第28話 タマちゃん2、スライムテイマー
タマちゃんの能力を開発した俺はスライムテイマーと名乗っても良いんじゃないか?
勝手にスライムをダンジョンから連れ出している手前、誰に名乗るわけにもいかないがな。
そういえば、勝手に連れ出した以上タマちゃんをどこかに取り上げられる可能性が無きにしも非ず。
ということなのでタマちゃんの秘密は絶対厳守だ!
俺はタマちゃんの無限の可能性に思いをはせながら眠りについた。
翌朝。
俺は早目に家を出てサイタマダンジョンに向かった。リュックにタマちゃんを入れてのご出勤だ。
今日はモンスターを狩りつつタマちゃんの能力開発を行なっていこうと思っている。
能力開発と言っても今のところノーアイディアだが、そのうち思いつくだろう。
売店で昼食用におむすびセット3つとお茶のペットボトル2本。それに加えて黄色い箱のバランス栄養食2つを予備食料として買った。
本館に入り武器預かり所からメイスとナイフを受け取り、ヘルメットを着けて準備完了。
渦の手前にある改札の上の電光掲示板には今日も2、3階層で複数モンスターが現れると、注意が流れていた。
俺は注意してモンスターの大群をたおすのだ。
おっと、今日はタマちゃんのテイムの続きが優先だった。
なにせ俺はスライムテイマーだからな。
渦に入って1階層を突き切り、駆け足で2階層への階段小屋までやってきた。
そこで冒険者証を改札にかざして改札を通り過ぎ、手袋をはめた俺はその先の階段を1段飛ばしで駆け下りた。
途中で追い抜いた冒険者は驚いていた。
それくらいで驚かれては困る。
明日は迷惑にならない程度に2段飛ばしだ!
2階層から3階層までそんな調子で駆け抜けていき、3階層では『ディテクター』を使って人気のない方向へ移動していった。
途中運よく大蜘蛛3匹連れに遭遇したので核を3ついただくことができた。
これでタマちゃんがおむすびが好きなのか核が好きなのかテストできる。
その前に、タマちゃんはモンスターの死骸を食べるかどうか確かめてやろう。
3個の核はリュックの外側のポケットに入れておいた。
リュックの中からタマちゃんを取り出した俺は、大蜘蛛の死骸の近くに下ろして、
「タマちゃん、大蜘蛛の死骸を食べてくれ。
食べたくないなら食べなくてもいいからな」
タマちゃんは俺の言葉を聞いて、驚くほどのスピードで大蜘蛛まで移動しそこで一瞬で広がって大蜘蛛を覆った。
そしてほとんど一瞬でまた元の姿に戻った。
そのとき大蜘蛛の死骸は見えなくなっていた。
スゴイ!
「タマちゃん、残り2つの死骸も食べたかったら食べてくれ」
タマちゃんはさっき同様素早く動いて次の大蜘蛛の死骸に取りつき一瞬で完食し、3匹目の大蜘蛛の死骸もあっという間に完食してしまった。
もちろんタマちゃんの体積が大きくなった感じは全くしなかった。
その気になれば完全犯罪も可能だ。
ある意味とんでもない仲間を手に入れてしまった。
今タマちゃんが食べたのは死骸だったけれど、どう見ても生きてるモンスターもいけそうだ。
タマちゃんに核は食べるなと言っておけば、俺は何もしなくても良さそうだ。
俺はモンスターの肉を売るつもりはないから、タマちゃんにガワだけ食べさせておけばモンスターの死骸の中に手を突っ込む必要がなくなる。
立派なサポーターを手に入れた!
俺はタマちゃんをリュックの中に戻し、ディテクターで周囲を探知しつつまた徘徊を始めた。
すぐにディテクターに反応があった。
今回も複数だ。
ありがたやー、ありがたや。
俺はいったんリュックを下ろしてタマちゃんを取り出し坑道の路面の上に置いた。
「タマちゃん、これからモンスターをたおしに行く。
タマちゃんは俺についてきてくれ。
それでモンスターを見つけたら、核だけ残してモンスターを食べてくれ」
そう言ったら、タマちゃんが震えた。
かなり複雑な命令だが、ちゃんと理解したみたいだ。
天スラだけのことはある。
俺はメイスを腰から外して手に持ち、モンスターがいるはずの坑道の先に向かって歩き始めた。
タマちゃんは俺に遅れることなく俺の斜め横で滑るような感じでついてきている。
100メートルほど進んだところで、モンスターも俺たちに気づいたようだ。
モンスターの気配が急速に近づいてきた。
そしてキャップランプの光の中にたくさんの輝く目が現れた。
大ネズミだ。
その目玉の数は約20。
俺は少し歩く速度を上げた。
俺にちゃんとついてきていたタマちゃんが俺を追い抜いて大ネズミの方に向かっていった。
俺の駆け足くらいのスピードだ。
俺は歩く速さを変えず大ネズミの方に向かっていったのだが、着いたときには大ネズミは跡形もなく消えてしまっていた。
勇者の目を持つ俺でさえ追えないほどの驚くべきスピードでタマちゃんは大ネズミを次から次へと捕食していったってことだ。
恐るべし。
タマちゃんは、俺の言いつけ通り核を食べることなく吐き出すことができるだろうか?
「タマちゃん。核を吐きだしてくれるか」
そう言うと、タマちゃんは一瞬震えて、核が坑道の路面に転がった。
数を数えたら12個あった。
12個の核を拾ってリュックのポケットに入れた俺はタマちゃんをほめてやった。
「タマちゃんでかした!」
俺はタマちゃんの頭=ふくらみの一番上を撫でてやった。
そしたらタマちゃんはまた震えた。
ういやつじゃ。
サポートだけで十分と思っていたけれど、タマちゃんの戦闘力はただものじゃなかった。
もちろんタマちゃんに襲わせるつもりなどないが、Sランク冒険者だろうとタマちゃんに瞬殺されるのではなかろうか?
とは言っても、今のところタマちゃんの防御力がどの程度か分からないし、俺自身Sランク冒険者とやり合ったことがないのであくまで想像というか勘だ。
俺の勘はちょっと前まで5分5分だったがいまは勝率の方が勝っている。51対49ってところだ。
これから先、どんどん俺の勘の勝率は上がっていく。
これも俺の勘だ。
こうなってくると何が何だかわからなくなるな。
昼休憩までタマちゃんの無双が続いた。
午前中手に入れた核の数は36個。
毎日毎日遭遇数が増えてきている。
ありがたいことだが、俺以外の冒険者にとっては厳しいかもしれない。
昨日の中川さんの話だとBランクのソロプレーヤーはどれくらいの数かは分からないけれど複数モンスターを嫌がって1階層に移動したと言うし、3、4人のチームでも10匹以上のモンスター相手だと荷が重い。
俺からすれば、3階層の人口密度が減ることはウェルカムだし、モンスターが束になっている方が望ましい。
いい展開になってきた。
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