第11話: 結束
コプトは、その妖精のような身体を振る。すると、黄色く光る粉が、キラキラと大量に発生し、コプトが両手を広げると、その粉がこちらへ飛んできた。
「ランベイルも…お願いねー」
「ああ、わかっているさ」
赤Tシャツの男……ランベイルがにやりと笑った。
「もう1発!凶根津波<タイドル・ルート>!」
また根がシトとトーラを襲った。
「大丈夫だ…トーラ……聖域飛………!?」
身体が……動かない……!?
なぜかシトとトーラの動きは突然止まり、声を出すことも出来なくなった。
(………!そうか…あの粉……!)
コプトの放った粉が、自分達の動きを封じているのだ……シトは直感で、そう思っていた。
グガァァァン!
シトとトーラは、またしても大量の根の餌食となってしまった。
「これで終わりかなー…………何!?」
ムクッ……。
倒れているシトとトーラは、ボロボロになりながらも、立ち上がろうとしている。
「俺達は……負けない…!」
ぽうっ……。
!
シトは慌ててトーラのカードを見た。だが、カードは光っていない。
「ヒャハハハハッ!こんなとこでケルヴォが覚醒するなんてな!」
シトが驚いてランベイルの方を見ると、彼の右手……ケルヴォのカードが青く光っている。
「運が悪いねお前。いや、1番最初に見れるんだからラッキーなのかもな……毒蔓襲竜<シーラス・ポイズン>!」
「遅い……。時間かかりすぎだって……」
フェイム宿舎の部屋で、ラヴィアはいらだたしげに呟いた。
バキバキバキッ!
凶根津波のように、大量の蔓がシトとトーラを襲う。
「そろそろ終わりだね……花粉霧舞<ブラッサム・ミスト>」
コプトはまたきらきらと光り輝く粉を撒き散らし始めた。
「聖域飛沫<サンクチュアリ・スプラッシュ>!」
「ふ……遅いよ………何!?」
ドゥゥン!
「なんで……」
シトとトーラを囲んで上がった水飛沫を見上げて呆然とするランベイルとロズビート。
「相手の攻撃パターンが読めていれば、相手より早いタイミングで技を出せる……か。やるな」
ジレイルタワーのモニター室で、ヴェナードと金髪で色白の女性、そして色黒の大男が話している。
「シト=クランヴァート。いいわね、確かに力を感じるわ。まだその力は芽生えたばかりみたいだけどね」
「まぁな、シトの力は最近突然リポーテルタウン付近で発覚されたもの……つまり初心者だからな。だからお前……フロートラが相手をするまでもない。ここは俺に任せてくれよ、ガンタックスもいいだろ?」
「……これは共同任務だからな。誰がやろうと見返りは俺達全員で受ける。好きにしろ」
「ははは、相変わらずお固いことだな」
ドォォォン!
「おっと…あいつらもう終わりかな…」
モニターを見ると、トーラが潤水貫剣で毒蔓襲竜の蔓を薙ぎ倒し、ケルヴォとコプトの2体に突っ込んでいっている。
「ま、これは実験程度だからな。ちゃんと結果はRに報告させるし」
「あら、Rってなぁに?」
「いやー俺も抜目がないねー!………スパイを入れているからな、あっちには」
「ハァ、ハァ……やるな…技の連携を読みやがったとは……だが……お前の目的がなんなのかは知らないが……こっちの情報は渡さないぞ……」
潤水貫剣の誘爆でダメージを受けたランベイルが、そう言い終わるや否や、ポケットから赤いスイッチを取り出した。そして、そのスイッチを押した。
ヴィィィン……パシュゥン……
突然この部屋にあった全てのコンピュータの画面が暗転した。
「クッ……さすがV様のお眼鏡にかなったやつだ……シト…お前の名前…覚えとく……」
そう言って、ランベイルはカードを取出し、1度戻したケルヴォをまた呼び出した。
「ケルヴォ‥‥毒蔓襲竜<シーラス・ポイズン>!」
バキドキッ!
ケルヴォは壁に穴を開け、2人はそこから飛び降りた。
モンスター名:コプト
花の妖精−−ヴァニリーン大陸のある特定の地方にだけ伝わっている、有名な伝説の中に、{薔薇の紅に手を染めた時、その者の身体はコプトによって蝕まれ、骨も残らず溶かしてしまう}というのがある。これを骨組みに、各地に何パターンか違う伝説が語られているが、ジレイルタワーの支部のレグナタワー周辺の地域に伝えられた伝説を元に、人工的にコプトを創り出した。
技:花粉霧舞
<ブラッサム・ミスト>
身体を瞬間的に硬直させる効果を持つ花粉をばらまき、相手の動きを封じる技。直接的なダメージは得られない。