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~ 商人(メルカトラー) ~    作者: ダーレアラビアン
第二章 運命の始まりの章
30/37

第三十話  砦の事情

今回は少し短めですが、キリがいいのでこちらで切らせてもらいました。


また、お気に入り登録及び評価を下さった皆様に感謝を!

とても励みになり、作者のモチベーションが上がりました。

これからも頑張ります。

- それから数ヵ月後のある日 -


「対軍装備?」


「ああ、又は対軍兵器でも良いんだが?」


「あのさ…今の俺はしがない雑貨屋なんですよ?ハーネスさん・・


「いや、分かっているけど、お前なら何か作れるんじゃないかって」


「出来ない事はないけどさ、物によるな~。罠タイプにしろ、移動タイプにしろ、どちらにしても火力がいる物だとコストと時間は相当かかるよ」


「そうか~コストはともかく、時間がネックだな」


「と言うか、何で対軍装備や兵器が盗賊に必要なんだ?正規兵とでも戦うのか?」


「…ああ、そうだ」


「なんでまた?」


「ゾルドって覚えているか?」


「ああ、あいつか…それで?」


「まぁ、俺の見立てが甘かったと言うか、お約束と言うか…」


「なんだ?この場所をお上でも訴えたのか?」


「まぁ、それに近いな、盗賊の根城としてギルドに訴えた」


「なるほど、それで?」


「やけに落ち着いているじゃないか?」


「ん?いくら盗賊相手とは言え、この規模の砦を攻めるんだ、それなりの準備はいるだろうさ」


「まぁそのとおりだな、だがまずは偵察としてギルドの人間が数十人程度はくるだろう。そしてその後…俺の見立てでは2,000程度の兵が来るんじゃないかと思っている」


「妥当な線だな、それでその2,000規模の兵に対して対軍装備又は兵器が欲しいってことか」


「ああ、そうだ」


「それよりもその数十人来るであろう偵察はどうするんだ?」


「放置するしかないか?」


「あのさ…俺が偵察隊のリーダーで放置されていると思ったら少数精鋭で威力偵察するぞ?」


「ん?どんな風に?」


「そうだな、俺と同程度または、少し下くらいのメンバーで4~5人を1パーティとして5グループくらい作り、砦に向かってバラバラに突っ込ませる。ある程度暴れた時点で引き上げて合流する。森や隘路あいろなどの狭いところに誘い込んで、追ってきた敵に更に逆撃を加えて撤退ってところかな」


「お前がそれをやった場合、どのくらい被害が出る?」


「う~ん…本気でここを潰す気でやるなら、300~500は死傷者がでるだろうな」


「とんでもない事をさらっと言うな…」


「ん?ちなみに今の数字は俺とカーナリア、フェムの3人がパーティを組んで出せる被害だからな」


「はい?」


「いや、だから、俺とカーナリアとフェムの3人で砦に突撃して、引っ掻き回して撤退。その後、隘路でカーナリアのビッグバン・アローと俺の切り札を使って待ち伏せ殲滅した場合の被害予想だからな」


「…お前は俺たちの味方だよな…?」


「何を馬鹿馬鹿しい、当たり前だろ!ここには気のいいやつも多いし、何よりもカーナリアがいるんだぞ、俺が敵になるわけないだろ!」


「そうだよな!あっはっはっは、そりゃそうだ!」


「それよりも、俺と同じことを考えるやつが相手にいないとも限らない。どのみち、偵察が来るなら4~5人でグループを作り地形や砦の状況を調べる事はセオリーだろうな」


「まぁ、そうだな。それで対策は?」


「シランがな…少しは自分で考えろよ、協力はするけどさ」


「いや…そう!これはお前への教育なのだよ!俺がお前の考えを採点してやろうというのだ、ありがたく思え!」


「ダメダこいつ…まぁいいや…相手が少数精鋭でくるならこちらは、さらに精鋭で迎え撃ち、各個撃破することが一番効率いいだろうな」


「更に精鋭って?」


「簡単だろ、俺・お前・ば、じゃなくてエル様、姫、フェムの5人だな。姫とフェムを探知と連絡係にして、俺とお前とエル様が奇襲殲滅係、俺たち3人の奇襲をしのげるやつなんているか?」


「いや、余程の腕前がないと無理だな…それこそ全員が超一流の冒険者じゃなければしのげないだろ」


「ああ、しかも場合によっては姫の弓が援護に付くんだぜ、この奇襲をしのげるやつなんていないだろ、ほぼ瞬殺だよ」


「まぁ、そうだな…」


「とは言え、俺たち以上の腕をもつ冒険者又は、正規兵が出張ってくる可能性も0じゃないから、油断はできないよ。一つ一つ慎重に潰す事が一番だな…むしろ問題はその後だ」


「ん?正規兵の方か?」


「ああ、ギルドの連中は大規規模な連携を取れないから怖くないが、正規兵は違う。隊長クラスも多数いるだろうし、その連携する力は脅威だ。俺としては…逃げることをお勧めするね」


「逃げる?勝てないからか?」


「いや、2,000が相手なら勝ち目は十分ある。しかし、その2,000を倒したら、今度は20,000でくるぞ。偵察部隊の各個撃破だって次は相手も予想して対策を打ってくるだろう。そうなったら勝ち目なんて無いぞ」


「確かにそうだな…ならどうする?」


「偵察部隊を圧倒的な戦力で捕縛して、何人かは生かして返す。まぁできれば全員殺さずに返すのがベストだな」


「それで?」


「こちらの強さが想像以上ならば、2,000ではなく、5,000で来る可能性があるが、その分準備時間もかかるだろう?


その間に、砦の資産や物資を皆に分配して、個々に分散して逃げる。お前さんたちハーネス隊なんかは、王都に帰るなり、領地に帰ればいいんじゃないか?」


「ああ、そうなるだろうな」


「そんで、これを機に堅気に戻れるやつは堅気に戻るよう説得して、解散させるのが一番良いんじゃないか?」


「…」


「ああ、そうそう…どうしようもない屑はここに置いていくか、始末する事をお勧めするね。なんだったら俺が始末してもいいぞ」


「…すまんな、気を使わせたか?」


「気にするな、俺はここの気の良い連中・・・・・・をそれなりに気に入っているって言ったろ?まぁクズもいるけどな。それに、この砦はただの盗賊の砦じゃないだろ?」


「どういう意味だ?」


「はぁ…あのさ、ただの盗賊の砦が何で開墾なんてしているんだよ?なんで農業やっているんだよ?ありえないだろ。それに俺だって口もあれば足もある。気になることがあれば聞いて周るさ」


「それで?」


「ほとんどの連中が殺しなんてやったことも無いやつらばっかりだ。夫婦や家族連れだって一杯いる、盗賊の集団と考えればおかしいだろう。」


「…」


「この砦の3分の2は…被害者だと俺は思っている。国と領主の高すぎる税が払えなくなった者。領主に無理難題を言われ逃出した者。権力者に追われている者。そんなやつらが一杯いる」


「そんなやつらをここは受け入れているんだろ?」


「ああ…」


「なんで、こんなことを?」


「きっかけは姫様だ…」


「それで?」


「それ以上は言えない。だが、俺は姫様のお考えに賛成した。だからこうして盗賊をやっている。それだけだ」


「そうか、どんなきっかけか知らんが、できるだけ最後まで面倒見るのが筋ってもんだろう。それと…後始末もな」


「なぁ?」


「ん?」


「お前さ…何者なんだ?」


「意味が分からんが?」


「だってお前まだ13歳だろ?なんでそう平然と人を殺す話が出来るんだ?」


「あのさ…俺の父さんは英雄バクスター、母さんは神弓マロリー、師匠は破裂の鉄槌ガザルと狂気の軽騎クルドだよ?まともに育つと思うか?」


「うん、無理!」


「だろ?常人の感覚なんて俺にはむしろ分かんないな。ある意味俺は壊れているんだよ。…それとさ辺境の村の掟って知っているか?」


「いや…すまんが聞いた事もない」


「まぁ、そうだろうな…辺境の村はムジカル国に見捨てられることが何度もあったんだよ。そこでできたのが自分の身は自分で守る、敵対するものや先の脅威には遠慮するな、徹底的に排除しろ、そこに余地を残すと村が滅ぶってね」


「怖いな」


「ああ、でもな、そうでもしないと村は生き残れない。ホンの小さなつまずきでも村を滅ぼす可能性だってあるんだ」


「そう…だな…国に仕える騎士としては耳が痛いよ」


「ああ、別に気にしていないさ、村の人間は国が自分たちを守ってくれるとは信じちゃいないし、当にもしてない。助けてくれればラッキーくらいさ。ただ、ザンダル村には戦う力があるってだけだ」


「ああ」


「力が無い村は蹂躙され、我慢を続けるしかないんだ。だからザンダル村は力を求めるし、俺みたいなやつも出て来るんだよ」


「すまん…」


「いや、あんたが謝ることはないさ、気にしないでくれ、ただの事実だ。それよりどうだ?偵察を各個撃破する案と、その後砦を撤退する話だけど」


「いや、お前の案は間違っていないだろう。俺も全面的に支持する。エル様に相談してみる」


「そうか、頼むぞ。俺に出来る事は準備しておく」


「分かった。最後に…」


「俺はお前を友だと思っているし、背中を預ける事のできる仲間だと思っている。これだけは信じて欲しいな」


「ああ、俺もだ」


そう言って自分の部屋へと戻る事にする。





- さらに数日後の深夜 -


「南西の方向に2kmくらいに20人ほどいますね。そのうち厄介そうなのは3人くらいでしょうか」


「そうですか、ならば分散するまで、待ちましょう。少し冷えてきましたが、姫は大丈夫ですか?」


「ええ…少し冷えますが大丈夫です」


「それはいけません、何か無いのか?トリオ!」


「ああ、カーナリアこれをって…いや、こっちへおいで」


「はい」


そういってカーナリアは俺のそばへとよってくる。


「あの、カーナリアさん…何故俺の腕に抱きつくのでしょう?」


「寒いからですがいけませんか?先ほどの言葉は旦那様が暖めてくれると言う意味だと理解していますけど違うのでしょうか?」


そう言いながら、彼女はニッコリと俺に笑いかける。


そんな彼女の冷えた頬を、俺は自分自身で暖めた手でゆっくりと撫でながら


「まぁ、間違ってはいないけどな」


まったく、なんて凶悪な生き物なんだ…可愛すぎるぞ。


「とても暖かいです旦那様」


そう言いながら彼女は、顎を軽く上げ、こちらに向け口付けを待つような態勢を取る。


「えーと…カーナリアさん?」


「早くして欲しいのですが、まだですか?」


「なぜ今なのでせうか?お嬢さん」


「た、探知は精神力をけずるのです!だから補充が必要なんです!」


「はぁ…」


とため息をつくと、エル様が


「さっさとしな、トリオ。女に恥じかかせるんじゃないよ!」


だめだ、この雰囲気で逆らえるはずもなく…かと言ってこんな態勢で待つカーナリアを拒むと言う選択肢も無いわけで


その突き出したつややかな唇に、軽く触れるようなフレンチキスをすると、カーナリアは幸せそうに「ウフフ」と笑い


「今日は帰ったら、久しぶりに一緒にお風呂に入って、添い寝ですわよね、旦那様」


「いや、さっさと汗流してさっさと寝るだろ?」


「だから、探知は精神力をけずるのです!補充が必要なんです!補充には添い寝が一番必要なんです!」


と言って必死にいい繕う。


そんな彼女を相変わらず可愛いなぁ~と思いながら頭を撫で


「分かった、分かった。じゃあ早く終わらせようね」


そう言うと、すぐに横から声を上げる猫、いや豹が1人。


「フェムも!フェムも頑張っているニャ!」


「ああ、そうだなフェムも一緒だね、いいだろ、カーナリア?」


「当然ですわ、さっさと終わらせましょう、フェムちゃん」


「もちろんですニャ!カーナリア様」


「2人は今晩の事を想像したらしく、軽く興奮している」


そんな2人を両手で軽く抱きしめ、両方の首に温度調節のネックレスをかけてやる。


「じゃあ、さっさと片付けるよ」


「はい」「はいです!」と元気良く返事が返ってくる。


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