第58話 Cランク冒険者2
Cランク冒険者になった俺は、Cランク冒険者に許された最下層5階層まで一気に潜りそこでサーチアンドデストロイ作戦を始めた。
5階層の坑道を歩いていて感じたことは、最初2、3階層と見た目は変わらないと思っていたのだが、どうも坑道が広くなっているようだ。
これはいい。
これなら大剣クロが扱いやすくなる。
大剣クロを振り回すのに坑道が邪魔になるようなら坑道ごと壊してしまってもいいと思っていたが、邪魔ものがないに越したことはない。
まずはディテクター。
そこまで遠くないところで反応があり、俺はそこに向かって進んでいった。
坑道の曲がりを抜けた先にいたのは大ネズミ3匹セットだった。
俺を認めた大ネズミがこっちに向かってきた。
2本のメイスをそれぞれ左右の手で持った俺も、向かってくる大ネズミたちに突っ込んでいった。
俺は接触と同時に大ネズミ3匹の頭蓋をカチ割ってそのまま数歩通り過ぎた。
坑道が広くなったからクロを使ってみてもいいかもしれないと思ったが、Cランクの階層じゃクロの出番はないな。
地道に頑張ってDランクに昇格するまでクロはおあずけだ。
たおした3匹の大ネズミに向かってリュックの中から金色の偽足が伸びて、3つの死骸はあっという間に消えてなくなった。
俺は右手のメイスをベルトに戻して、手のひらを広げタマちゃんの偽足から3個の核を受け取った。
受け取った核は腰袋行きだ。
3階層の時と同じ時間で3倍の数。買い取り価格は2倍。実に6倍の効率だ。
頑張ってCランクになってよかったー。しみじみ。
それから1時間ほどで3匹、2匹、3匹、3匹、2匹、3匹のセットで各種のモンスターと遭遇し、最初の3個を加えて合計19個の核を手に入れていた。
昼までまだ3時間ちょっとある。
モンスターには全く手ごたえはないが、目に見えてお金が貯まっていく。ウハウハが止まらない!
ウキウキ、ウハウハで坑道を歩いていたらディテクターの反応が坑道の先の方であった。
そこに向かって速足で進んでいたら前方に明かりが見えた。
武器を手にした冒険者が3人、モンスターと戦っているようだ。
俺はCランク冒険者の戦いを見物しようとキャップランプの明かりを絞って近づいていった。
やってるやってる。
3人の冒険者が2匹の大ネズミと戦っていた。
ほかに地面の上で血だらけになって動かない大ネズミが1匹見えるが、死んでいるのだろう。
3人の冒険者はそれぞれ、盾とメイス、盾と短めの槍、そして短剣で戦っていた。
3人目の短剣で戦っているのは女の冒険者で小型のクロスボウを腰に下げていた。
クロスボウを地面に投げ捨てれば傷むだろうから腰に下げているのだろうが、そのクロスボウがいかにも邪魔に見える。
とはいえ、女冒険者は積極的に大ネズミと戦っているわけではなく大ネズミが近寄ってきたら牽制して2人の冒険者の足手まといにならないよう立ち回っているところはさすがと考えていいか?
このチームの問題は男2人の決定力の低さだな。
何度か武器が大ネズミにヒットしているのだが決定打になっていない。
残った2匹の大ネズミは血だらけになりながらも攻撃を止めない。
こんなザコに数分かかるのが普通なんだろうか?
それでも、そのうち大ネズミは2匹とも動かなくなった。
ご苦労さま。
大変参考になりました。
俺はそのまま引き返して別の坑道を進んでも良かったが、3人の冒険者の向こうにディテクターの反応があったので、大きく息をしている3人の横を『どちらさまもゴメンなすって』といった感じで通り過ぎていった。
彼らの横を通り過ぎたところでキャップランプの明かりは元の明るさに戻しておいた。
ディテクターの反応の位置は3人の冒険者から200メートル。ずいぶん近い。
その反応がそれなりの速さで近づいてきている。
モンスターはオオカミ3匹だ。
たまたま坑道がまっすぐなので、先ほどの冒険者たちから見えるところで戦うことになる。
俺が戦う姿をさらすのは仕方ないが、タマちゃんが死骸を処理して核を抜き取るところは見せたくないので、久しぶりに俺が直々ナイフを振るって核を抜き出さざるを得ない。
面倒だが仕方ない。
俺は両手にメイスを構え、オオカミの接近を待った。
オオカミたちは回り込んで俺を囲い込みたいようだが、近づいてきた順に頭蓋をカチ割ってやった。
大き目の生き物に対して頭蓋に衝撃を与えすぎると眼窩から目玉が飛び出すので加減が大事だ。
向こうの世界にいた時はオオカミを含めてこういった生き物には刃物で首を斬り落としていたのであまり慣れてはいないのだが、今回もうまくいった。
その辺りを秋ヶ瀬ウォリアーズの3人に自慢したいが、自慢したら引かれるかも知れない。
いや、あの3人もたいがいだから、ちゃんと「すごい」「さすがは長谷川くん」と言ってくれるかもしれない。
久しぶりにナイフを取り出した俺は、オオカミの胸を割いて手を突っ込んで核を取り出した。
先ほどの冒険者たちと距離がある程度あることを幸いに一度タマちゃんの偽足で手袋と一緒に核を舐めてもらってきれいにしてから腰袋に核を放り込んだ。
残った2匹も同じように処理して、オオカミの死骸は坑道の壁に向けて蹴っ飛ばしておいた。
これで手に入れた核は22個。
まだまだいくぞ!
サーチアンドデストロイをそれから昼休憩まで3時間続けて、追加で54個の核を手に入れた。
朝から合計で76個の核だ。
腰袋が一杯になっていたので、レジ袋に移してリュックにしまってから休憩に入った。
ウハウハしながら荷物を置いて坑道の壁に寄りかかり昼食のおむすびをぱくついた。
こうも快調だとおむすびがさらにおいしい!
タマちゃんにおむすびを渡し、フィオナにはおむすびのご飯つぶを渡しながらの和やかな昼食だ。
夏休み期間、ほぼ毎日昼食でおむすびをたべているので、この調子でいくと顔が三角になってしまうかもしれない。
12時20分には昼食を食べ終わった。
最後にペットボトルから緑茶を一飲みして後片付けをし、リュックを背負ってから、外していたヘルメットと手袋を着けた俺は午後からのお仕事のためすっくと立ちあがった。
上がりの予定と思っている3時半まで3時間、頑張っていこう!
午後からも快調で3時半までに51個の核を手に入れた。
午前中と合わせて、127個。
そこから転移しながら30分ほどかけてダンジョンセンターの買い取り所にたどり着いた。
「核の買い取り、お願いしまーす」
「カードをリーダーにかざしてからトレイに入れてください」
俺は冒険者証をカードリーダの上に載せた。
「おっ! グリーンカードですね」
俺の冒険者証に驚いてくれた。
「あっ! 長谷川さん!」
名まえも売れていた。
リュックから取り出した76個の核と、腰袋から取り出した51個の核をトレイに空けた。
「随分ありますね
これ何日分ですか?」
「今日1日です」
「昨日昇格なさったわけですものね。
失礼しました。
しかしすごいですねー。
個人でこれって、Sランクでもこれほどの人はいませんよ」
「エヘヘヘ、それほどでも」
俺っておだてに弱い自覚はある。
結局買い取り額は255万3千円となった。
累計買い取り額は5010万+255万3千円=5265万3千円
Dランクへのハードル累計買い取り額1億円へ、この調子でいけばそれほど時間はかからず到達できるんじゃないか?
Sランクになるまでガンガン行くつもりだが、儲けたお金は何に使うのか全く考えていない。
おいおいだな。