だからこそ、皮の剥ぎ取り、なめし、そして裁縫、クロス(布地)の生成から染め物、まで、何でもやっている。


更には木を切り出し、木材を作成することから、矢のシャフトを作り、鍛冶でポインタ(鏃)、鳥の羽からヴェイン(矢羽)も作っている。


意外な事にこの矢の作成は良いお小遣い稼ぎとなっており、俺とアメリアの大事な収入源となっている。


俺やアメリアの矢は中々評判が良く、店から良く注文が入る、と言うか毎日でも持ってこいと文句を言われているくらいだ。


俺の考えでは師匠はおそらく、様々な素材の採取と一次生産品(布地の作成や木材の作成)を経験させる事で、世の中の物流や価格の設定、物の価値等を分からせるつもりなのだろう。


だからこそ、高品質のアイテムやマジックアイテムをモンスターからドロップすることを教えたくないのかもしれないな。


うーん、そうなるとますます師匠にお願いするのは難しいな・・・やっぱり内緒で行くしかないか。


そう心に決めるのだが、いくつか障害がある。


今の俺はほぼ毎日午前中は素材集め、午後は加工の繰り返しだ。


それに、鍛冶場に寝泊りしているので、何日もいなくなること不自然この上ない。


どうしたものかと考え込んでいるといつの間にか目的地であった鍛錬場についていた。



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