『白い朝の旅立ち 〜65歳からの再出発。元技術部長が信州の町工場を救う物語〜』 第4話:再び設計図に向き合う
いよいよ始まった「技術顧問」としての初仕事。そこには驚きの再会と、真剣な若者たちの眼差しがありました。
翌週、真一は「株式会社陽燦」の設計室に招かれた。 そこには数人の若い設計者たちが待っていた。
初めは緊張した面持ちだった彼らだが、真一が机に向かい、小さな問題点を指摘するうちに、少しずつ会話が生まれ始めた。
「ここのクリアランスをあと〇・五ミリ詰めれば、振動は抑えられるはずだ」 「なるほど……。計算上では分かっていましたが、現場ではそこが肝心なんですね」
質問は鋭く、提案は現場感覚に富んでいる。 彼らの真剣さに触れるたび、真一は自分の「居場所」を再発見していく心地がした。
そんなある日、設計室に聞き覚えのある声が響いた。
「部長!」
人懐っこく手を振る彼女は、あの沙織だった。 聞けば、以前の会社を辞めた後、転職してこの陽燦社でCADオペレーターとして働いているという。
「長野ではあの恵子さんと食事会の予定だったんですよ。部長の話も出ていたんです」 「そうか、世間は狭いな」 「仲良くしてくださいね、部長!」
沙織のウインクに、真一は思わず苦笑いした。
顧問としての契約は、決して堅苦しいものではなかった。 月に一度の設計レビューと、必要な時の技術相談。 年齢と家庭を配慮した、柔らかな約束だ。
最初の会議で、真一は率直に伝えた。
「私はすべてを知っているわけではない。だが、経験から見えることはある。皆さんの若き才能を整理して、形にする手伝いをしたい」
若者たちの目が輝き、会議室に活気が満ちた。 真一は、講師時代の饒舌さを少しずつ取り戻していた。
沙織さんの「仲良くしてくださいね、部長!」という言葉が良いアクセントですね。ベテランの経験と若者の活気が混ざり合う、心地よい現場が見えてきました。




