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第295話 秋ヶ瀬ウォリアーズ16、海水浴


 河村さんからのメールのあとまた斉藤さんからメールがあった。

『当分の間ダンジョンに入れなくなりそうだけど、長谷川くんどうするの?』


『特に予定はないから、適当に過ごすかな』

 俺の場合は28階層に跳んでいけばいいだけだし。

『斉藤さんたちはどうするの?』


『わたしたちはいつも適当に過ごしてるんだけど、明日は3人で海に行こうって話してたの。良かったら長谷川くん、一緒に行かない?』


「鶴田たちは誘ったの?」


『誘ったんだけど3人とも家の用事があるって駄目だったの』


 鶴田たちを差し置いて女子と海か。うーん。俺ひとりに女子3人。しかも水着。いいのか? 全然いい。


『分かった。集合時間と集合場所を教えて』


『明日の午前9時に〇▽駅の改札前。行き先は鎌倉の〇×海岸』


『了解』

 海水浴なんて何年ぶりだろう?


 それから10分くらいしたら、また斉藤さんからメールが届いた。

『明日午後から雨で雷も落ちそうなんだけど、どうする?』とのことだった。


 俺は『なにか代替案を考えてみる』と返事しておいた。


 午後から雨といってもいつ降り出すか分からないわけだし、雨の中泳げないわけじゃないけれど雷はマズいよな。


 旧館の先の湖に行ってみるのも手だな。

 あそこならプライベートビーチだし。

 それか、あの海でもいいかもな。

 あの島でも明日雨が降る可能性がないではないが、おそらく降らないだろう。

 明日朝早めにあの海岸まで行ってみて、雨が降りそうならその時考えればいいや。


 あそこには来週氷川と海を見に行くわけだが、氷川の場合はロンドちゃんで悪路走行したいだけだろうから俺が先に海を堪能してもいいだろう。

 よし。やっぱり海にしよう。


 バーベキューの用意は終わっているけれど、それは鶴田たちも一緒の時用だから昼食は新館に招待するか。


 明日新館に行って、客を3人連れてくるから昼食の準備を頼むと言っておけばいいだろう。海の家なんかないから女子たちの着替えは新館の風呂の脱衣室でいいしな。


 方針が決まったので、斉藤さんにメールした。


『明日は俺の方で海に案内するから、午前10時にいつものカラオケ屋が入っているのビルの前でどう?』


『うん。いいよ。アレで行くんだよね?』


『うん。それで昼食も俺の方でみんなの分用意するから持ってこなくていいから』


『ほんとに?』


『ほんと』


『じゃあ、期待しておく』


『それじゃあ』



 その日の夜、水泳用の海水パンツなどを用意してタマちゃんに預けておいた。



 翌朝。


 早めに起きて支度を終えた俺は、うちを出る前、母さんに一応ことわっておいた。

「母さん、今日は友達と泳いでくる」

「そう。どこに行くの?」

「ダンジョンの中に泳げる所があるんだよ」

「そうなんだ。日に焼けないならいいわね。とにかく気を付けなさいよ」

 斉藤さんたちと一緒だから今日はフィオナはお留守番ということにした。フィオナは聞き分けはいいので助かる。

「うん。だから、フィオナは置いていくから」

「フィオナちゃんのことは任せて」


 俺はタマちゃん入りのリュックを背負って玄関を出て、空を見上げたら晴れ間はあるが曇り空だ。

 海水浴予定地の天気を確かめるべくまずは例の海岸に転移してみた。

 雲は少し流れていたが空は晴れていた。


 崖の上から砂浜の上に下りてみて、波打ち際を見たらやはり遠浅だった。

 ついでにディテクターで様子を見たところ、それラシイものは探知できなかったので安全と考えていいだろう。


 これで一安心。そのあとミアたちと朝食を摂るためシュレア屋敷に跳んだ。


「「いただきます」」

 ……

「「ごちそうさま」」


 居間のソファーで少し休んだ俺は、次に新館の書斎に転移して、机の上の呼び鈴を鳴らしてアインを呼んだ。


「おはようございます」

「おはよう、アイン。

 今日友だちを3人10時ごろここに連れてくる。

 水着に着替えてもらうんだけど、風呂場の脱衣室に案内してくれるかい?」

「はい」

「それで、昼もここで食べるから、その3人の分も頼む」

「了解しました」


 アインが部屋を出ていったあと、俺は机の椅子に座って今日の海水浴のことを考えていた。


 あの海岸が昼に向かってそれほど暑くなるとは思えないけれど、近くに自動販売機があるわけでもないので飲み物は必須だ。

 バーベキューの日のために飲み物の用意はしているのでそれを転用すればいいだけなのだが、約束の時間までまだ時間があるのでタマちゃん入りのリュックを背負ってスーパーに買い物に行くことにした。


 この時間帯なら客も少ないだろうと思ってうちの近くの総合スーパー脇に転移して、急いで店に入ってカートを押して飲み物売り場に回った。


 

 そこで飲み口から直に飲める500CCのペットボトルでコーラ、スポーツドリンク、炭酸水、ただのミネラルウォーター、緑茶を8本ずつカートに入れた。これだけあれば大丈夫だろう。

 店の中は予想通り客は少なかったのでレジにも並ぶことなく精算でき、荷物台の前で床に置いたリュックの中のタマちゃんにペットボトルをどんどん渡していった。

 これで今日の準備は完了だ。

 カートを出入り口に返して店を出た俺は、頃合いを見て新館の書斎に転移した。



 時間調整のために机の椅子に座っていたら、来月の父さん母さんの結婚記念日のことを思い出した。

 今年の結婚記念日にはここに連れてきて諸々を打ち明けようと思っているから、それの準備もしておいた方がいいだろう。

 父さんの土日連休で決行するとして、泊りにするか日帰りにするか。せっかくだから泊りがいいような。となると寝室の用意か。それくらいは何とかなるだろう。

 ただ、この辺一帯観光する場所がないんだよな。食事して風呂に入るくらいしかやることないし。

 やっぱり、日帰りの食事会にしておくか。


 父さん母さんの結婚記念日対応について方針を決めたので、一安心。


「タマちゃん、アレ」

 タマちゃんに出してもらったコミックは預けた時のままのページが開いていて、俺は続きを読み始めた。


 約束の時間の5分前に開いたままのコミックをタマちゃんにしまってもらい、俺たちは駅横の小路に転移してカラオケ屋の入ったビルの前に急いだ。

 斉藤さんたち3人は入り口前にいつものように揃っていた。


「おはよう、みんな」

「「おはよう、長谷川くん」」

 3人ともつば広の帽子に半袖やノースリーブのワンピースを着て、足はビーチサンダル。手にバスケットやビーチバッグを持っていた。


「じゃあ行こうか。

 そこの角を曲がった所から跳んでいくから」


 4人でビルの角を曲がってそこで手を取ってもらって新館の書斎に転移した。

 書斎の中ではアインがちゃんと待機していてくれた。


 斉藤さんたちは部屋の中を見回して、それからアインを見た。それだけで斉藤さんたちは状況をある程度は理解したようでアインにあいさつした。

「お邪魔します」「「お邪魔します」」

「どうも。この館をあずかっていますアインと申します。

 さっそくですが、みなさんを脱衣室にご案内します」

 アインの言葉を聞いた斉藤さんたちが一斉に俺を振り返ったので俺は頷いた。

「海には着替える場所も何もないから、彼女が風呂場の脱衣室に案内してくれるからそこで着替えてくればいい。

 脱いだ服は置いたままでいいよ。服は羽織るものだけ持ってきてくれればいいかな」

「う、うん。分かった」


 斉藤さんたちがアインに案内されて荷物を持って書斎から出て行った。

 この時間、自動人形たちは立ち働いている時間のハズだが、開いた扉から見えた廊下で作業している自動人形たちは見えなかった。

 お客さんの前で掃除しているわけにもいかないと思ってアインが気を利かせたのだろう。


 俺も着替えるために寝室に行って海パンに着替えた。俺の海パンは学校指定のスクール海パンで太ももまであるロングトランクスだ。

 俺も帽子くらいあればよかったが、帽子って持ってないんだよなー。持っているのは最初に買ったハーフタイプのヘルメットと白銀のヘルメット。

 一部の人には受けるかもしれないが、さすがに海パンはいてハーフタイプとは言えヘルメットはかぶれないものな。


 着替えを終えて椅子に座ってしばらく待っていたら、アインに連れられて斉藤さんたちが帰ってきた。


 俺の海パン姿を見た中川さんがいきなり奇声を上げた。

「ウホッ!」

「中川、止めなさい」

「つい」


 俺の格好はどうでもいいが、3人はそれぞれかわいい水着を着ていた。

 斉藤さんは白のワンピース。日高さんはオレンジのワンピースの水着でふたりとも腰にスカートのようなものを巻いていた。中川さんは黒のビキニタイプの水着だった。


 3人とも帽子を被って手に荷物を持っている。

 斉藤さんと日高さんは少し恥ずかしそうな顔をしていたが、中川さんはそうでもないようだ。


 彼女たちの水着姿に対して何かコメントした方がいい筈なのだが、いらぬことを口走ってしまうとマズいのでそのことには触れず俺は椅子から立ち上がった。


「それじゃあ、俺の手を取ってくれるかい」

 俺はタマちゃん入りのリュックを右手に持っているので3人は俺の左手を取った。

「それじゃあ。転移」


 俺たちは砂浜の上に立っていた。見上げた空は快晴だ。太陽もだいぶ上がっている。

 真っ白な砂浜の波打ち際に波がゆっくり寄せては返している。


「きれいー」

「すごい。人が誰もいない」

「海も空もすごくきれい」

 そうだろう、そうだろう。



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