第332話 付録6、ベルダドニア屋敷。サイタマの☆
ミアはシュレアの属するミスドニア王国の王都ベルダドニアにある王立ベルダドニア大学の魔術学部を目指すという。
ミアが何を思って魔術学部を目指そうと思ったのかはわからない。まさか円盤の影響を受けてのことではないと思うのだが、魔法少女ものに目を輝かせていたことは事実だ。
とはいえ、そういったものに影響されることはよくあることなのだろうし、たまたま魔術学部などあれば、目指したくなる気持ちもわからないではない。
ミアの目指す魔術学部の入学試験では、ほかの学部と違い実技試験があるというので、俺は持っている全種類の魔法盤をミアに使わせて、さらにシュレアダンジョンの浅層に連れていって実地教育を施している。
かねがねミアは頭のいい子だと思っていたが、魔法の才能もあったようで、氷川同様難なく魔法を使いこなせるようになった。受験のこともさることながら、これで自分で自分の身を守ることはできるだろう。
アキナちゃんは法学部をめざしていて、大学を卒業したら父親の事業を助けたいそうだ。まだ10歳、11歳なのに大したものだ。
魔法、魔術を使うことのできないカリンとレンカは、ミアの身辺警護役ももう必要ないだろうということで哲学部を受験することになった。哲学部といってもいわゆる哲学を学ぶだけではなく、数学、論理学、天文学、音楽などを学ぶ学部なのだそうだ。そこでカリンとレンカは数学と天文学を主に学ぶということだった。
ベルダドニア大学の入学試験が終わった当日の夕食時、ミアたちに試験の出来について聞いてみた。
「ミア、試験の出来はどうだった?」
「ひっき試験は少しまちがえた。でもじつぎ試験は満点だったと思う」
「ほう。スゴイじゃないか」
「エヘヘ」
ソフィアの調査によるとベルダドニア大学の入試は定員制ではなく入試で6割できれば合格とのこと。ミアは合格間違いなしだな。残りの3人も合格してくれればいいが。
「アキナちゃんはどうだった?」
「なんとかなった。かな?」
「カリンとレンカは?」
「「合格できたと思います」」
「みんな頑張ったようで何より」
4人揃って入学できそうだ。
それから3日後、合格者発表があり、ミアは成績優秀につき特待生入学となったという。そういうことってあるようなないような。
残りの3人は特待生にはならなかったものの無難に合格したようだ。
予想通りとはいえ4人ともよくやった。
大学への入学手続きはアキナちゃんの分も含めてソフィアが遺漏なく行なっている。
そして、大学の合格発表の1週間後、ミアたち4人はラザフォート学院を無事卒業した。俺は卒業式に出ることはできなかったが、うちからはソフィアが出席し、アキナちゃんの父親のハーブロイさんも出席したそうだ。
卒業から大学の入学まで約1カ月の時間があり、その間は完全な夏休み状態となった。
そこで俺は4人の入学祝いをかねて、今度こそ。と、ちゃんとチケットを予約し千葉にある遊園地に4人を連れていった。
あそこは、子どもたちにとって確かに夢の国だったようで、また行きたいと強く要望されてしまった。
ラザフォート学院を卒業後、4人は生活の拠点をシュレア屋敷から王都ベルダドニアのベルダドニア屋敷に移している。
現在シュレア屋敷にいるのは警備員2名だけで、警備をしながら屋敷のメンテナンスをしている。
ベルダドニア屋敷は大きいし敷地も広いので新たに4名の警備員を置いている。電気作業員たちはシュレア屋敷からベルダドニア屋敷に移っている。
アキナちゃんはシュレア屋敷とベルダドニア屋敷を結んだ転移板を使ってこれまで同様、10日に一度シュレアの実家に戻っている。
ベルダドニア屋敷もうちの自動人形たちによって近現代化工事を終えているので電気も使えれば井戸水ではあるが蛇口から水も使えて実に快適である。
ベルダドニアは山に囲まれた盆地に位置するせいか夏の季節はシュレアに比べ暑いようだ。そのため旧館の研究所で開発したエアコンを試験的に運転している。
アインの話によると効率はまだまだだそうだが、電気代は自家発電なので気にする必要などないため、エアコンの効率向上のプライオリティーはそれほど高くはない。
盆地のベルダドニアには海がないため料理人のヴァイスはシュレアに転移して海の幸を購入すると言っている。物価もシュレアの方が低いので、そのほかの食材もシュレアで仕入れることが多くなるだろうとのことだった。
金銭についてはあまり気にする必要もないので、俺も含めてそこらの人間なら金銭感覚は緩みがちだが、そういうところをちゃんと締めているところは好感が持てる。
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先日『サイタマの☆』の本社をうちの近くのマンションの一室からサイタマダンジョンセンターの近くに建っていた小型ビルを買い取ってそこに移転した。
移転の実務は『サイタマの☆』の社員というか作業員である自動人形が全てこなしてくれた。実に優秀である。俺は何かの書類に代表者としてサインしただけで終わった。
1階はガレージになっていて、大型資材購入のためそこにかなり大きな転移板を置いている。
購入資材は『サイタマの☆』用の資材ではないため俺のポケットマネーで購入したものだ。
ここに移転したのはこのためだったりする。
従業員は全員自動人形なので人件費はかからない。現在旧館の研究所の研究員が新本社に駐在して資材の購入や技術資料の収集にあたっている。俺じゃ限界があるしな。
外洋船の建造も始まっている。
動くものに対して俺の転移は相性が悪いので当初は自動人形たちだけで世界探検させようと思っていたのだが、転移板を設置すれば船がどこにいようと行き来自由なので人用の船室なども整備してリゾート探検船とすることにした。
実際に運航すればそれなりに不具合も出てくるのだろうが、それはそれで楽しみではある。
そろそろ俺の近況報告は終わりにするか。
これで付録も終わり、次話の人物紹介で本作も終了です。本文中あえて触れなかった魔王がらみの設定なども載せていますので最後までよろしくお願いします。
山口遊子
 




