表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
277/333

第277話 シュレア屋敷7


 シュレア屋敷の居間に転移したら、居間の中で電気作業員ふたりが配線工事をしてコンセントを壁に取り付けていた。

 主配線は天井と壁の角に貼り付けられた目立たない色の配線用保護カバーの中に入っているようで、そこから下に向かって配線用保護カバーが下ろされその先にコンセントが付いている。

 ざっと見たところコンセントの数は部屋が広い関係でそれなりの数だった。



 ふたりの作業は見てて気持ちがいいほどてきぱきしていた。

 アインが高性能と4人をほめたわけだ。


 作業を見ていても邪魔なだけなので俺は俺の仕事を済ませてしまおう。


「タマちゃん、応接テーブルの上に今日買った物を出してくれるか?」

「はい」


 タマちゃんの偽足が伸びて今日買った物品がテーブルの上に並べられた。

 これだけあれば半年くらいはもつんじゃないか?


 そうこうしていたら、さっきこの部屋で作業していたふたりと、どこで仕事をしていたのか分からないが残りのふたりが俺の前で整列した。


「マスター無事発電機は起動し、配線作業も完了しました。アースを取るため、発電機から屋敷の外部にアース線を伸ばしています」

 配線用保護カバーが発電機に何本かつながっていてそのうちの一本が玄関口の横に伸びていた。そこらに孔を空けて外に配線したんだろう。

「ご苦労さん」


 俺は電動鉛筆削り器を箱から出してプラグを近くのコンセントに差し、新品の鉛筆1本を箱から取り出し電動鉛筆削り器の孔に突っ込んだ。


 ウオッー!


 電動鉛筆削り器がすごい音を立てたと思ったら、あっという間に鉛筆は削れてしまった。

 これは便利だ。俺の鉛筆削り器は手動でくるくるタイプなので、電動式が欲しくなった。


「ちゃんと電気が来てるようで何より。ところで発電機の燃料は何なんだ?」

 電気作業員Aに聞いてみた。

「燃料というわけではありませんが、カイネタイトディスクを動力として使用しています」

 そう言えばそんなのあったな。

「古くなったら交換しないといけないんじゃなかったか?」

「はい。予備もかなりの数運んでいます」

「カイネタイトディスクが足りなくなるようなら俺に言ってくれよ。新館から運ぶから」

「はい」


 ミアたちの勉強を邪魔したくなかったので、作業員Aに「鉛筆削り器の使い方をミアたちに教えて、そこのテーブルの上のものはアキナちゃんも含めて自由に使ってくれ」と伝えてくれと言おうとしたのだが、そもそも作業員Aがミアとかアキナちゃんを知っているはずがなかった。

 仕方ないので、勉強の邪魔にはなるが居間から玄関ホールに出た俺は2階にいるはずのミアたちを呼ぶことにした。


「おーい、ミアたち勉強中で悪いが居間に下りてきてくれないかー? アキナちゃんもな」


『はーい』


 すぐにミアたちが2階から下りてきた。後ろにソフィアもついてきている。生徒がいなくなっては仕事ないものな。

 これが普通の学校なら保護者がこんなことしたら大問題かもしれないが、俺はこのシュレア学校の理事長のようなものだからセーフ。


「今日はノートと鉛筆、それに歯ブラシと歯磨きチューブを持ってきたんだ。

 アキナちゃんも含めて自由に使ってくれ」

「はい」「「分かりました」」「?」


 今の俺の言葉をミアがアキナちゃんにここの言葉で伝えたらアキナちゃんが俺に向かって「ありがとう」と言った。

 日本語の勉強もだいぶ進んでるな。けっこうけっこう。

「あともうひとつ。

 もう電気が使えるようになったんだが、まだ機械がないので大したことはできない。

 今日は電気で動く鉛筆削り器を買ってきたから、使ってくれ。

 使い方は、この紐、コードというんだが今日壁に取り付けたこの『コンセント』の2つの穴に、コードの先の2つの足、見えるだろ?」

「みえる」

「この足を差し込む。こうだ。

 ちゃんと奥まで差し込むんだ」

 いちど差し込んだプラグを引っこ抜いてミアに渡し、

「ミア、自分でやってみろ」

「わかった」

 ミアがプラグを持ってコンセントにプラグから出た足を差し込んだ。


 先っちょしかコンセントに差し込んでいなかったので上から見ると2本の足がのぞいていてプラグは浮いてしまっている。

「足が見えるだろ?」

「見える」

「この状態で足を触ると感電といってケガをしたり最悪死ぬこともあるから気を付けること」

「わかった」「「はい」」「?」

 ここでもミアがアキナちゃんに通訳してくれた。見た感じミアの方が妹っぽいんだがちゃんと面倒見ていいお姉さんだ。


「そうならないためには、足が見えなくなるまでこんな感じでしっかり差し込むんだ」

 俺はミアが中途半端に差し込んだプラグをちゃんと押し込んだ。

「それでいい。

 それじゃあ、この鉛筆削り器の使い方だ」

 俺は鉛筆をもう1本箱から取り出して、それを鉛筆削り器の孔に突っ込んだ。

 さっきと同じく鉛筆削り器がすごい音を立てたと思ったら、あっという間に鉛筆は削れてしまった。


「すごい!」

「便利そうだろ?」

「「はい」」「はい」

 アキナちゃんが「はい」って答えた。便利そうだろ? と言う俺の言葉の正確な意味は分からなかったかもしれないが、なんとなく雰囲気で察したのだろう。


「あとは、削りカスだが、ここに溜まってくるから時々捨ててくれ。削りカスの捨て方は前の鉛筆削りと同じだ。いいかな?」

「分かった」「「ありがとうございます」」

 最後にミアがアキナちゃんに今の俺の言葉を訳してアキナちゃんが「ありがとうございます」と日本語で答えて実演会は終了した。


「テーブルの上のものは勉強が終わってから片付けてくれ。

 それじゃあ解散」

「「はい」」

「ソフィア、後はよろしく頼む」

「はい、マスター」

 ミアを先頭に5人が居間から出ていった。

 ミアの後ろ姿がたくましい。



 今日の俺の予定はこれで終わってしまった。


 これからダンジョンの中に入ってもいいと言えばその通りなのだが、面倒なような気がしないでもない。


 俺も偉くなったようだ。ハングリーさがなくなってきている。


 シュレアの街を見物しながら歩いてもいいのだが、白銀のヘルメット必須だし。


 やることもないので俺はソファーに座って、ミアたちとの会話がちゃんとできるよう勉強することにした。


「タマちゃん、この前コピーしたコミック出してくれるかい」

「どのタイトルにします?」

「どういったのがあったっけ?」

「葬送のフーリガン、メイドインナスビ、新劇の巨人、鬼滅の八重歯、演奏男エンソウマン、巻き込まれ召喚、闇の眷属」

 タイトルだけ聞けば10歳くらいの女の子が好みそうなコミックじゃないみたいだけど、これで日本語が上達するなら、それはそれでいいのだけれど。

「タマちゃんがコピーしたわけだけど、タマちゃんは中身読んだ?」

「はい。わたしのお勧めは『巻き込まれ召喚』です」

「へー。じゃあそれを読んでみようかな。出してくれるかい」

「はい」

「おっ! 全40巻もあるのか。大作だな。

 どれどれ」

 表紙の黄色い帯を見たら、『web小説の待望のコミック化!』とか書いてあった。

 web小説のコミック化かー。

 『巻き込まれ召喚』ってweb小説で見たことないけど、コミック化してるってことはそれなりにメジャーだったか。逆になるけどコミックが面白かったら小説も読んでもいいかもな。


 若い男女がそれっぽい街中を走っている表紙を開いたら、登場人物のポートレート(かお)付きの説明があった。

 主人公は高校生くらいの男子なのだがなぜか丸坊主だった。こんな主人公じゃ流行はやらないんじゃないか? そこは出版社の判断だろうし、現にミアたちが買ったわけだから坊主頭の主人公でもよかったってことかも知れないが。

 ヒロインは白髪の美少女だった。カラーじゃないので白髪だが、説明をみたら銀髪碧眼だった。こっちなら、ヒロインとして満点でもいい。

 ヒロインの顔は知っている誰かにどことなく似ている顔つきなんだが、そういうところがコミックとして受ける要素かもしれない。


 昼までコミックを読んで少しでも理論武装しよう。

 ソファーに座ってコミックを読んでいたら、ヴァイスがやってきた。

「マスター、昼食はこちらでお摂りですか?」

「そうだなー。アキナちゃんもだいぶ慣れてきたようだし、ここで摂るか。

 俺はここにいるから、その時は呼んでくれ」

「はい」


 アインに新館で昼食を摂ると言っているので断らないといけない。

 ヴァイスが部屋を出て行ったところで新館に跳んだ俺はアインに昼食はシュレア屋敷で摂ることにしたから。と、断ってシュレア屋敷に戻り、読みかけのところから理論武装を再開した。

 意外。と、言うと語弊があるが、このコミックなかなか面白いじゃないか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ナスビは子供にはキツイのでは…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ