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第30話 タマちゃん4


 絶体絶命の危機に瀕していた女冒険者を正義の味方よろしく助けた俺は、しばらく速足で現場を離れそれから通常モードに戻ってモンスター狩を再開した。


 出てこい、出てこい、モンスター。

 俺のディテクターに感あり!

 今回も複数の反応だ。

 さっき儲け損(のりそこ)なっているので今度はビッグウェーブを期待したい。


 できれば絶体絶命的に前後を囲まれてみたい。

 そしたら少しは楽しめるかも知れない。

 でも、この3階層に出てくるモンスターじゃたかが知れてるから、楽しめるわけないか。

 単純作業でもいいお金になるからいいけどな。


 モンスターの反応に向かっていたら、気配がどんどん近づいてくる。

 こいつは大きいぞ!


 坑道の曲がりを抜けてこっちにやってくるモンスターが目に入った。

 大トカゲの大群だ。

 数は分からないほど多い。

 フフフフ。

 口元が知らず識らず緩んでしまう。

 乗るぞ、このビッグウェーブ!


 俺はメイスを手に大トカゲの大群にカックンカックンしながら突っ込んでいった。

 突っ込んでいく間にタマちゃんに出撃指示を出したら、リュックから這い出た気配が背中からした後、タマちゃんは俺と並走していた。

 タマちゃんできる。


 大トカゲは事前情報に無かったモンスターだが、所詮しょせんはトカゲ。

 大口を開けて俺に噛み付こうとするが、そんなのはお構いなしにメイスを振り回していく。

 頭頂部に振り下ろすのが効果的だし、後のことを考えればきれいな殺し方だが何せ数が多いので、頭頂部にこだわらずメイスを振り回していった。

 まあ、それでも簡単に一撃でたおせていったので所詮はその程度のモンスターということだ。


 タマちゃんの方はあたるを幸いにそのまま大トカゲの部位を吸収してしまう。

 文字通り物理攻撃無効アンド完全カウンター状態だ。

 タマちゃんに噛み付いたとたんに口ごと顔がなくなってしまうわけだから直接攻撃しか攻撃手段がない以上どうしようもない。

 すごいよタマちゃん。

 

 大トカゲが大量にいたせいで、俺とタマちゃんが無双したにもかかわらず20秒ほど戦闘が続いてしまった。

 この戦闘時間20秒は最長記録だ。

 とは言っても息が上がるわけでもなく、疲れが出るわけでもない。


 坑道を埋め尽くす大トカゲの死骸を見た俺は、タマちゃんの吸収能力の限界を試すことにした。

 もっとも俺がたおしたトカゲは丸ごと残っているがタマちゃんがたおしたトカゲは体が3分の1程度欠けている。

 そして欠けたところからいろんなものが染み出ている。


「タマちゃん、死骸をできるだけ食べてくれ。その際核は残しておいてくれ。

 これ以上食べられないと思ったら、無理して食べなくていいからな」

 俺の指示を聞いたタマちゃんは一度震えて、目の前に広がる大トカゲの死骸というか残骸の山に向かって突撃していった。


 さすがのタマちゃんもこれだけの量は無理だろうと眺めていたのだが、思った以上に捕食スピードが高い。

 面白いように大トカゲの死骸がタマちゃんの体の中に消えていく。

 結局20秒ほどで大トカゲの死骸の山は消えてしまった。

 もちろんタマちゃんの見た目は変わっていない。


「タマちゃん、核を出してくれるか?」

 そう言ったら、タマちゃんの体から核が湧いて出て坑道の路面に転がった。

 出てきた核は普段の3階層の核より一回り大きかった。

 数が多すぎてリュックの外ポケットには入り切りそうもなかったので、数えながら核を拾いリュックの中に直接放り込んでいった。

 その数実に72個。


 大トカゲ、ずいぶんいたものだ。

 最初の突撃でタマちゃんが核ごと吸収してしまった大トカゲもいたろうから、実際は80匹以上いたかもしれない。


 しかし、こんなのが俺以外の冒険者を襲ったら大惨事になるんじゃないか?

 少なくともこのことはオブラートに包みつつダンジョンセンターに知らせた方がいいだろう。


 ちょっと早いが俺はそこからダンジョンセンターに戻ることにした。


 リュックにタマちゃんを戻してリュックを背負い直し、俺は勘を頼りに2階層に続く階段にたどり着いた。

 そして2階層から階段を上り、1階層を抜けて渦を通りダンジョンセンターに帰還した。

 時刻は午後3時。


 何だかセンター内が騒然としているのだが。何かあったのだろうか?


 今のところは報告の方が先なので、俺は核を売るついでに買い取り係の人に報告しておこうと左足をカックンカックンしながら買い取り所に回った。


 買い取り所の前には誰も並んでいなかった。

 その代り買い取り所の個室はいくつか閉鎖されていた。

 センター内があわただしいことと関係がありそうだ。


 俺は手袋は外したがヘルメットを被ったまま空いていた個室の中で一番近い部屋に入り、「お願いしまーす」と言って、カウンターの上のカードリーダーに冒険者証をかざした。


 係の人が見守る中、カウンターに置かれたトレイの上に核を置いていった。

 最初はリュックの外側のポケットから出していたので簡単だったけれど、大トカゲの核はリュックの中にそのまま転がっているので取り出すのが面倒だった。


 それでも、47個の核と、それよりも一回り大きい72個の核をトレイに入れた。

 係の人は次から次に核がトレイの上に並べられていくので目を見張っていた。


「これだけの数の核の収集に何日くらいおかけになりました?」

「今日1日」

「1日で?」

「はい。1日で」

「このひと回り大きな核はどこで?」

「3階層で」

「4階層ではなく?」

「Bランクなものですから」

「この核は4階層、5階層のモンスターの核の大きさなんですが」

「3階層を歩いていたら大トカゲが沢山やってきたもので」

「あのう、いま3階層に4階層の大トカゲの大群が現れたということでセンターでは1階層から2階層への階段前のゲートを規制してその対策を取ろうとしているんですが、まさかその大トカゲ?」


「その大トカゲかどうかわかりませんが大トカゲでしたヨ」

 俺が大トカゲの説明をするまでもなくセンターでは把握していたようだ。

 手間は省けたんだけどなんだかおかしなことになってきた。


「えーと、長谷川さんおひとりですよね」

「まあ、ソロプレイヤーですから」

 係員用のモニターを見て係の人が、

「10日ほど前に免許を取得されたばかりですよね。

 それで既にBランク。

 そうか。長谷川さんは現在全国でたった1人存在する16歳Bランク冒険者の方だったんですね」

「たった1人かどうかは知りませんが、一応高校生やってます」

 そう言って俺はフルフェイスのヘルメットを取った。


「それで、今回この大き目の核の数だけ大トカゲをたおされた?」

「はい」

「にわかには信じられませんが、核もあれば状況と矛盾しているところは何もないようです。

 後日担当の者がお話をうかがうことがあるかもしれませんが、査定を先に済ませておきましょう」

 知らぬ間に俺はすごく目立つことをやってしまっていたようだ。

 ちょっとマズいカモ?

 お話をうかがわれたくないのだが。


 特別な核があったわけでもなかったので査定はすぐに終わった。

 係の人から渡されたレシートを見ると今回の買い取り額は小ぶりな核47個で46万5千円。

 大ぶりな核72個で150万円ちょうど。

 しめて196万5千円。

 累計買い取り額は3884万2千円になった。

 

 係の人はすぐに奥に引っ込み俺は個室をあとにした。

 俺が出た後個室は閉鎖されたようだ。

 担当者が出ていったんだから仕方ないよな。


 しかし、今日は大漁だった。

 もしかして、タマちゃんは幸運を呼び込むスキル持ちなんじゃないか?

 少なくとも俺の金運は爆上がりしてるもんな。

 目立つことをやってしまったことは少しだけ気がかりだけど、やましいことをしたわけでもないから多分だいじょうぶだろう。

 俺の経験上、多分が裏切られる確率は6対4だ。どっちが6だったかは思い出せない。


 それはそれとして明日もがんばるぞ!




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