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第235話 シュレア屋敷2


 昼食を食べ終わった俺とミアは2階の階段先で別れ、俺は書斎に戻っていった。

 書斎の前には材木のほか照明器具や工事用資材が入っていると思われる大型の木箱が並べられ、アインのほかにそれぞれ工具箱のようなものを持った作業用自動人形が4体並んでいた。あと、台車の上に結構大きな金庫らしき箱ものっかっていた。


「さっそくタマちゃんに収納してもらおう」

 ということで、書斎に置いていたリュックを持ち上げて廊下に出し、そこでタマちゃんに工事資材を収納してもらった。


 リュックを背負い直した俺は自動人形たちに手を取るように言ってシュレア屋敷の玄関ホールに転移し、荷物の置き場所を自動人形のひとりに聞いた。


「荷物はどこに置けばいい?」

「照明器具は居間にでもお願いします」

「了解」


 居間に入ってタマちゃんに照明器具の入った木箱を置いてもらった。結構数があるが居間が広いので邪魔にはならない。


「風呂用の資材は?」

「こちらにお願いします」

 自動人形の中のひとりが先導してホールの先の廊下に俺を連れていった。


「この辺りにお願いします」

 と言われたので、タマちゃんに言って廊下の上に資材を並べてもらった。

「これでいいかな?」

「はい」

「それじゃあ、後は任せた」

「はい」

 4人の自動人形たちは部屋の扉を開けて中に入っていき、その後部屋の中で位置決めを始めた。

 彼らに任せておけば大丈夫だろう。


 俺は金庫をどこに置くか迷ったのだが、午前中休眠装置を置いた部屋に置くことにした。

 金庫自体はかなり重そうな感じだったのだが、まさか床が抜けることはないだろう。


 2階に上がった俺はタマちゃんに言って金庫をセットした。

 金庫の扉は『開』状態でカギは金庫の中に入っていた。ダイヤルなどは付いていないので簡単に開錠できるかもしれないが、そもそも専任警備員がふたり常時見張っているここに忍び込むこと自体そうとう難しいはずだ。

 それにお金はたとえ盗まれても何とでもなる。ミアさえ無事ならそれで十分だ。


 ということで、俺はタマちゃんから金貨25枚入りの筒を40本出してもらい、合計金貨1000枚を金庫の中に入れて金庫のカギはタマちゃんに預けておいた。あとでここの責任者になるソフィアに渡しておこう。


 これでよーし。


 後は任せてもいいだろうと思ってリュックを背負って新館に戻ろうとしていたら、1階の玄関ホールで自動人形ではない人の気配がした。


 何だと思って駆けつけたところ、うちのふたりの警備員がふたりの男を連れていた。


「こいつらなんだ?」

「門の外から屋敷内をうかがっていた者です。怪しいので誰何すいかしたところ、『ドラゴンスレイヤーに頼みがあるので会わせてくれ』というものですから、そんな者は当屋敷にはいないから帰れと言ったところ、しつこく頭を下げるものでやむなく連れてきました」


 俺が直々話を聞くか。


 と思ったのだが、俺はここの言葉が話せない。リュックから白銀のヘルメットを取り出して頭に被り、警備員Aに通訳してもらうことにした。男たちから見たらすごく変な行動だろうが仕方ない。


「何の用で、屋敷の中をのぞいてたんだ?」

 のぞきはたしか軽犯罪法違反だったと思うが、そういった難しい言葉を警備員Aに訳させて脳に相当する大切な部品が熱を帯びたらまずいと思いそこは口にしなかった。


 警備員Aが俺の言葉を訳してふたり組に告げた。いちおう締め上げていた後ろ手は緩めているようだ。

「マスターは、自分に何の用があるのか? と、聞いている。早く答えろ」

「あなたはドラゴンスレイヤーなんでしょうか?」

「何で俺のことをそう思うんだ?」

「マスターは、どうして自分のことをドラゴンスレイヤーと思うのか? とお前たちにたずねている。正直に答えるように」

「ダンジョンギルドでうわさになっていて、ドラゴンスレイヤーが屋敷を探していると聞きました。

 それで商業ギルドに行って銀色のヘルメットを被った若い男が屋敷を買った場所を聞きだし、それでここが分かりました」

 個人情報だだ漏れだな。いまさらどうしようもないけれど。


「そのあと銀色のヘルメットを被ったドラゴンスレイヤーのあなたが現れるのを待っていました」

「どういうことだ?」

「マスターはお前たちがマスターを待っていた理由をたずねている」

「ドラゴンスレイヤーの旦那。

 わたしたちのボスが旦那に用があります。一緒にわたしたちについてきてください」

「それでお前たちのボスの用件は何だ?」

「マスターは、お前たちのボスの用件を教えろとお前たちにたずねている」

 通訳付きの尋問は初めての経験だが、結構面倒だし、傍から見ると間が抜けてるんじゃないか? 第3者がいるわけでもないからどうでもいいが。


「わたしたちがボスに代わって旦那に用件を伝えるわけにはいきません。しかしまじめな話です」

「言えないなら、俺はおまえたちのボスに用はない。もうこの辺りに近づくなよ。いいな!」

「マスターは、用件を伝えられないような使い走りの相手はできない。従ってお前たちのボスに会うつもりはないと言ってる。そして、これ以上干渉するなとも言っている」

 警備員A、ちゃんと文意を汲んで結構意訳してくれるんだな。古文の素養があるかもしれない。


「お願いです。ボスに会ってください。頼みはボスの口から直接旦那に伝えることでボスの誠意が伝わると思います。この通りです」

 ふたりがふたりして俺に頭を下げた。

 この世界にまさか土下座文化はないだろうが、あれば土下座くらいしそうな感じだ。

 しかし、誠意を見せるんなら俺のところに本人が出向くのが筋じゃないか? とはいえ、俺がいつここにいるのか分からなければ、さすがに厳しいだろうし、俺が現れたといっていったん戻ってボスに伝えている間に俺がいなくなっては元も子もないか。


 こいつらに義理もなければ恩もないのだが、こいつらのボスに恩を売っておけばミアがこの街で生活するにあたってなにがしかの役に立ってくれる可能性がゼロではないだろう。

 逆に俺に対してよからぬことを企んでいるようなら文字通り叩き潰せばいいだけだしな。


「分かったから案内しろ」

「マスターは、了解したので案内するように。とのことです」


 ふたりの男の顔が喜色にあふれた。ちょっと気色悪いから。

「それじゃあ旦那、わたしたちについてきてください」

「おい、旦那と呼ばれるとうっとうしいから俺のことはサイタマの星と呼べ」

「マスターのことは旦那ではなくサイタマノホシと呼ぶように」

「は、はい。サイタマノホシの旦那」

 この展開どっかで聞いた感じだぞ。


 警備員Bにはそのまま屋敷の警備を続けるように言って、ふたりが先導する形で俺と通訳の警備員Aが彼らの後について屋敷を出た。

 そのあとラザフォート学院方向に歩いていきラザフォート学院の赤壁の前を右に折れ、その道をまっすぐ進んで大通りに出た。


 その後、俺たちは大通りを商業ギルド方向に歩いていった。結構歩いたあと男たちが大通りを横切ったので俺たちも後についていった。


 大通りからわき道に入ってしばらく歩き、さらに曲がって感覚的には前時代的ビジネス街といった一画にやってきた。

 展開が読めないまま男たちの後について歩いていたら、男たちが足を止めた。


 ふたりが『ボス』とか言ってたのでヤクザと勝手に思っていたのだが、どうも違ったようで、そこは3階建ての事務所っぽい建物の前だった。

 ここまで来るのに1時間近くかかってしまった。俺の時給を請求したいものだ。


「ここです」

 ふたりは両開きの扉を開けて俺を中に通した。

 1階は事務室のようで、事務員らしき連中が立ち働いてノートのようなものに何かを書き込んだりしている。

 

 男たちはそういった連中の脇を通り抜けるように進んでいき事務室の先にあった階段前まで俺たちを案内した。

「ボスは2階です」


 階段を一度踊り場で180度曲がって上がった先には扉が並んだ廊下があり、廊下の突き当りにも扉があった。


 俺を案内してきたふたりは廊下をまっすぐ歩いていき、突き当りの扉の前に立った。

「ドラゴンスレイヤーの旦那、ボスはこの先です」

 それはもうええねん。



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砕魂の犯人
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