第14話:繊細
こんにちは、魔狗羽です。かなり字体が変わっていると思いますが、ご了承下さい。
メリアに連れられて、俺は木製の道場のような広い部屋に行き着いた。ここは熱気がむんむんだ。
「あの‥‥それで<火の神>は‥‥?」
メリアは立ち止まって、ゆっくり振り向いた。
「それは<俺>だ。俺には<火の神>──フォルドルの力が宿っている。当然のことだが俺は人間‥‥だがフォルドルの力のおかげでモンスターと闘えるまでになった。<火の神>を見たいってんだったら‥‥俺に挑戦するしかないぜ」
俺の手は無意識の内に腰にぶら下げたカードの袋に触れていた。因みにこれは今朝ヴェントさんが俺達にやってくれたものだ。
そうか‥‥挑戦って‥そういうことだったのか。
俺はもう一度、カードの袋に触れる。確かめる。感触を。俺は勝つ。シトなんかに負けてはいられない。
「それでは‥‥お願いします」
『残念だったなラヴィア。メリアと闘うのはリークだそうだ』
昨晩の激闘でぼろぼろになったレグナタワー最上階。私は適当な机に腰掛けて、無線をことり、と置いた。
「何がよ」
『お前のお気に入りのシト君じゃなくて〜』
私は無線を叩き壊しそうになる衝動を必死で抑える。
「ふざけないで。それで?わざわざ私をこんなとこに連れ出して、一体どういうこと?」
『いやいや‥‥シトの破壊現場を実際にみてもらおうと思って。どうだ?』
「まぁ‥‥確かに初心者離れした破壊力ね‥‥トーラが攻撃よりも守備能力に長けたモンスターであるのにも関わらず‥‥」
確かに私は少なからず驚いている。まだカードを始めたばかりだというのに‥‥。
『そう。そしてここでの闘いによってシトは自分のモンスターとの信頼を得た。あのトーナメントでの<お前の>言葉。短期間でその人間の本質を見極められるお前の能力‥‥ほんと、よくやるよな』
「そしてあのトーナメントに誘導したのは貴方‥‥ってことね」
『そうそう俺とお前は最高のコンビだよ!だからシト君なんかに目移りはしちゃだめだぜ?』
またしても無線を壊しそうになる衝動を堪える。やはり私の精神力は強い、と自画自賛してしまう。代わりに頭の中でこいつをひねりつぶしておく。
「切るわよ?」
『はっはっは‥‥』
全く。
『それで?お前はこのバトル、どう見る?』
この部屋で唯一壊れていないパソコンにライヴの画像が送られてくる。画面にはリークとメリアの戦闘シーンが写っている。
「私は‥‥」
「おいおいこんなもんかよお前の実力はよぉ!」
ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!
いきなりのラッシュ。メリアの巨体からは考えられない程のスピードで迫ってきた。
「!ブレゼ避けろ!左だ!」
ヒュオッ‥‥!
間一髪だ。危なかった‥‥こいつの一撃はかなり利きそうだ。俺は一瞬にして戦慄した。
「ブレゼ!四重鎖力<カルテット・チェーンフォース>!」
ギュオォォォォッ!
ブレゼの両手両脚の鎖がメリアに向かって伸びていく。
「しょぼい技だなおぃ!喰らえぇ!炎飛<スピリッド・フレイム>!」
メリアの身体から、本人の大きさと同じくらいの大きさの炎の球を繰り出した。伸びていく鎖とぶつかる‥‥!
ボワァァッ!
‥‥相打ちか‥‥。俺は再度メリアに攻撃を叩き込むべく、メリアのいる場所を確認しようとした。‥‥しかし‥‥メリアの姿は無かった。
「はっはっは!上だぁ!いくぞ、神炎直下<フレイム・クライム>!」
上から、巨体に炎を纏ったメリアが、襲い掛かって来た。
「‥‥ぅ‥‥うわぁぁぁぁ!」
「‥‥私は、行けると思う。メリアは見た目先行の派手な大技ばかり使う。対してリークはシトと違って繊細な行動が出来る、そしてそれはモンスターにも反映される。使っている度合いが多ければ多い程、よ。それに、どちらが優勢であろうと、『この勝負の決着はつかない』」
『よくわかってるじゃないか。大体あのままじゃあメリア自身の体力が持たない‥‥』
「リークは、勝つわよ‥‥!少なくとも闘っている間は‥‥!」
モンスター名:メリア=コセロイン<フォルドル>
火の神を司るフォルコドの力を、ジレイルタワーの協力、又は実験として与えられた。炎属性にしては珍しい、打撃攻撃を得意としたフォルドルの力を得た彼は、炎を身に纏った突進系の技を好んで使う。
技:神炎直下<フレイム・クライム>‥炎を纏い、相手を押しつぶす。