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第十九話 旅立ち

- 翌朝 -


その日のザンダル村は朝から賑わっていた。


村の正門の前には多くの人々が集まり、それぞれがトリオに声をかけていた。


1通りの挨拶が済むと、隊商は出発したのだが、ガザル師匠とクルド師匠は俺に話があると言う事で、途中まで着いてくることになった。


リシルドさんは特に異存もないということで、1つの荷馬車を俺たちに任せ、そのまま出発した。


3人は荷台に乗り、中で話すこととした。


「さて、トリオよ、王都に行ってから、学園に通うまでの間だが、どうやって糧を得るか考えているか?」


「ん~そのためにクルド師匠も同乗していると思ったほうが良さそうですね、ならば答えは1つしかないですよ」


「はは、ガザルさん、もう読まれていますね。まぁトリオなら当然なんでしょうけどね」


「そうだな、しかしトリオよ、一応聞いて置こうかな?」


「まぁ、そうですね、今回の追放は罰の名を借りた修行だと思っていますから、当然王都での資金稼ぎは修行の意味が無いとダメってことですよね?となると、普通の商売ではなく、ギルド依頼をこなして金を稼げってことでしょう。


もちろん、お金だけ無くある程度ですが俺の名が通るようにするのも必要なんでしょうが・・・1つ問題?があるようですよ」


「ん?問題とはなんだ?」


「リシルドさんから忠告されたんですが、現在の王都の鍛冶屋事情はかなり・・・悪い?ようです」


「ん?なんだそれ?しかも悪いが疑問形ってのはよく分からんな」


「なんでも、現在のムジカル王都にはレッド以上の鍛冶屋は2軒しかなく、全部お抱えになっているそうです、そこに俺の様なやつが王都で修行しようとしたら・・・」


「なるほど・・・カモねぎだな・・・」


「だそうです、ですのでなるべくスキルを隠しながら商売するしかないかと思うので、余計にギルドの依頼で稼ぐのは悪くないかもしれませんね」


「確かにな、商人でも生産でもギルドの仕入れとして依頼を受けて、自分で製作する分には、お前はあくまでも仕入れ主であって製造者ではないか・・・」


「・・・しかし、それは困ったのぅ・・・ワシの弟子としての名前で製造・商売をすれば良いと思っていたのだが、やらん方がよさそうだな。ならば、ギルドで仕入れの依頼を受けて、ザンダル村で仕入れた事にすれば怪しまれる事なく、いけそうだな」


「ええ、その手を使わせてもらいます。しばらくお金を稼いで隠れた仕事場を用意するしかなさそうです。大変ではありますが、これも修行だと思って諦めます」


「そうだな、それと俺の弟子を名乗るのもやめておけ」


「え?いや、クルド師匠の名前は出す気はなかったですよ」


「ん?なんでだ?俺の弟子だって言えば、向こうの冒険者ギルドで優遇されると思わないのか?」


「え~~~・・・いや、クルド師匠の弟子だってばれたら・・・恥ずかしいでしょ?」


「そういった瞬間、何も無いはずの後ろからいきなり後頭部を叩かれ、軽く荷台に顔面を打ちつける・・・」


「いきなり何するんですか・・・痛いですよ・・・」


「ふざけた事を言う馬鹿弟子にはお仕置きが必要なんでな、まぁそれはともかく、王都での俺の評判はな・・・その・・・あんまり良くないのでな」


「ふぅ・・・なるほど、お二人そろって何かと思えば・・・分かっていますよ・・・学園に入学するまで・・・いや学園フェスタであるプレフェスタまでは極力ノウラン家の名前はだしませんよ」


「なんだ、分かっていたのか・・・」


「いえ、さっきのクルド師匠の名前を使うなでお二人が来られた理由が分かりました。クルド師匠は父さんのパーティーの下っ端でしたしもんね」


「下っ端言うな!せめて雑用と言え!」


「いやいや、父さんも母さんも、それとガザル師匠だって下っ端って言ってましたよ」


そう言うとクルド師匠はガザル師匠に助けを求めるように見つめるのだが


「よう、下っ端!」


と言ってガザル師匠はサムズアップする。


「ガザルさん、酷いよ・・・」


「何を言うか、本来鍛冶屋であるワシに戦闘職で入った貴様が一回も勝つことは出来ない時点で、お前なぞ首だったんだぞ、ってか正直足手纏いでしかなかったんだろうが・・・それをあいつに土下座した上に、賄賂で取り入ってパーティーに『うわぁぁぁぁ!』」


「それ以上は勘弁してください!」


「何をやったんですか?」


「ああ、コイツはなパーティーに入る前に腕だめにしにってことで、ワシと闘って、こてんぱに負けて失格したんだが、バクスター、まぁお前の父親をな酒で酔わせた勢いで花街に連れて行き、最上級の女をあてがったんだ。


その上で、マロリーにバらすと脅したんだが、結局マロリーにバれて2人ともお仕置きされたんだが・・・いつの間にか、ちゃっかり仲間に入っていたんだよ」


「うわ~~クルド師匠最低ですね」


と言ってニッコリ微笑むと


「言うな~~、って今の話はかなり誤解がありますよ!と言うか有りすぎです!」


「え?違うんですか?」


「ん?違うのか?だってバクスターに酒を奢って、花町に連れて行った、違うか?」


「う・・・その通りです・・・」


「それで、最高の女に会わせた、違うか?」


「いや・・・その通りですけど、その女は俺の姉で、花町に売られたところをバクスターさんに救ってもらった・・・それで姉がバクスターさんに惚れたってのが真相でしょうが!」


「なんだ、大して変わらんじゃないか・・・」


「大して変わりませんね」


「ええぇぇぇぇぇ!大違いだろうが!」


「いや、別にどうでもいいです。父さんが女の人にモテて、いつも母さんにお仕置きされていたのは当たり前でしたから、気にもしませんよ」


「まぁ、バクスターさんはモテモテだったからなぁ~」


「そうだな、あいつは自然と女を惹き付けておったからなぁ~・・・!ところでトリオよ!貴様まさかアメリアには手をだしておらんだろうな?」


「ええ、手を出していません。ですが、4年後に再会する時は1人の女の子として扱うことを約束しました」


「何だと貴様!師の言いつけを破るつもりか!」


「アメリアは真剣に俺を想ってくれているんですよ?それに対して、ずぅぅぅぅっと妹扱いはさすがに出来ませんよ・・・この後どうするかはアメリアと俺次第でしょ?」


「ほぅ・・・ワシと敵対するかもしれん、その覚悟が貴様にあるのか?」


そう言うと、師匠の殺気が膨らむのだが、ここで引いちゃだめだ。


「別に敵対したいとは思いませんが・・・」


するとそこにさっきの仕返しとばかりに、クルド師匠が加勢してくれた。


「じゃあ、ガザルさんはアメリアを一生嫁にやらないんだな?ひ孫の顔を見れない人生を選ぶんだな?」


「い、いや・・・それとこれとは・・・」


「一緒だろ」


「ですね」


と2人で相槌を打つと、ガザル師匠は「ヌヌヌヌ」と唸りだした。


「俺もアメリアを心配して、色んなことを言ったんですが・・・『あたしの感情をあんたが勝手に決めるな!』って言われましたよ。確かにそうですよね・・・アメリアの感情はアメリアのものだし、アメリアの夢もアメリアのものです。


それを理解した時に、アメリアの気持ちを知らん顔したり、無視するのは止めることにしたんです。とは言え4年間は誰かさんのせいで放置になりますけどね・・・それと・・・こんな時代です、4年後に絶対に俺が生きていると保証できませんしね・・・」


「まぁ、そうだな、それで4年後に再会するまでは妹って言ったのか、お前にしては随分慎重な事だ」


「まぁ師匠がいる前で怒られるかも知れませんが、アメリアは大事な妹で、幼馴染です。あいつにだけは・・・いやあいつの想いには真摯に答える必要があるでしょ?」


「もういい!お前がアメリアの想いに真摯に答えるならワシは何も言わん!好きにせい!」


「まったく、ガザルさんは素直じゃないな~、他の男に取られるくらいならトリオのほうがマシだって今計算したでしょ?」


「う、うるさい!トリオなら師匠特権で、ひ孫を毎日連れてこさせることが出来るとか、遠征の際は手元において置けるとか、か、考えてないぞ!」


「うわ~~思いっきり計算してるわ・・・どん引きだな、トリオ?」


「そうですねぇ~確かにアメリアをお嫁さんに・・・って別にまだ決まったわけじゃないですから!」


「なんだ、貴様・・・まさかアメリアに不満があるだと?言い度胸だ・・・」


そう言って再度殺気が脹らむ。


「いや!あれです!王都に来てアメリアも学園に通えば、ひょっとして他に好きなやつが出来るかもしれないじゃないですか!」


「苦しいな」


「苦しいいいわけだな・・・」


「とにかく!この件は俺とアメリアの問題なので、大人しく見守ってください、お願いします!」


と言って頭を下げると「仕方ないな」「仕方ないのぅ」と2人とも頷いてくれた。


「まぁ、話を戻しますが、ノウラン家を名乗るタイミングについては慎重にしますよ」


「ああ、それもそうなんだが・・・」


「なんです?歯切れが悪いですね?」


「いや・・・1つだけ気に留めておいて欲しい事があるんだが・・・」


「なんです?ホントに歯切れが悪いですね?」


「むぅ・・・お前の親父、バクスターの元部下?ようは各都市の支店長クラスなのだが、全員あの時暖簾分けと称して独立させたんだが、毎年な・・・坊ちゃんはいつ旗揚げするんですか?とか若旦那がノウラン家を復活させるんですよね?とまぁ・・・しつこいんだ・・・」


「あ~~~・・・あの人たち父さんが大好きでしたからね・・・」


「ああ、それにな、バクスター・ノウランの影響は亡くなった今でもやっぱり大きくてな、信用第一の商売として使うにはやっぱり便利なんだ。国によっては関税や税率の大幅な減税も受けられるしな」


「ああ、父さんがいくつかの国で依頼の報酬として勝ち取った永久減税ですね」


「ああ、アレはでかいだろ、しかもノウラン家(商会)にだけに対する特別減税だからその看板だけでも相当なもんだろ、それにバクスターのパーティに救われた都市や村は数知れないからな、その時にできた繋がりは金では換算できんだろうさ」


「まぁ、そんなこともあってな、お前が王都でノウラン商会を始めようものなら・・・正直ムジカル1国だけでなく、他の国も大迷惑だろうよ」


「何でですか?」


「あの馬鹿共全部が王都に終結して、あっという間に王都の経済・・・いやムジカルの経済を乗っ取って、やりたい放題するだろうな・・・坊ちゃんのためにとか言って」


あ~~~やるな~~~絶対やりそうだ、あの人たちの俺に対する忠誠心と態度は異常だったからな・・・まぁ父さんがいきなり死んで、その矛先が亡くなったからなんだろうけどと考えていると、俺の考えを読んだのか


「たぶん、お前が思っている理由とは違うと想うぞ、俺もそうだが、バクスターさんは女性関係を除いてホントに完璧な人だったんだ。あの人に恩を受けて恩返しをしたくても、恩返しのしようがない人だったんだ、なんとかしたいと思っても、恩だけが次々と降って来るんだよ。


だから、俺や他の連中は何とか恩返しをする方法として・・・そのな・・・お前を助けたいんだよ」


「なんだ、ただの自己満足だな、あいつは恩返しをして欲しいなんて少しも思ってなかったぞ、そんな小さい男ではないわ!だからこそ、ワシやドルカス、カナードが付き従ったんじゃないか、そんなことも分からんのかお前らは!」


「分かっているよ!でもよ、俺も姉さんを助けてもらって何もしない、何も出来ない恩知らずになりたくないんだよ!他の連中だってそうだろうさ!」


「まぁまぁ、父さんの話を聞けるのは嬉しいですが、それでお2人が喧嘩することはしないで下さい。とりあえず、ノウラン商会の復活は絶対にしますので、他の皆さんにはそう伝えてください。時期については・・・俺が20になる前には絶対だって、それより早まる事はあっても、遅くなる事は無いって言っておいて下さい」


「むぅ・・・分かった、くれぐれも騒ぎを起こさんよう、慎重にな・・・」


「分かっています、さてお話は以上ですかね、そろそろ俺も護衛の方たちと今後の話をしたほうがいいと思いますので」


「そうだな、まぁ俺はお前については何も心配してないから、好きにやって来い」


「ワシだって、何も心配などしておらんよ」


「だな、大丈夫だ、お前は俺たちの自慢の弟子だ、戦闘だろうと生産だろうと、お前に慢心さえ無ければ必ず望んだものを手に入れることが出来るだろう」


「ああ、貴様にとって一番の敵は慢心だと思え、いいな!それとコレは餞別だ」


そう言ってガザル師匠が自分のアポーツバックから袋を取り出した。


「コレはなんですか?」


「毎年馬鹿共が勝手に贈ってくるお前の学費を貯めたもんだ、さすがにワシが手を付けるわけにはいかんし、送り返すのも無駄だから取っておいた。細かくは数えておらんが、金貨3000枚以上はあるだろう、初期の資金にするがいい、家や仕事場はなるべくなら借りずに買え、いいな?」


「分かりました。ありがたく使わせてもらいます」


「それでいい、では、ワシらは戻るぞ、しばしの別れだ、さらば!」


そう言ってガザル師匠は馬車から飛び降り


「そうだな・・・学園フェスタまではあまり全力を出して必要以上には目立つな・・・王都にはめんどくさいやつらが一杯いるからな、でもな我慢の限界を越えるようなやつや、お前の大切なものに手を出す馬鹿がいたら・・・見えないところでぶん殴れ!ばれたとしても最悪村に帰ってくれば問題ないからな」


「そうですね、そこは父さんを見習いますよ、俺の大切な物に手を出す馬鹿がいたらどうなるか?世界中で証明してやりますよ」


「そうだ、それが出来ないと大切なものは守れない!それを忘れるな!お前はいつだって自由だ!頑張れよ!」


そう言って、クルド師匠も馬車を飛び降りた。


さて、ここからが商人メルカトラーへの本当の始まりだ。


そう思い去った二人の師匠を見送り、自分自身に気合を入れる!


このお話で第一章完ですが、いかがでしたでしょうか?


初めてのオリジナル作品で拙い部分も多かったと思いますが、この続きを読んでみたいという方はどのくらいいるんでしょうか・・・ちょっと心配です。


とりあえず、途中から毎日更新でここまで来ましたが、続きの書き溜めを始めるため、しばらくお休みをさせていただきます。

活動報告を読まれた方はご存知かと思いますが、既に第二章の書き溜めを始めていますので、それほど長くは掛かりませんので、お待ちください・・・・と言うか・・・待ってくれる奇特な読者様は本当にいるんでしょうか・・・本気で心配です・・・


それはさておき、ここまで読んでいただいた読者の皆様に感謝を!

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