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第268話 ダンジョンコア3


 今日は7時前には防具を整え、一度専用個室に転移して武器をタマちゃんに預かってもらってからシュレア屋敷に転移した。フィオナはいつも通り俺の右肩に止まっているしタマちゃんもリュックの中だ。


 シュレア屋敷の玄関ホールに転移した俺は、壁に立てかけてリュックを置き、リュックから這い出したタマちゃんと食堂に急いでそのままミアたちと朝食をとった。


 俺が休みの日には母さんにゆっくりしてもらおうと思って、うちで朝食をとらずにこことか新館で朝食をとっているのだが、これではまるで居候生活だ。と、自分でも思う。


 ここを買ったのは俺だし、新館も旧館も俺のものと言えばそうなんだろうから気にしても始まらないし、誰もなんとも思っちゃいないんだろうがな。


 今日だって俺とタマちゃんとフィオナがシュレア屋敷に来るとはここの誰にも言っていなかったのだが、すぐに食事にありつけた。

 食糧庫の中にでき上った料理が保管されているのかもしれない。



 結局食べてるときは何も考えずに純日本風の朝食をみんなで食べた。それから俺は玄関ホールに移動してそこでタマちゃんに預かってもらっていた武器とヘルメットなどを装備した。


 今日は、28階層のダンジョンコアのことが気になったのであそこに見に行くつもりだ。


 タマちゃん入りのリュックを背負い、念のため『祈りの指輪』をはめ、ディテクトトラップを発動しておいた。


 転移!

 28階層の階段部屋に転移して、扉を開け、ディテクター×2とレビテートを発動。

 ちゃんとモンスターの反応があった。

 ジャングルはだいぶ回復していてそれなりに厄介だが、まだ元の状態ほど回復していないようで、ウィンドカッター1発でかなりの距離をクリアできた。


 ほとんど駆け続けたおかげで1時間半もかからず、ダンジョンコアが鎮座する建物にたどり着いた。

 もちろん、その間見えないモンスターをそれなりの数たおして核を回収している。


 タマちゃんが壁に開けた孔はすこしだけ塞がっていたので、タマちゃんに拡幅してもらった。

 孔をくぐり抜けて建物の中に入って、中を走り抜けて石畳の中庭に出た。


 中庭自体は灰色の石畳。中庭の周りはくすんだベージュ色の壁。

 目の前に池と池の真ん中の台。その台の上で浮いている黒い玉。

 先日見た時と何ら変わったところはない。もちろん罠を示す赤い点滅もない。


 ディテクター×2を発動したが何も反応はなかった。

 前回は気にも留めなかったし、これが普通なのかどうかも分からないのだが、ディテクターではダンジョンコアの反応を拾えなかった。


 植物はジャングルと言ってもいいほど繁っているけど動物のいない世界。

 動物の代わりにいるのが、いわばゴーストの見えないモンスターたち。

 この階層は『死の世界』という感じがしないでもない。


『死の世界』といえば26階層も爬虫類スケルトンと爬虫類ゾンビしかいなかった。

 このダンジョン大丈夫なのか?

 気配というわけではないが、ちょっとだけ後ろに冷たいものを感じたのでとっさに振り向いたが何もいなかった。


 念のため改めてレビテートを発動してから池の水面に足を載せ、そのまま水の上を歩いてダンジョンコアが浮かぶ台まで歩いていった。

 

 ダンジョンコアは前回同様上下を軸にしてゆっくり回転していた。

 手を載せる前に顔を近づけてダンジョンコアをよく観察したところ、表面に細かいひび割れが沢山入っていた。

 確証はないがコアの真下の台の上に積もった黒い粉の量が前回見た時より増えたように思えた。


「タマちゃん、ダンジョンコアって寿命で死んじゃうことってあると思うか?」

 背負ったリュックの中のタマちゃんに聞いてみた。


「千年や2千年で寿命を迎えるとは思えませんが、それが何万年、何十万年とかのオーダーとなると死んでしまうこともありそうです」

 いかに不思議物体だと言えども何万年も生きてるとは思えない。

「このコア、ものすごく古そうに見えるけど、コアの一生の中で後期高齢期を迎えている可能性はあるよな」

「はい。その可能性は十分あると思います」

「タマちゃん、ダンジョンコアが死んでしまったらどうなると思う?」

「想像しかできませんが、新たなダンジョンコアが生まれるか、そのままダンジョンが崩壊してしまうか。どちらかではないでしょうか」

「新たなコアが生まれればいいけど、ダンジョンが崩壊すると困るよな。

 具体的に崩壊ってどういうことが起こるか分からないけれど、ただじゃ済まないよな」

あるじ。今のはわたしのただの想像ですから、実際のところ何が起こるかは分かりません」

「そうかもしれないが、参考にはなったよ」


 このダンジョンコアが何万年、何十万年生きた後期高齢者だとしても、今日明日ポックリお亡くなりになることはないだろう。

 コアが死んでしまってどうなるかが分かる時には俺はもうこの世にいない可能性が高い。

 そう考えると一気に気が楽になった。俺ってやっぱ自己中だよな。


 俺とタマちゃんが話している間、俺の頭の周りやコアの周りを飛んでいたフィオナにも意見を聞いてみた。

「フィオナは、どう思う?」

 俺の漠然とした問いかけに、フィオナは俺の目の前の宙に浮かんで、首をかしげてみせた。

 難しい質問だものな。


 結局何もわからないままだった。


 これ以上どうしようもないので、建物を出た俺は階段部屋に向かって駆けだした。


 1時間ほど駆け続けて階段部屋にたどり着いた。


 階段部屋の扉をきっちり閉めて、昼食をとるため半地下要塞前に転移した。

 靴を脱いで部屋の中に入り、リュックを下ろして武器も外した。


 昼になるまでハンモックに横になって時間を潰し、いい時間になったところでハンモックから下りた。


 今日の昼食は久しぶりにおむすびにすることにして、タマちゃんからおむすびのパックとガスコンロとヤカンを出してもらった。

 それから部屋の中に置いていた『治癒の水』入りポリタンクからヤカンに『治癒の水』を入れガスコンロの上に置いて火を点けた。

 ホットウォーターの魔術なら最初からかなり熱いお湯が使えるのだが、残念ながら水を温める魔術のレパートリーはないのでお湯を沸かすのに多少時間がかかる。


 タマちゃんから受け取った台ブキンで軽くテーブルを拭いて、タマちゃんと俺用の3個入りおむすびパックをふたつずつテーブルの上に置き、フィオナ用のハチミツ瓶と小皿とスプーンもタマちゃんから出してもらってハチミツをスプーンごと小皿に入れてやった。


 お茶が入れば準備オーケー。

 タマちゃんも椅子に座ってスタンバイしているし、フィオナも小皿の前でスタンバイしている。


 お湯が沸騰する前にコップに緑茶のティーパックを入れておいた。

「タマちゃんもお茶飲むだろ?」

「はい。

 主、わたしがお茶を淹れます」

「ティーパックにお湯を注ぐだけだから別に気を使わなくてもいいよ」

「分かりました」

 タマちゃんってスライムだよな。何でここまで気が利くんだ?

 これも大いなる謎だよな。


 お湯が沸いて少し冷ましてからコップに注いで、ちょっとだけ待ってタマちゃんの前と俺の座るテーブルにコップを置いた。ティーバッグはコップに入れたままだ。俺の嗜好の問題かもしれないがお茶は濃い方がおいしいものな。


「「いただきます」」「ふぉふぉふぉーふゅ」


 久しぶりのおむすびはすごくおいしかった。

 気になってパックに書いてあった説明を読むと、最初の3個パックは魚沼産のコシヒカリ、日高昆布、南高梅の梅干し、福岡の明太子。真っ黒で艶のある海苔は有明産とのことだった。センターの売店で以前買ったはずだが、値段は全く覚えていない。何であれ大当たりだ。

 タマちゃんのおむすびは見ていないが、似たようなものだろう。

 ふたつ目の3個は魚沼産のコシヒカリ、鹿児島枕崎の本鰹節のオカカ、南高梅の梅干し、虎杖浜こじょうはまのタラコだった。

 これも大当たりだった。


 これまで適当に買って適当に食べていたおむすびだが、おむすび界の懐の深さに感動してしまった。

 これからおむすびを買う時は種類だけじゃなく、どこ産のものを使っているのかちゃんと確かめて買った方が良いようだ。

 とはいうものの、どこ産のものがいいのか俺に分かるはずはないので、簡易的に値段の高いものがあればそれを買うようにしよう。これこそ持てる者の特権だな。驕りともいう。




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― 新着の感想 ―
タマちゃん人間形態の特訓も再開してみたら面白そう 人間の機微も理解してるし表情なんかも美味いこと再現出来そうな気がするし、味覚も理解しつつあるし、天スラだし
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