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第43話 ダンジョンはお休みして2


 2時間ほどフェアリーランドで寛いだところでそろそろおいとましようとどこに行ったか分からなくなっていたフィオナを探してキョロキョロしていたら、知らぬ間に俺の右肩に座っていた。

 気配を全く感じなかった。


「それじゃあ、俺たちはそろそろ帰るから」

『いつでもおいでください』

 俺はフェアに一言言ってフィオナを連れてうちの玄関前に転移した。


 時刻は午後3時ちょっと前。


 玄関のドアを開けようとしたところで門の向こうから結菜の声がした。

「一郎久しぶり」

 確かに久しぶりだ。


 通りを歩いているところを見かけることはあってもお互いに話しかけることもなかったので、家は隣りというか向かい同士なのに中学を卒業して以来会話したことが無かった。


 それはそうと俺の肩には今現在フィオナが座っているのだが。


「一郎、あなた冒険者になったんだって?

 うちの高校のテニス部の子が言ってたんだけど……。

 一郎の肩に乗せてる人形はあなたの趣味?」

 結菜が目を細めて怪訝そうな顔をして俺の顔とフィオナを交互に見た。


 説明は難しいし、説明したくはないので、

「最近冒険者の中で流行はやってるんだよ」

「冒険者のことなんて何も知らないけど、他人の趣味をとやかく言うつもりはないからいいわ」

 いやいや、さっき俺の趣味なのかと聞いて来ただろ? それも意味ありげな顔までして。


「そうそう。

 その子の話だと一郎ってあっという間にBランクとかいうランクに昇格したって言ってたけど」

「そうだな。

 運が良かっただけでな」

「Bランクの冒険者ってすごいお金持ちだって聞いたよ?」

「中にはお金持ちもいるだろうな」

 結菜は冒険者がどうやって昇格するのか知らないみたいだ。


「ねえ、今度わたしに何かおごってよ」

「なんで俺がお前におごんなきゃいけないんだ?」

「そりゃあ、一郎とわたしの仲だからよ」

 どんな仲でもないだろう、今となってはタダのお隣さん、いやお向かいさんだ。


 どうでもいいが、結菜のやついやに色が黒いな。

 七難隠せないぞ! 大人の俺は口には出しはしないけど。


「それはそうと、そのお人形動いてない?」

「ただの飾りだから動いていないと思うぞ」

「そうかなー」

 意外と目ざといな。


 このままだとボロが出るので、

「そのうちおごってやるかもしれないから、じゃあな」

 そう言って俺は結菜に背を向けて玄関のドアに手をかけた。

 後ろから『かもしれないって何よ。絶対だからね』と言う結菜の声がした。

 覚えてたらな。



「ただいま」

『お帰んなさい。

 結菜ちゃんと話してたの?』

「久しぶりに話したよ」

『結菜ちゃん高校生になってきれいになったよね』

 俺と母さんの感覚がズレているのだろうか?

 俺は何とも答えられず2階の俺の部屋に戻った。


 俺の部屋では相変わらずタマちゃんが段ボール箱の底で四角く伸びていた。

 俺が帰ってきたので、いったんはスライムっぽい形に戻ったもののすぐに四角く伸びてしまった。

 よほど四角形状が気に入っているようだ。


 フィオナは俺の肩から飛び上がって自分の段ボール箱に入ってバスタオルの上で横になって目を閉じてしまった。

 里帰りしてはしゃいで疲れたのか?

 俺も今日はなんとなく疲れたような気がしたので、ベッドに横になって目を閉じた。


 3人といっていいのか分からないが、俺たち3人揃って午後のまどろみタイムだ。

 気持ちいいなー。


 ちなみに、エアコンは頻繁ひんぱんに点けたり消したりするより点けっぱなしの方が電気代が安くなるということで、うちではエアコンは終日点けっぱなしだ。

 人がいる時のエアコンの設定温度は28度で、長時間人がいないようなときは30度に設定し直している。

 俺は暑さ寒さに強いと言っても鈍感ではないのでやはり適温の中の方が快適だ。従って俺の部屋も例外ではない。


『一郎、お風呂が沸いたから入りなさい。

 上がったら夕食だから』

 下から声がしたので、俺は着替えを持って脱衣場に下りていった。


 そのときなぜかフィオナが俺の後をついてきた。

 俺と一緒に風呂に入りたいのか?


 俺が脱衣場で裸になっても俺の周りを飛び回っている。

 俺のナニには興味はないみたいだ。

 仕方がないので風呂場に一緒に入り、軽く湯で体を流してから湯舟に入った。


 フー。生き返る。


 これはもう癖だな。


 フィオナは俺の頭の上に座って、足をブラブラさせている。

 お湯の中に入りたいわけではないらしい。

 しっかし、結菜のヤツ焼けてたなー。

 あいつは一体どこを目指しているんだろう?

 おごってやるやらないはどうでもいいが、そのうちアイツとテニスの一騎討ちでもしてみたいな。

 おそらくアイツは俺に完勝できると思っているのだろうが、まず俺が運動関係で引けを取ることはない。

 たとえ、相手が世界ランカーであろうともだ。

 フフフフフ。

 機会があったら切り出してみよう。


 フィオナが見守る中、体と頭を洗い、もう一度湯に浸かってから風呂から上がった。

 部屋着兼寝間着を着て、食堂に入ったら料理が並べられていた。


「もう食べてもいいわよ。

 あら、フィオナちゃん、一郎と一緒にお風呂に入ったの?」

 俺の右肩に座っていたフィオナに目を向けたら、母さんの言葉にフィオナがうなずいたところだった。

「フィオナちゃんかわいい!」

 ずいぶん母さん、フィオナに慣れてる。

 知らぬ間に接点でもあったのだろうか?


 母さんは父さんが帰ってきてから一緒に食べるそうで俺だけ夕食を食べた。

 今日のメニューはイワシの甘露煮とモズク酢に焼きナス。

 母さんのイワシの甘露煮は骨まで食べられて、おいしいんだよなー。


 食事中俺の体は当然前後するのだが、フィオナは器用に俺の右肩に座ったままバランスをとっている。

 

 いったん箸を置いてフィオナにご飯つぶをやったら両手で持っておいしそうに食べた。

 それを見ていた母さんが炊飯ジャーから少しご飯を手に取って、

「一郎、わたしもフィオナちゃんにご飯をあげてもいいわよね?」

 俺が何も返事しないうちに母さんがフィオナにご飯つぶをやり始めた。


 それはいいのだが、俺の近くでそんなことをされるととても食べづらいのだが。

 フィオナも何粒食べたのか分からないが、お腹がいっぱいになったようでそれ以上ご飯つぶは食べなかった。


「ごちそうさま」

 俺は食器を片付けてフィオナを肩に乗せて2階に上がっていった。

 母さんが名残惜しそうにしていた。



 父さんが7時過ぎに帰ってきて風呂から上がり居間で少し涼んでいるところに行き、お礼を言って6万円渡したら、利息分は要らないと断られた。

 親ってそんなものなんだろうな。

 俺もいつかは親になると思うが、うちの父さんくらいになれればいいが。




序盤出てきていかにもヒロイン枠だった中村結菜さん。果たして彼女はヒロインなのかモブキャラなのか? 

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― 新着の感想 ―
モブなのでは? たぶん
それは口実と自己正当化していようとも、たかりヤロウにはモブすら贅沢 というか同学年の女キャラは女臭い打算キャラばっか出てきているような? わざわざ電話した子もそれしたら自分たちに有利に転ぶ確率が高いの…
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