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第319話 金の延べ棒拾い2


 夕食のためにシュレア屋敷か新館に行こうかと思ったが、止めてうちの最寄り駅に近いファミレスで済ませることにした。

 タマちゃんとフィオナは留守番になるが、タマちゃんは快く「いってらっしゃい」と言ってくれた。フィオナはふぃふぉふぃふぉ言葉だったが、フィオナもそう言ってくれたはずだ。


 ……。


 店に入ったところ、おひとりさまだったが、店内が空いていたおかげで4人席に案内された。

 ダンジョンセンターの近くの飲食店だと、冒険者の割合も多く、客の会話もそれらしいものが多くなるが、この店にはラシイ客はひとりもいなかった。

 ちょっと安心だ。


 メニューを見てハンバーグにご飯の大盛りと小エビの載ったサラダ。飲み物は水で済ませ、テイクアウトメニューからタマちゃん用にミックスピザを注文しておいた。フィオナには悪いがフィオナに合うようなテイクアウトメニューはなかった。


 5分ほどで料理が運ばれてきたので、さっそく「いただきます」


 ……。


「ごちそうさま」

 俺の舌だから万人にとってどうとかは言えないが実においしかった。


 満足した俺はテーブルの上に置かれた伝票を持ってレジに。

 いつも通り値段のことなど気にせず注文したのだが、レジで精算したら、これでいいのだろうか? と、いうほど安かった。

 さすがは国内最強チェーン店だ。と、思ってしまった。


 ただ、今日1日で俺は金の延べ棒を10トン弱手に入れている。1トン100億円として1000億円だ。

 それで今日使った金額は1500円も使っていない。1000億円から1500円引いたら桁数が多すぎて計算間違いしそうなレベルだ。ちょっとマズいカモ?


 レジで手渡されたタマちゃん用のピザを持って店を出てもまだ外は明るかった。他に買う物も用事もなかったのでどこにも寄らず、お土産を片手にまっすぐうちに帰った。


「ただいまー」

 玄関のドアを開けたら玄関の先の廊下にタマちゃんがいて、タマちゃんの上でフィオナが飛んでいた。ずっとここで俺の帰りを持っていてくれてたみたいだ。

「主、おかえりなさい」

 

 俺がいなくて寂しかったというわけではないのだろうが、玄関でこうして迎えられるとちょっとうれしい。


 玄関から上がった俺はタマちゃんとフィオナに食堂についてくるように言って、タマちゃんにお土産のピザを、フィオナには食器棚から取り出したハチミツをあげた。


 俺はふたりが食べているのをテーブルの椅子に座って眺めていた。

 ふたりが食べ終わって、フィオナの手と顔を拭いてから後片付けをした。

 父さん母さんもいないし、久しぶりにタマちゃんともども居間のソファーに座ってテレビを点けてみたものの、どのチャンネルを見ても予想通りの50歩100歩のつまらない番組だったのですぐに消してタマちゃんたちを連れて2階に上がった。


 

 翌日。


 今日は午後5時に博多駅の改札につながる通路に父さん母さんを迎えに行く必要がある。忘れないようにタマちゃんに5分前になったら教えてくれるように頼んでおいた。

 タマちゃんは時計を持ってはいないのだが、天スラだからそれくらい簡単だろうと軽く頼んだのだが「了解しました」と、自信ありげに答えてくれた。


 この日も朝7時にシュレア屋敷に転移してミアたちと朝食を摂った。

 食事中ミアが俺に、突然聞いてきた。

「イチロー、ドラゴンはかんたんにたおせる?」

「簡単じゃないけれど、難しくはない。普通のダンジョンワーカーだと難しいかもしれない」

「イチロー、わたしダンジョンワーカーに成れる?」

「ダンジョンワーカーに成るには、体を鍛えて武器の扱いとか訓練が必要になる。ものになるかならないかは訓練次第だ」

「イチロー、くんれんした?」

「訓練したぞ。訓練はそれなりに大変だった。

 ミアは勉強よりそういったことに興味があるのか?」

「わからない」

「そうか。ミアがこの街で生活するのに必要なくらい強くなることはいいことだとは思うが、俺はミアにダンジョンワーカーを職業にしてもらいたいわけじゃない」

「どうして?」

「ダンジョンワーカーは危険な仕事だ。ミアにケガとかしてもらいたくないからな」

「ふーん」


 ダンジョンワーカーに成らないにしてもある程度ダンジョンに潜って身体能力を上げてもいいかもしれない。後はドラゴンの肉だな。あれを食べれば身体能力が上がるような気がする。

 今日も金の延べ棒を拾い集めようと思っていたが、最初に新館に跳んでドラゴンの肉を鑑定してみるか。

 そういえばバーベキュー用にアインに用意させたドラゴン肉とヒドラ肉のスライスをタマちゃんに預けていた。


 朝食のデザートの羊羹を緑茶で食べ終え居間のソファーで寛いでいた俺は、タマちゃんにドラゴン肉とヒドラ肉のスライスをテーブルの上に出してもらい、一緒に出してもらった鑑定指輪を指にはめて鑑定した。


『エンシャントドラゴンのヒレ肉:力、素早さ、正確さ、スタミナが一時的に上昇する。わずかではあるがそれらは恒久的にも上昇する』

 あのドラゴンはエンシャントドラゴンだったんだな。エンシャントドラゴンというのはおそらくドラゴンの上位種だろう。効能が複数あるのもうなずける。


『三つ首ヒドラの胸肉:力および自然治癒能力が一時的に上昇する。わずかではあるがそれらは恒久的にも上昇する』

 自然治癒力が上がるというのはうれしい効能だ。


 こっちの食糧庫に在庫はなさそうだから、ある程度の量を新館から持ってきておこう。

 毎日食べ続ければ身体能力とか自然治癒能力がそれなりにあがるはずだ。食べるだけでいいなら負担もなければ危険もないしな。

 さっそく新館に行ってとってこよう。


 タマちゃん入りのリュックを背負い、フィオナを連れて新館の書斎に転移した。


 机の呼び鈴を鳴らしてアインを呼び、シュレア屋敷用にドラゴンの肉とヒドラの肉を用意してくれるよう頼んた。

「10分ほどお待ちください」と、言ってアインは書斎を出て行った。


 椅子に座って待つこと10分。複数の台車の音が廊下の方から聞こえてきたと思ったらアインが戻ってきた。

「用意できました」


 廊下に出たら、アインのほかに、ふたりの自動人形と大きな箱を載せた台車が2台並んでいた。

「ドラゴンの肉、ヒドラの肉。部位は適当に組み合わせて箱の中に500キロずつ入れました」

「ありがとう」

 合わせて1トンもあれば、1日1キロコンスタントに消費したとしても3年近くもつ。

 足りなくなればまた運ぶだけだ。


「タマちゃん」

 と、言っただけで、書斎の床に置いたリュックの中から偽足が2本伸びたと思ったらふたつの箱は荷台から消えていた。


「アイン、それじゃあ俺は荷物を届けてくる」

「はい」


 俺は書際に戻ってリュックを背負い、シュレア屋敷の玄関ホールに転移して、それから台所に行った。

 台所ではヴァイスが料理の下ごしらえのようなことをしていた。

「ヴァイス。済まないがドラゴンの肉とヒドラの肉を新館から持ってきたんだ。

 悪いが食糧庫にしまってくれ」

「了解しました」

「それじゃあ、タマちゃん。食料庫の出し入れの邪魔にならないところにさっきの箱を出してくれるかい」

「はい」


 今回もあっという間に荷物のふた箱が食糧庫の扉の左右に置かれた。

「ヴァイス。交互でもいいからドラゴンの肉とヒドラの肉をミアたちに1日1回は食べさせてやってくれ」

「了解しました」

「あとは、よろしく」

「はい」

 これでよーし。


 腕時計を見たら時刻はまだ8時だった。

 今日もひと働きしてくるか。働くといっても歩き回って金の延べ棒を集めるだけの簡単なお仕事です。


 これまで黄金街道ではモンスターに一度も遭遇していないので武器は不要のような気もしたが、何かあって後悔したくはないので、専用個室に跳んでクロちゃんを装備しカードリーダーにちゃんと冒険者証をかざして黄金街道に転移した。


 ……


 そろそろ切り上げようと思っていたらフィオナが俺の耳を引っ張ったので時計を見たら5時10分前だった。タマちゃんに頼んでいた時刻より5分早かったがまだ装備なども身に付けたままなので10分前でちょうどよかった。


 急いで専用個室に戻った俺はクロちゃんをロッカーにおさめてカードリーダーに冒険者証をかざして博多駅まで父さん母さんを迎えに行った。


 人通りの少なそうな場所に現れた俺は、約束の場所に急いで駆けていったら母さんと父さんが荷物を持って立っていた。


「一郎済まなかったな」

「だいじょうぶ。間に合ってよかった。

 それじゃあ、人の少なそうなところに移動してそこからうちに帰るから」


 父さん母さんの前に立って先ほど転移で現れた場所辺りに移動して、ふたりに手を取ってもらいうちの玄関の中に転移した。


「なんか、すごいな」

「新幹線に乗らなくていいんだもの、ホントにすごい」

「なんといっても時間が全くかからないのが有難い」

「とにかく、上がろう」

「そうだな」「そうね」


 その日の夕食は母さんが福岡で買った駅弁だった。

 牛肉がご飯の上にのっかってさらにその上に明太子が載っていた。

 明太子の無理やり感がすごい謎の弁当だったけれど、肉のタレのしみ込んだご飯に明太子がよく合っている。


 3人で駅弁を食べながら。

「向こうで住む場所を決めてきた。2DKで小さなマンションだけど母さんとふたりで住む分には十分だろう」

「へー」

「次の日曜にマンションの受け渡しなんだが、一郎、博多まで頼めるか?」

「受け渡しは何時になる?」

「9時の約束だから8時半ころ博多に着けばいい」

 バーベキューの約束が9時だったから、8時半なら何の問題もない。

「ならだいじょうぶ」

「一郎、予定でもあったのか?」

「友達と約束があったんだけど、約束は9時だからだいじょうぶ。帰りは何時に迎えにいけばいい?」

「友達との約束があるならあまり早くてもマズいだろうから、午後5時だと早いか?」

「4時でもいいよ」

「じゃあそれで頼む」

「了解」



 弁当を食べ終えて父さんが風呂に入った後で風呂に入り、自室に戻った。


 この日の収穫を俺は正確には覚えていなかったのでタマちゃんに聞いたところ、午前午後足して560本の金の延べ棒を手に入れ、現在1630本の金の延べ棒をタマちゃんが収納しているということだった。

 1630本の金の延べ棒は重さにして32.6トン、1グラム1万円とすると3260億円になる。今日は日曜日でダンジョン庁もお休みのハズなので明日河村さんにメールしておこう。


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