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第56話 もう一息


 今回のダンジョンツアーは大成功だった。

 目標の5000万円まであと430万円。

 俺の部屋の中には4、5階層のモンスターの核が64個ある。

 2万円ほどで売れるはずだが、3階層までしか潜ってはいけない俺が売ると説明が面倒そうなので売りたいのは山々だがCランクになるまで秘蔵するつもりだ。


 夏休みはあと16日。

 秋ヶ瀬ウォリアーズの3人と1階層に2回行くとして14日ある。

 1日30万円稼げば達成だ。

 なるべく早く達成して1日でもいいから夏休み中に4、5階層で稼ぎたい。


 ツアーから帰ってきた俺は、疲れただろうということで、一番風呂を使わせてもらった。

 その後、父さんが風呂に入っているあいだ俺はリュックの中身なんかを片付けておいた。

 父さんが風呂から上がってしばらくしたら夕食になった。


 メニューはビーフステーキと野菜サラダ。

 それにコンソメスープとご飯。

 ビーフステーキも久しぶりだ。

 向こうの世界では肉をほぼ毎日食べていたけど、日本の肉が一番だ。

 こっちではダンジョン産の肉も出回っているらしいけど、うちではまだ食卓に上ったことはない。

 ダンジョン産の肉はちょっとお高いらしいし、牛肉、豚肉、鶏肉で十分だ。


「それで一郎、どうだった?」

「思った以上に稼げたよ」

「そうなのか?」

「うん」


 そういえば俺は父さんにも母さんにも俺がBランクの冒険者だってことを言ってなかった。

 まっ、いいか。


 その後、父さん母さんにダンジョンツアーについて聞かれるまま適当な話をしておいた。

 俺って悪い息子なのでしょうか?


 その日ふかふかのベッドでぐっすり寝ることができた。坑道の路面の上に毛布を敷いただけでもぐっすり寝られる体だが、やはりちゃんとしたベッドの方が眠りやすいと思う。



 翌日からの5日間、俺はスパートをかけた。

 午前8時から午後3時半まで、7時間弱サーチアンドデストロイを繰り返し、1日平均ぴったり65個、合計325個の核を手に入れ、累計買い取り額が4897万9千円となった。

 5000万円まであと100万円だ。2日あれば達成だ。

 明日は秋ヶ瀬ウォリアーズの3人と1階層だから、明々後日しあさってには達成できそうだ。


 Cランクになって潜れる4、5階層だと、核の値段が2万円前後。

 しかもモンスターが複数同時出現。

 この前のビッグウェーブには及ばないかもしれないがそれに準ずる儲けが期待できる。

 1日100万円、いや200万円稼げるかもしれない。

 200万円稼げれば、夢の1億円到達=Dランクまで5000万円だからたったの25日だ。


 とはいうものの、俺の通うさいたま高校だと土曜は隔週半日授業があるので新学期が始まってしまえば基本的に日曜日と隔週の土曜しかダンジョンに潜れなくなる。

 従って潜れる日数は月6日。

 累計買い取り額1億円達成までに4カ月かかる計算だ。

 祝日もあるから1日200万円ペースで稼げれば正月前にDランクになれそうだ。

 グフフフ。



 木曜日。

 今日は2週間ぶりに秋ヶ瀬ウォリアーズの3人と1階層に潜る日だ。

 フィオナはうちで母さんとお留守番だ。


 いつものように準備を終えて渦の前の改札前に9時5分前に到着したら、こちらもいつものように3人揃っていた。


「おはよう」

「「おはよう」」

「みんな元気そうで何より」

「長谷川くんもいつも通りだね。

 大剣クロちゃん鞘に入れて背負ってるんだ!

 カッコいー」

「そうなんだけど、オーバーキル過ぎてほとんど使ってないんだよ」

「さすがは長谷川くん」

「フフフ、わたしが見込んだ男だけのことはある」

 俺は中川さんに見込まれていたらしい。


「それじゃあ、入ろう」

「「うん」」


 3人の女子を連れて改札を通り、その先の渦を抜けて1階層に出た。

 相変わらず周囲の視線を感じるが、俺はフルフェイスヘルメットを被ってるしあまり気にならなくなってきた。


 後続の邪魔にならないようにわきによけた俺たちは今日の作戦を考えることにした。

 と、言っても俺はノーアイディアなので3人任せだ。

「今日はどうしよっか?」

「前回は池に行ったから、今日は林?」

「あまり面白そうじゃないわよね。

 この前お取込み中の冒険者がいたけど、もうあんなのに出会えないだろうし」

 嗜好は人それぞれだからいいけど、あんなのに出会いたいか?



「わたしたちもBランクに昇格して下の階層に行ってみたいけど、今のペースだと何年かかるか分かんないよね」

「長谷川くんが異常なだけで、わたしたちだってそんなにスローペースじゃないんじゃないかな。

 それに長谷川くんのおかげでお小遣いすごい金額だもの」

「あっ! すごくいいこと思いついちゃった!」

「なに?」

「Sランク冒険者が引率していれば、Aランクの冒険者も下の階層に潜れるって講習で習ったじゃない」

「そうだったね」

「だから、長谷川くんがSランクになったらわたしたちを引率してもらうの。

 長谷川くん、いいよね?」

「いいけど、それって随分先のことだと思うよ」

「先かもしれないけど、わたしたちがBランクになるより早いと思うの」

 確かに一理ある。


「それはそれとして、結局どこに向かっていく?」

「長谷川くんに先導してもらって、適当に歩いていこうよ」

「そうだね」

「そうしよ」


 結局サーチアンドオーバー(****)デストロイでいくことになったようだ。


 すぐに俺はディテクターを発動し周囲を探った。

 渦の近くにもモンスターが潜んでいるようで、100メートルほど歩いたところで茂みの隅でじっとしていたカナブンをいつものように3人が袋叩きにした。

 これってストレス発散なのかもしれない。


 3人のストレスのはけ口にされてぐちゃぐちゃになった元カナブンの核は回収係の俺がいつも通り回収した。


「これ使って」

 今日は中川さんがウェットティッシュを用意していてそれを渡してくれたので、それで核を拭いてついでに手袋を拭いた。

 汚れたウェットティッシュは中川さんが受け取ってゴミ入れにするらしいビニール袋に入れた。

 核は斉藤さんに渡した。



 午前中、かなり速いペースでモンスターを駆逐していき、昼食前には16個の核を手に入れていた。


 いつものように斉藤さんがレジャーシートを敷きその上に4人で座った。

 俺はいつものおむすびセット。

 彼女たちはお弁当やサンドイッチ。

 さらに斉藤さんがポテトチップス、日高さんがチョコレート、中川さんがなぜかイカの燻製を用意していてそれをレージャーシートの真ん中に置いた俺のリュックの中にいるタマちゃんに食べさせながらの昼食となった。


 午後からも好調で、切り上げの目安の3時までに12個の核が手に入った。

 これで核の数は28個になった。


 買い取り所での買い取り額は11万2千円。

 4人で割って2万8千円。

 彼女たちにとっては結構な金額になった。

 俺の累計買い取り額は4900万7千円。



 武器を預かり所に預けて、いつものように秋ヶ瀬ウォリアーズの3人とダンジョンセンター前で待ち合わせをした。

 そしていつものようにハンバーガーショップでハンバーガーセットを食べて帰り際、斉藤さんから帰省先のお土産だと言って包装紙に包まれた小箱を貰った。


 うちに帰って母さんに、知り合いの冒険者の女子が帰省したのでそのお土産でもらったものだと言って小箱を母さんへ渡した。

「一郎って父さんに似ず女の子にもててよかったね」と、言われてしまった。

 俺から見て、父さんは立派な父親なのだが、母さんは何か不満でもあるのだろうか?


 包装から箱を取り出し蓋を開けたら生紅葉まんじゅうだった。

 ということは斉藤さんの帰省先は広島だな。




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― 新着の感想 ―
き、寄生虫…
打算通り越して依存になるの早かったなあ 打算が常態と化しているのは普通では無く異常
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