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第三話 レッド鉱石

- 3年後のある日 -


「なにぃ!レッドの掘れる所を教えろだと?」


師匠であるガザルは機嫌悪そうに答える。


この師匠がここまで機嫌が悪くなるのは珍しい。


それでも、今の俺はレッドの鉱石が欲しかったのだ。


もうすぐアメリアの11歳の誕生日である。


俺は彼女の誕生日にどうしてもレッドの鉱石を贈ってあげたかった。


レッドの鉱石を扱えるようになれば鍛冶屋として一人前。


鍛冶屋の中でよく使われる言葉だ。


もちろん、アメリアはおろか、俺でさえレッドの鉱石を使っても失敗するのは目に見えている。


本来職人の世界は12歳くらいから始める者がほとんどで、俺やアメリアのように6~7歳から始めている者など、この世界でもかなり珍しい。


それでも、俺やアメリアもそろそろ5年近く修行をしているのだ、既に腕前はピンクならば、ほぼ失敗する事も無く、鋳造することができる。


今はバイオレットを成功したり、失敗したりを繰り返しながら修行している最中だ。


それを、飛ばしてレッドの鉱石に手を出そうとしたのが、師匠の気に障ったのかもしれないのだが、ここは引くわけには行かない。


そう思い、師匠に土下座して頼み込む。


「お願いします、師匠!どうかレッドの掘れる所を教えてください」


「トリオよ、お前は12歳にして、既にバイオレットの域にまで来ている。これは素晴らしいことだ、別に焦る必要もない、お前の望む16歳までにゴールドレベルになることは、ほぼ問題無いとワシは考えている。焦るな・・・」


「え?何言っているんですか師匠、別に俺が使うんじゃないですよ、アメリアの誕生日プレゼントにするんですよ」


と言うと、師匠は勘違いしていたのが気恥ずかしかったのか、別の意味で怒り出した。



「なんだとーーー!貴様、ワシのアメリアに手を出すのか!怪しいとは思っておったが、ついに正体を現しよったな!とりあえずそこの金床へ頭を乗せろ!一撃で楽にしてやる」


「落ち着け、師匠!アメリアは俺の家族だ!妹だ!手を出すとか、するわけないだろ!」


と言うと、師匠は落ち着きを取り戻し、「フゥゥーー」と一回息を吐いた後


「その言葉本当だろうな?」


と疑うような目を向けてくるので


「アメリアは俺の妹です!」


と言って敬礼すると、師匠は小さいく「ウムッ!」と言った後続けて


「ならばよし!兄としてのお前の役目は重いぞ、いいな!それにしても、レッドをアメリアに贈るか・・・お前としては中々粋な計らいだな、悪くない・・・」


「中々やるでしょ師匠?俺は商人を目指していますからね、相手にとってどんな贈り物が喜ばれるかを考えるなんて基本ですよ!」


と威張って言ったのがまずかったのか、「ゴチン!」と派手な音を立てて拳骨をもらう。


「まだまだ、お前が商人を語るには100年はやいわ!」


・・・いや、100年経ったら死んでいるだろ、とお約束な突っ込みを入れたいのだが、自重することにしてスルーして


「それより師匠、レッドの掘れる場所を教えてください、それとできればディスクもお願いします」


と言って再びDO・GE・ZAを慣行するのだが、師匠は難しい顔をしている。


そんな師匠の様子を伺っている俺に気が付いたのか、師匠は気が進まなさそうに口を開く。


「トリオよ、基本的に鉱石は位が高くなればなるほど、危険な場所にある。レッドともなると、モンスターが出るところにしか、存在しないのだよ。


ゆえに、レッドの鉱石を求めるのであれば、どうしてもモンスターと遭遇する確立が増えてしまう。それに今のお前の堀師としての能力ではレッドを一発で採掘することはできまい。


おそらく、30回~40回の堀でようやく1個手に入るかどうかだと思う。30回~40回の堀など、丸1日以上は掛かるぞ」


と言って珍しく俺を心配してくれる。


まぁ普段が普段だけに、こんな師匠は面食らってしまうのだが


「大丈夫ですよ師匠、最近は武術の修行も順調ですから、狼系や熊系のモンスターならよほどの事がない限り追い払えます」


「いや、それがな・・・レッドが掘れるところは最低でもバイダースが出るところなのだよ」


「バイダース!」


と聞いてつい驚いてしまう・・・


バイダースとは分かりやすく言うと蜘蛛型のモンスターなのだが、多様な種類がいて、ポーン・ナイト・マジシャン・アベンジャー・ジャネラル・キングが現在のところ確認されている。


厄介なことに、彼らは組織化された魔物で、国のようなものまで形成されていると言う噂もある。


噂と言うのも、その国を見た人間がいるわけでもないのだが、ある地域では異様なほどに数がおり、それ以上奥に行くことが不可能なくらいなのだ。


おそらく、蟻のように女王などがいるのでは?と考えられており、それをオスが守っていると予測されている。


同じような種族にネーキスと言うモンスターもいて、こちらは蠍型のモンスターなのだが種類などほぼ同様におり、ポーン・ナイト・シャーマン・アベンジャー・ジェネラル・キングが確認されている。


まぁ、彼らにしてみれば、別に自分がジェネラルと名乗っているわけでもないのだが、固体識別の為に、人間が勝手に呼んでいるだけに過ぎないのだが。


それにしても、バイダースか・・・バイダースがいるところにはネーキスもいると言うのがほぼ定番である。


彼らの巣は必ずと言っていいほど隣接しており、理由は分からないけど、日々争いを続けていると言う噂がある。


たぶん、モンスターの中にも不倶戴天の敵と言うのは存在するんだろうなと思うのだが、だからと言って引き下がるわけには行かない。


それに、仮にバイダースやネーキスが相手でも、今の俺ならポーンやナイトまでなら何とかなるだろうと思い


「師匠、例え相手がバイダースと言えども、巣のど真ん中ならともかく、はぐれが出るような場所ならなんとかなりますよ」


と言うと、師匠はしばらく考え込んだ後、首を振り


「いや、やはり危ないだろうな、バイダースのはぐれが出る場所はネーキスのはぐれも出る場所になるし、それに・・・」


と言って一旦言いよどみ


「マジシャンやシャーマンクラスが出てきたら、今のお前ではまず相手になるまい。少なくともリフレクションを使える様にならんと無理だな」


と言ってダメ出しをするのだが、なんか変だ・・・師匠と付き合いが長い俺には分かる、師匠は何かを隠している、何だ?と思いながらもここまではっきりとダメ出しされたら、師匠は絶対に許可しないだろう。


どうするか・・・どちらにしてもここは引き時だろう、これ以上粘っても余計な警戒心をもらせるだけだしな、そう思い師匠に「分かりました」と短く告げ、部屋を出て行く。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「やれやれ、あいつにはまだマジックアイテムや高品質アイテムの存在や出所は知らん方がいいだろう、アレを知ってしまうとそれだけを求めるようになりかねん。商人であれば飛びつきたくなるような話だが、危険が大きすぎる。


少なくとも単身で巣に入っても無事に戻ってくることが出来るだけの武やスキルが無い限りは知るべきではないのだ。


お前がアメリアの為にレッドを掘りに行ってくるという気持ちは嬉しいが・・・それにしても、ついにレッドまで口にするようになったか、あの小僧がな・・・フッフッフ」


と小さくガザルは呟くと共に楽しげに笑ったのだが、少し思い直して考えてみる。


トリオの性格を考えると、自分にダメだしされたからと言って、簡単に諦めるとは思えない。


おそらく何らかの手段を講じて、レッドを掘りに出掛けるだろう・・・ならばもし、自分の言いつけを守らずにレッドを掘りに言った場合の罰でも考えておくとしよう。


トリオへの罰か・・・実際のところトリオもアメリアも順調すぎると言って良いくらいに育っている。


トリオは12歳、アメリアは11歳で既に職人として一人前と言われるレッドの手前のバイオレット鉱石を扱えるようになっているのだ。


一般的に鍛冶屋も掘り師も、一人前と言われるのは大体10年以上の修行が必要と言われており、早い者でも25歳前後で成れるのがせいぜいだ。


ところがあの2人ときたら、このペースで行けばあと1年程で一人前と言われる領域まで達することは容易に想像できる。


やはり、目標はフェスタか、ならばトリオの目指す将来のために最も良い罰を考えなければならないなと思い、ガザルはクックックと笑うのであった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



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