第3話: 仲間
ピピピピ----
「博士、この状態ならゲーム終了まで持ちそうですよ」
発表会が終わり、ラプジス博士とウィンフ博士は機械室で話していた。
「そうか…よかった…」
ラプジス博士が安堵のため息をついた、その時だった。
ピピ…ピィィィギィィィ……
「な、なんだ!どうした!」
今までメインコンピュータの内部を写していた機械室のモニターが砂嵐になった。
「何!?どういうことだ!?」
「く、詳しくはわかりませんが少数のプログラムが破壊されたようです!」
「そんな……」
放心状態のラプジス博士に追い打ちをかけるように、ウィンフ博士が言いにくそうに言った。
「しかもこれがいつ向こうの世界に…CRに影響するか特定出来ません」
「くそ……。仕方ない、我々二人で出来るところまでやってみよう」
あれから俺らはヴェントさんから色々な話を聞いた。神話の話。カードの話。袋に入っていた電子機器の話。
この電子機器、電子マネーだった。
カートリッジを穴に差し込み、電源を入れると<3000u/0t>と表示された。
ヴェントさんの説明によると、uは一般的なお金の単位で、もちろん働くことでも増やすことが出来るが、カードバトルをした場合、勝った者の電子機器には<u>がバトル内容相応に増やされるのだ。また、その時同時に増えるのがtだ。<t>は普通のお金と違ってバトルに勝つこと以外では手に入れることが出来ない。このポイントは専用の店で物と交換することが出来るのだという。
そして最も俺達二人の興味をひいたのは、神話に出てくる伝説のカード3枚だった。タクロス、フォーリヴァム、トゥルノ……。
ヴェントさんと一緒に朝ご飯のトーストとベーコンエッグを食べながら、それらの話を聞き終えた二人は、最後にヴェントさんにここの家賃を聞いた。
「ああ、ここは1ヶ月20uだよ」
「そうですか、ありがとうございます」
「なあリーク。外でモンスター見てみないか?」
「あ、いいねそれ。…ごちそうさまでした。今日は色々ありがとうございました」
「いえいえ、また何かわからないことがありましたら何でも聞いて下さい」
ドアを開けて外へ出た----そこは、この宿舎と同じような木の造りの家が数十件立ち並ぶ小さい集落だった。朝早いのに、多くはないが人も歩いている。
俺達は宿舎の裏に草むらを見つけ、そこでカードを見ることにした。
シトはさっき召喚したトーラのカードを取り出した。リークは20枚のカードを順に眺めている。
「リーク早くしろよー!」
シトは早くバトルしたくて仕方ないのだ。
「う…ん…ちょっと待って……」
……その時、人の気配を感じた。
「ん…誰かいるのかぁ?」
がさがさと草むらを進んでいくと、一人の少女がカードを持って……モンスターを召喚しているのが見えた。
「あ、あの……」
「え、あ、こ、こんにちは!あの、二人共ここの人ですか?」
少女はかなり驚いたようで、大声で一気にまくし立てた。
「え…?いや違うけど…」
「じゃあ…現実世界から…?」
「ああ…てことは君も?」
「う、うん!私はラヴィア!ラヴィア=サープ!よかった…仲間がいて…」
「仲間って……」
「ペアになった子がいなかったの。私、あそこのフェイム宿舎の下宿人なんだけど、大家さんにその子は昨日の昼に出掛けていったって聞いて、心細くなって……」
「そうなんだ……」
しばらくの沈黙……。するとシトがいきなり声を上げた。
「じゃあさ、俺達と一緒に行動しようよ!」
「え…いいの?」
「いんじゃね?なあリーク?」
「あ、ああ。いいかもね」
「あ…ありがとう!」
「ああ……ところでさ、さっきまで何してたの?」
「え……ああ、カードの召喚の練習だけど…」
「そうか………なあ、俺とバトルしないか?」
「おいシト…」
「うん……いいよ。私もちょっとやってみたかったし」
そう言ってラヴィアはカードをシトやリークのと同じ布袋から取り出した。
「よし……じゃあバトル開始……か…」
シトは20枚のカードの中からトーラを選び出した。