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第35話 転移


 フェアリーランドで魔物を退治した俺。

 正確にはタマちゃんの力で魔物を退治した俺は、妖精女王フェアからお礼に『転移術』のスキルだか魔法を頂いた。


 試験運転テストも兼ねてフェアを見つけた1階層の茂みの中を思い描いて『転移』と強く念じた。


 目の前が一瞬で切り替わり、茂みの中に俺は立っていた。

 これはすごい。

 靴を脱がないとマズいけれど、俺の部屋に直行できる。

 考えたら、3階層に飛んでいくこともできるはずだ。

 改札機を通らず、成果を買い取り所に持っていくとマズそうだが、ただ飛んでいく分には問題ないだろう。


 フフフフフ。


 などと茂みの中で一人でニヘラ笑いしていたら、後ろの方で羽音がする。

 しかも、肩とかヘルメットに何かがちょこちょこ当たっている。

 なんだ?


 後ろ手で探ったら何かいた。

 首を回したら緑の服を着た妖精が飛んでいた。

 フェアより小さい。

 そして、羽根は左右一組で2枚だけだ。

 天使も高級になるほど羽が多くなるらしいから、こいつは6枚羽根フェアより2段階下がるんだろうな。


「お前、ついて来たのか?」

 というか俺が転移で巻き込んだ可能性が高い。

 妖精は俺のたずねたことを理解していないのか、かわいらしい顔をしてきょとんとしている。


「すぐに戻してやるから、俺の右手の上に乗ってくれ」

 そう言って右手のひらを上に向けて差し出したら妖精はその手の上にちょこんと座った。

 なにこれ、かわいい。


 かわいいが妖精なんかが飛んでいるのが見つかったら大騒動だ。

 魔術もインパクトあると思うが、妖精はもっとインパクトがありそうだ。

 俺は右手の上の妖精を意識したうえでフェアリーランドを思い描き、そして『転移』と強く念じた。


 視界が切り替わり、目の前は一面の花畑。

 すぐにフェアらしき妖精が俺の前に飛んできた。

『こんなにはやくいらっしゃるとはおもいませんでした』と、フェア。

 俺も思っていなかった。


「この子が俺の転移に巻き込まれたみたいで向こうにいたんだ。

 それで連れてきた」

 当の妖精は俺の手のひらに座って足をブラブラしていた。


『あらまあこのこったら。

 もうしわけありません。

 ゆうしゃさまにごめいわくをかけてはいけませんよ。

 こっちにいらっしゃい』

 フェアがそう言ったら、その子は俺の手首に両腕でしがみついてきた。


 これは困った。

『こまりましたね。

 このこはゆうしゃさまとはなれたくないようです。

 どうでしょう。

 このこをつれていっていただけませんか?』

 えっ!?

 そうだ!

「この子が食べられるようなものはないから無理だと思うよ」

『ゆうしゃさまのせかいにもはちみつはあるのではないですか?』

「ハチミツでいいの?」

『はちみつだけでだいじょうぶです。

 はちみつがなければさとうとみずだけでもだいじょうぶです』

 そうなんだ。

 飼えないことはなさそうだけど、

 そう言えば、うちにはタマちゃんだっていることだし今さらか。


「分かった。

 それじゃあ連れていこう」

 そういったとたん俺の手首にしがみついていた妖精が手を放して笑顔で飛び上がった。

 かわいい。


「それで、きみの名まえは何て言うんだい?」

 笑顔の妖精に名まえをたずねたら、またきょとんとした顔をした。


『ゆうしゃさま。このこにはまだなまえがありません。

 ゆうしゃさまが、このこになまえをつけてあげてください』


 そうきたか。

 名まえ、名まえ、妖精の名まえ。

 花畑の中の妖精だから、フローラはどうだろう?

 いやちょっとありきたりだし芳香剤とか洗剤の名まえっぽい。

 それでもタマちゃんに比べればよほどいいかもしれないが、ここはもう少し捻って、フィオナでどうだ?

 意味合い的には『白い』とか『美しい』とかだったはず。


「それじゃあ、フィオナでいいか?」

 妖精はまた飛び上がって喜んでくれた。

『フィオナ。いいなまえです。

 フィオナ、これからゆうしゃさまのためにがんばるのですよ』

 フェアがそう言うとフィオナはうなずいた。


「じゃあ、俺の世界に行こう。

 フェア、それじゃあ」

『フィオナをよろしくおねがいします』


 フェアに別れを告げた俺はフィオナを連れてまた茂みに転移した。


 フィオナを肩の上に乗せ、左手の手袋を下げて時計を見たらまだ10時前だった。


「フィオナ、リュックの外側のポケットの中に入っていてくれ」

 俺はリュックをいったん地面に下ろして、これがリュックで、ここがポケットだと教えてやった。

 そうしたらフィオナがうなずいてポケットの中に入った。


 背中の羽が邪魔になるかと思ったんだけど羽は折り畳み自由なようで邪魔にならずにフィオナは足の先からすっぽりリュックのポケットの中に入った。


「フィオナ、目までなら出してもいいけど首までは出さないようにな」

 フィオナがうなずいて少し姿勢を下げたら頭の上の部分だけがポケットからでただけになった。

 万全とまでは言えないが、目立つ感じではない。


 今日はこれ以上ここにいても仕方なさそうなので俺はうちに帰ることにした。


 転移で帰れるのだろうが、改札口を通らないわけにはいかない。

 リュックを背負い直した俺は茂みを抜けて歩いて渦に向かった。


 渦を抜けた俺はそのまま武器預かり所に回って、メイス2本とナイフを預かってもらった。

 俺はそのまま本棟から出て家路を急いだ。

 一度は転移で戻ろうかと思ったものの、フィオナのハチミツを買わなければいけないと思いだし、コンビニよりも商品の揃った帰り道のスーパーに寄ることにした。



 スーパーに入り、入り口に積んであったカゴを持って売り場に回った。

 当然ハチミツがどこにあるのか分からないので天井から吊り下げられた商品案内のプレートを見ながら歩き回ってなんとかハチミツを見つけた。


 いろいろ並んでいたが、プラスチックの容器のものに比べてガラス瓶に入ったハチミツは格段に高かった。

 ラベルを見比べたところ、国産、天然がキーワードのようだった。

 国産、天然で500グラム2500円ほどの瓶入りハチミツを買うことにした。

 確かここでも冒険者カードは使えたハズなので、その瓶をスーパーのカゴに入れレジに並んだ。


 レジ前にはそれほど人は多くなかったのですぐに順番が来た。

 セルフ支払いだったので、支払機に回って冒険者証で支払った。



「ただいま」

『お帰り』

 玄関に入ったら、居間の方からテレビの音と父さんの声がした。

『忘れ物か?』

「今日はもうおしまいにした」

『そうか』


 それだけの会話で俺は2階に上がっていった。

 母さんの声はしなかったので買い物にでも行っているのだろう。



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