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第63話 秋ヶ瀬ウォリアーズ5、カラオケ


 わけのわからない女冒険者に絡まれたが身の程を教えてやった。

 ちょっとやり過ぎたかもしれないが、結局は本人の身から出た錆。



 次の日からまた俺は5階層に潜って元気にサーチアンドデストロイを続けた。

 自室の紙袋の中に入れてそのままにしていた4、5階層相当の64個の核も買い取ってもらった。


 秋ヶ瀬ウォリアーズの3人と1階層に潜る前日までの3日間の買い取り額はその64個の核も含めて758万2千円。

 累計買い取り額は5436万9千円+758万2千円=6195万1千円となっていた。




 今日は秋ヶ瀬ウォリアーズの3人と1階層に潜る日。

 待ち合わせは9時なので朝食はうちで食べた。

 フィオナはいつものようにうちで留守番だ。

 母さんがうれしそうな顔をしていた。


 装備を整えて待ち合わせ場所に行ったら3人が待っていてくれていた。

「おはよう」

「「おはよう」」

「あれ? 今日はクロちゃん背負っていないんだ」

「Cランクの4、5階層でもオーバーキル過ぎて出番がないから、ここのところ払いだしてもらってないんだ」

「さすがは長谷川くん」

「わたしの見込んだ冒険者」

「ふふふ」

 中川さんの含み笑いだけは意味が分からなかった。


 渦を抜けたあと後続の邪魔にならないよういつものように脇によけて今日の作戦を練る。

 俺はほぼ部外者なので、3人の話に耳を傾けるだけだ。


「今日は夏休み最後の長谷川くんと潜る日だからパーッと行きたいね」

「うーん。

 それなら、今日は午前中までにして、ここでお昼を食べたら午後から4人でカラオケにでも行かない?」

「それはマズいんじゃない。せっかく長谷川くんがわたしたちに付き添ってくれるんだもの」

「確かに。

 でも長谷川くんに聞いてみるだけ聞いてみよ。

 ねえ長谷川くん、午後からカラオケに行かない?」


 彼女たちと1階層に入るのはサービスのようなものなので、俺に異存は全くない。

「いいよ。

 俺は歌なんて知らないから歌えないけどね」

「ヤッター。じゃあそういうことで。

 午前中は適当に流して、この前の山田池のそばで昼食にしようよ」

「そだね」

「さんせー」


 今日の作戦?が決まったところで俺たちは移動を開始した。

 前を歩く俺の後ろでは、3人がカラオケで何を歌うのかという話で盛り上がっていた。


 最初のディテクターには反応がなかったので、歩きながら再度ディテクターを発動したら反応があった。


 見つけた反応に3人を誘導し、滅多打ちにされたモンスターの残骸から核を取り出し、渡されたウェットティッシュで核と手袋から汚れを拭き取る簡単なお仕事です。

 しかも、モンスターは基本的に元の姿が何だったか分からなくなるほどぐちゃぐちゃなのでナイフを使わなくても手を堆積物の中に突っ込んでまさぐるだけで核を回収できます。


 俺はディテクターでモンスターを見つけながら少しずつ山田池に近づいていった。

 11時40分ごろ山田池の端、前回と同じ場所に到着したはずだけど、払ったはずの下草や細い木は元通りになっていた。

 5分ほどかけてレジャーシートがゆったり敷けるだけの空き地を4人で作った。

 午前中の成果はビー玉大の核15個。1個4千円として、6万円。

 ひとり頭1万5千円。

 これでカラオケの代金は余裕で払える。はず。


 斉藤さんが持ってきたいつものレジャーシートを広げ、みんなが荷物を下ろし、ヘルメットと手袋を外して昼食となった。


 今回も俺の荷物はレジャーシートの真ん中だ。

『タマちゃん、どうぞ』と誰かが何かを差し出すとリュックから偽足が伸びてそれが偽足に吸収される。

「触手がかわいー」

「金色の触手って斬新」

「気持ちいいかしら?」

 タマちゃんの偽足のことを3人は触手という。

 触手じゃなくて偽足だと思うのだが黙っておいた。

 いらぬ論争は何も生まないからな。


 この光景を見ながら俺はおむすびを食べているのだが、やはり3人にフィオナを紹介するのは危険だと感じている。

 いずれ紹介するかもしれないがまだまだ先だ。


 俺のあだ名がフィギュア男らしいから、その辺りが3人に漏れたら危ういが、何とかなるだろう。

 なんなら本物の妖精フィギュアをどこからか調達してもいいし。


 30分ほどかけて食事が終わり、片付けを済ませて帰路についた。

 やや速足で途中のディテクターの反応は無視して50分弱で渦まで戻り、買い取り所に回った。

 核15個の買い取り額は6万2千円。4人で割って1万5千500円

 俺の累計買い取り額は6195万1千円+1万5500円=6196万6500円になった。

 こういうのって減らずに増える一方というのがうれしいよな。


 武器を預かり所に戻した俺たちは、いつものようにセンターの前で待ち合わせをした。


 10分ほどで3人が駆けてきたのでいつものように「そこまで急がなくてもよかったのに」と、言っておいた。

 お互いこういうところは大事だよな。


「どこに行く?」

「駅前のカラオケ屋かな?」

「じゃあ、長谷川くんバスでいい?」

「ああ、いいよ」

 バスに乗るのっていつ以来だろう?

 全然思い出せない。


 センター前のバス停で並んでいたらすぐにバスが来て、冒険者を降ろした。

 そのバスに他の冒険者たちと一緒に乗り込んだ。

 この時間でも結構バスから冒険者が降りたことには驚いた。

 時間をずらせばその分人口密度も減るので、それを当てにした冒険者たちだと思う。

 いろいろ考えているようだ。


 初めて乗ったセンターから駅行きのバスは定額だった。

 専用バスのようなものだからそういうものなのだろう。


 財布から小銭を取り出して入り口で箱に入れて後ろに移動する。

 一番後ろの席が全部空いていたので4人で並んで座った。

 なぜか小学校の遠足を思い出した。

 そして、結菜のことも思い出した。

 テニス対決の後の喫茶店でのアレも何だったんだろう?

 俺には永久にわかりそうもないな。


 もしかして?

 いやいや、結菜に限ってそれだけはあり得ないな。


 20分ほど3人の雑談を聞きながらバスに揺られていたらバスは駅前に到着した。

 バスを降りた目の前のビルにカラオケ屋が入っていた。

 この店はもちろんだが俺は他の店にも入ったことはない。

 要はカラオケ初心者だ。

 従ってカラオケのシステムというものが全く分からないので全部3人にお任せだ。


 足取りの軽い3人の後についてビルに入っていき、3人の後に続いてエレベーターに乗って3人の後に続いて降りた。


 勝手知ったるなんとやらで、斉藤さんがてきぱきと入り口のカウンター越しに店の人と話して、俺たちは店の人の案内で小部屋に通された。


 テレビにカラオケ機械にソファーとテーブルのある部屋だった。

「長谷川くん、飲み物と食べ物は何にする?」

 斉藤さんに聞かれたので「任せるから何でもいい」と答えた。

 斉藤さんは他の2人にも希望を聞いて出入り口の近くの壁にかかっていた電話で注文した。

 実に慣れてる。

 歌もうまそうだ。

 日高さんと中川さんはタッチパネルを操作して曲のリストを見ながらペン?で何かしている。

 注文を終えた斉藤さんは日高さんからタッチパネルを渡してもらって操作し始めた。

 どうも曲の予約をしているらしい。


 テレビの画面に映像が映り、タイトルが表示されイントロが流れ始めた。

 最初は日高さんのようで、マイクを持って立ち上がった。

「じゃあ、わたしからいくね!」


 曲のタイトルは良幾三さんの『みちのくブルーベリー』だった。

 しかもセリフ付。

 セリフもうまいが歌もうまい。

 歌い終わった後は大拍手だった。


 そこで注文していた食べ物と飲み物が運ばれてきた。

 飲み物はオレンジジュースとコーラ。

 俺は斉藤さんからコーラを渡された。

 食べ物は唐揚げ、ピザ、フライドポテト、それにたこ焼き。

 たこ焼きは6個ずつ紙でできた小皿に入っていて人数分あったので、俺はコーラを飲みながらたこ焼きに手を伸ばした。

 たこ焼きを食べるのは本当に久しぶりだ。

 1つ爪楊枝で刺して口に運ぶ。

 熱々。うまい!


 日高さんの後は中川さん。

 曲は都あきみさんの『大阪しぐれ煮』

 歌い込んでる。


 そして斉藤さん。

 曲は原優子さんの『花咲くわらじ』

 これもいい。特に高音部。


 今度はテレビの映像から想像するにアニメの主題歌だと思うが3人がマイクを持って立ち上がり『プレパレー()』なる歌を歌い始めた。

 この3人、特訓してるんじゃないかと思うほどうまい!



選曲は作者の趣味です。

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美味しそうな名前の歌だ…
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